1989年の六四天安門事件(6月4日)から34 周年を迎える前、「中国のファイヤーウォールを壊せ(拆牆運動、#BanGFW)運動」の発起人である喬鑫鑫(きょう きんきん)氏が、滞在先のラオスで5月31日夜(現地時間)から消息を絶っている。
喬氏は、中国共産党による工作活動の一つで、狙ったターゲットを海外で捕捉するいわゆる「越境逮捕」に遭ったとみられている。
喬氏の本名は楊澤偉。1986年生まれで、米国政府系メディア「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」の元ジャーナリストだ。喬氏は以前から「中共のファイアウォールは、中共が生き残るための最後の障壁だ」として、この壁の排除を呼びかけていた。
カナダ在住の中国人作家で人権活動家の盛雪氏は3日、自身のSNSで「喬氏が60時間近く失踪した」として、4月18日に喬氏から「もしも(喬氏と)48時間以上連絡がとれなくなれば、私(喬氏)が書いた『自殺しない宣言』を公表するよう」頼まれた、と明かした。
つまり喬鑫鑫氏は、自身が国外であるラオスにいても中共に狙われていることを察知した上で、「もし私が消息不明になったら、それは自殺ではなく、中共の手にかかったからだ。そのことを皆に伝えてほしい」と、知人である盛雪氏に託してあったのだ。
盛雪氏は約束通り、「自殺しない宣言」を手に持つ喬氏の写真をツイッターに投稿した。投稿には、喬氏が盛雪氏に送ったとみられるメッセージのスクリーンショット画像が添付されている。その内容は、以下の通り。
「私(喬氏)はラオスの合法的な在留ビザを持っている。ラオスでは、裁判や紛争などいかなるトラブルにも巻き込まれていない。またラオス政府に対して、いかなる反対言論も発していない。そのためラオス政府が私を逮捕する理由は、何もない。私は心身ともに健康で、楽観的だ」
「ファイヤーウォールを壊せ」運動の公式ツイッターは、喬氏がラオスの警察と中国の警察6人によって逮捕されたことを確認した、とする声明を出した。
また同運動の公式ツイッターは、発起人の喬氏が消息不明ではあるが、今後も活動を継続することを表明している。
さらに、同運動に参加する有志の人々も「中国共産党が倒れない限り、安全と言える人間はいない」として、活動を続ける決意を表した。
喬氏は今年3月に、自ら発起人となって「中国のファイヤーウォールを壊せ」の活動を開始するとともに、世界に対して、情報を遮断する中国共産党を「反人類罪」に問うよう求めてきた。
以来、喬氏は中国共産党による、さまざまな脅迫を受けていた。
中国国内にいる喬氏の家族や友人に対しても、地元の警察当局が圧力をかけたらしく、喬氏がSNS投稿を削除するように「家族や友人から言わせている形跡」が、喬氏のWeChat(微信)履歴から伺われる。
喬氏の身の安全を案じる多くの友人は、喬氏に、一刻も早くラオスを離れるよう助言していた。しかし、喬氏は記者に対し「もし誰かがこの活動のために犠牲になる必要があるとするならば、私がその第一号になる」と、死をも恐れぬ毅然とした覚悟を表していた。
喬氏は失踪前、台湾の国家放送局である台湾国際放送(RTI)の独占インタビューに応じている。その際、喬氏は「中国共産党が築いた高い壁(ファイヤーウォール)は、Googleやフェイスブックなど31万ものウェブサイトを遮断し、中国の言論の自由を消滅させた」と批判するとともに、台湾政府に対して、中国への半導体チップの輸出を規制するよう呼びかけた。
このたび、喬鑫鑫氏との「約束」を果たして、同氏の「自殺しない宣言」を公表した盛雪氏は、次のように語る。
「喬氏がこのように狙われたことは、この運動が中国共産党に与えた打撃が致命的であることを物語っている。中国政府の喬氏に対する越境逮捕は、明らかに国際法違反だ。国際社会が、喬氏の救出にむけて行動を起こすよう求める」
(世界中に広まる「中国のファイヤーウォールを壊せ」運動)
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