最近SNSには、中国各地の飲食店で働く料理人たちが「消火器を背負って調理する」という奇妙な様子を捉えた動画が多数出回っている。
その背景にあるのは、今月21日に寧夏回族自治区銀川市の串焼き店で起きた大規模なガス爆発事故の影響とされている。この事故は、31人が死亡する大惨事となった。
銀川での事故を受けて、習近平国家主席は「責任追及および潜在的な危険とリスクの全面的調査」を全国で行うよう命じた。
以来、事故が起きた銀川市のみならず、四川省成都市や山東省菏澤市など各地の飲食店で、料理人は「消火器を背負っての仕事(調理)」を余儀なくされている模様。また、串焼き店に限らず、一般レストランでもそのような現象が見られる。
「消火器を背負っての調理」など、厨房の料理人にとっては邪魔なだけで、事故の再発防止には何の意味もないことは明白である。
しかし、このように普及地域があまりに広く、ほぼ同時に発生していることから「これは当局からの正式な命令ではないか?」と疑う声も強い。
実際、現場の調理師が「自主的に」このような不便な格好をするとは考えにくい。当局からの命令であったとしても、その的外れな指示には、現場は当惑するだけであろう。
このような世界でも類を見ない「不思議な現象」に対し、ネット上では「単なる形式主義だ」とする意見が多い。
もちろん「ガス爆発は一瞬だ。消火器を背負っていても(爆発を)止められるものではない」といった、極めて常識的な指摘も多く寄せられている。
中国の官製メディアによると、銀川市の串焼き店で起きた爆発事故では、1階の串焼き店のガスボンベが最初に爆発し、それが2階のガス管に引火したことが被害を拡大させた原因とされている。
銀川市の地元民によると、金属管によるガス配管への設備費用が高い(数千元~数万元)ため、それを負担できない現地の多くの飲食店では(ゴム軟管を使用するなど)安全性が十分ではないガスの使用方法がとられているという。
今回の事故後、銀川市の一部地域では「安全確保」を理由に「ガス配管を導入しない店は営業してはならない」と当局が強要しているという情報もある。
いずれにせよ、厨房の調理師がヒモで消火器を背中にくくりつけても、ガス爆発の防止には大して役に立たないだろう。
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