「中共のネット検閲」に立ち向かい投獄された夫、その妻も外部との連絡を絶たれる=中国

2023/06/10
更新: 2023/06/10

長年にわたり、中国の「ネット検閲」に立ち向かい、2年前から行方不明になっていた中国のセキュリティ専門家の、その「妻」が、先月末から消息不明となっている。

今月6日、彼女のツイッターアカウントまで削除されたことで、華人圏の間で懸念と注目が高まっている。

夫の釈放を訴え続けた妻の闘い

2年前から行方不明になっているのは、中国の著名なブロガーであり、情報セキュリティの専門家である阮曉寰(げん ぎょうかん)氏。

阮氏は、2021年5月10日に警察によって自宅から連行され、そのまま行方不明になっている。今年3月になって、同2月に秘密裁判にかけられ「国家政権転覆扇動罪」で7年の禁錮刑などに処されていたことが判明した。

この判決を「阮氏への政治的迫害」と考える人は多い。夫の行方を探していた阮氏の妻・貝さんは二審へ控訴したが、中国政府からの圧力で、弁護人を選任することができないばかりか、夫に面会もできていない。

それでも貝さんは、ツイッターを通じて夫の釈放を訴え、各方面に支援を求めてきた。

その貝さんが先月末、突然、理由もなく消息を絶った。支援者の間で彼女の身の安全を懸念する声が高まるなか、今月6日には、貝さんがこれまで夫への支援を呼びかけてきたツイッターアカウントが突然削除されたことがわかった。

中国の人権問題を扱うサイト「維権網」は今月3日、「貝さんは一度警察に拘束されたが、現在は釈放されている。しかし、スマホが警察に押収されたため、外部と連絡することができず、彼女は自由に声を上げられない状態にある」と伝えている。

当局が恐れる「ネット検閲に立ち向かう勇者」

阮曉寰氏は、2009年よりツイッターアカウント「編程随想ProgramThink」などを通じて、中国のサイバーセキュリティやネット検閲を回避する方法について伝えるとともに、中国当局に対する批判文章を数多く海外サイトに投稿するなどして、中国共産党の暴政を暴露してきた。

こうした「ネット検閲に立ち向かう勇者」の存在を、当局がよほど恐れたためか、完全非公開の「秘密裁判」というかたちで、阮氏の口を塞ごうとした。労役を課さない禁固刑とはいえ、刑務所内では、受刑者の精神を改造する「学習」は行われる。

阮氏の問題は国際社会でも注目されている。今年3月、米国ペンクラブや国際ペンクラブは「この判決を非難し(阮氏の)即時釈放を求める」声明を出した。また、4月には「国境なき記者団」も阮氏の釈放を求めている。

阮氏の件をめぐっては、六四天安門事件の元学生リーダーで、今も米国で民主運動を続ける組織「人道主義中国」の代表・周鋒鎖氏は今年3月、大紀元の取材に応じた際に、こう指摘している。

「中国当局による厳しい統制下において、阮氏は10年以上も、粘り強く、中国のネット検閲などに公然と挑戦してきた。中国のグレート・ファイアウォールを回避する方法やネットセキュリティに関する知識を広めたことで、多くの中国人がその恩恵を受けた」

「阮氏がしてきたことは、暴政を続ける中国当局にとって、直接的な打撃となる。中国当局が阮氏に対してこれほど重い判決を下したのは、まさに阮氏のような存在を恐れているからだ」

2021年5月10日、自宅に踏み込んだ警察に抵抗する際に壊れた阮さんの眼鏡。(阮さんの妻・貝さんのツイッターに投稿された画像)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。