中国の町を跋扈する「城管」という集団 すさまじい暴力と怒号、死者まで出す激しさ

2023/06/03
更新: 2023/06/02

中国語の「城」という漢字は、日本でいう江戸城や大阪城のそれとは異なり「都市そのもの」を指す。

このような「城(じょう)」の概念は、近世以前の中国の都市が周囲をぐるりと城壁に囲まれており、そのなかに住民の生活の場があったことによる。

城管」が実際にやっていることは何か

その「城」つまり中国の都市の治安を維持し、秩序を保つよう管理する要員を城管(じょうかん、正式名は城市管理)という。したがって「城管」とは、制服を着た要員による、一種の「公的任務」を意味する言葉であることは間違いない。

中国における現行の法律や条例について、それを記事に引用することに何らかの意味があるとすれば「条文に書かれた建て前と現実社会との間に、どれほど多くの乖離があるか?」を検証することに尽きる。

それを承知の上で、この「城管」の職務について『城市管理執法辨法』の第一章「総則」第一条を引用すると、次のようになっている。

「都市管理法執行業務を規範化し、法の執行と職務レベルを高めるとともに、都市管理における秩序を維持し、公民、法人、およびその他の組織の合法的権益を保護するため、行政処罰法、行政強制法などの法律および法規の規定に基づき、この法律を制定する(为了规范城市管理执法工作,提高执法和服务水平,维护城市管理秩序,保护公民、法人和其他组织的合法权益,根据行政处罚法、行政强制法等法律法规的规定,制定本办法)」

つまり「都市管理における秩序を維持し、公民、法人、およびその他の組織の合法的権益を保護する」ことが目的であると、法律の条文には明記されているのだが、実態はどうであるか。

「公民の合法的権利を保護する」という彼らが実際にやっている仕事は、警察や公安の職務とは別に、都市部の治安維持、例えば「無許可で路上販売するものを取り締まる」などである。

しかし、その方法は極めて恫喝的で荒々しいものであり、一般市民にとっては、むしろ公権力を笠に着た「暴力集団」と言ってよい。

中国の庶民にとって、生活の重要な手段である小さな商売にまで難癖をつけ、売り物を奪い取っていく様子はまるで強盗団であり、どう見ても「弱い者いじめ」にしか見えないのだ。

なお、この都市管理者である「城管」が庶民から鷲掴みするように没収した商品は、肉などの食品ならば自分たちで食べてしまうし、その他の物品であれば転売して着服する。もちろんその他に、条例を振りかざして、泣いて抗議する相手から「罰金」も徴収するのだ。

中共統治下で常態化した「社会の不条理」

先に引用したように「都市管理における秩序を維持する」が城管の大義名分だが、彼らが本当のヤクザ組織に敢然と立ち向かうことは絶対にない。そんな彼らが「庶民いじめ」を専らとするのは、そこに給与以上のうま味があるからだ。

そのため一般市民は、この黒服(黒以外の制服もあるが)の集団に対して、その暴力を恐れながらも、ほとんど蛇蝎(だかつ)を見るにちかい嫌悪感と憎悪の念を抱いている。

日本にこのような「公務」は存在しないので、もとより想像しにくい風景であるが、中国共産党の統治下にある中国社会には、こうした不条理が厳然と存在する。それはまさに、中共の本質が腐敗と暴力であることの必然的結果と言ってもよい。

なお、本記事の趣旨ではないが、城管に限らず、中国の官僚、警察、公安、軍などの公的組織はどれをとっても本質的に同様であり、そこに「社会正義」は一片もない。

中共支配下の全ての組織においては、個人としての人間性(良心や道徳など)が極めて希薄化され、ただ「悪事の共犯者」になることだけが要求される。そのため、中共の下では、善悪の逆転した論理が「当たり前」となり、それが常態化してしまうのだ。

3年前、新型コロナウイルスによるパンデミックのなか、武漢や上海をはじめとする中国の複数の都市では、都市封鎖(ロックダウン)が行われた。そのため外部からの食料の供給が途絶え、市内は恐るべき飢餓状態になった。

ある人々は共同体をつくり、なんとかして周辺の農村から野菜などを運び込もうとしたが、これを阻んだのが「城管」であった。

城管は、軽トラなどで市内に向かうその食料を「公務」と称して奪い取り、高値で転売して儲けた。通常は2元の新鮮な白菜が、褐色の腐りかけになっても、50倍の100元(約2000円)にまで高騰した。ドアが溶接され、完全封鎖された集合住宅では、餓死者や自殺者が続出した。

昨今の中国は、経済が破綻したことにより、多くの人が失業した上、恐るべき就職難に見舞われている。

そのため、清華大学など最高レベルの大学を卒業した学生でも、背に腹は代えられず、人々から嫌われる「城管」になるケースもあるという。

記事冒頭の写真は、日時や場所などの詳細なデータは不明だが、新規採用されて教育を受けたばかりの「城管」であるらしい。

ただ、なぜか手に掲げる共産党旗(紅旗)が「裏返し」になっているのが、まるで中共の近未来を暗示するようで、少々気になるが。

いずれにしても今の中国では(特権階級は別としても)皆が苦しい境遇にあり、我が身が明日どうなるかは分からない。横暴を極める城管でさえ そのことは免れないのだ。

城管の暴力に、市民も加わって反抗

湖南省邵陽市では5月31日、町の市場へニワトリを売りに来た農村の老人が、城管の「公務執行」に遭い、それが原因で死亡する事件が起きた模様だ。華人圏のSNS上では、事件の現場を捉えたとみられる複数の動画が拡散されている。

関連動画の投稿者によると、地元当局は「老人は心臓の持病を抱えていた。だから(死んだのは)城管のせいではない」と主張している、という。

これに対し、ネット上では「たとえ心臓に持病があったとしても、誰のせいで発作を起こしたのか?」と、当局の主張に反発する声も広がっている。

中国では、都市の道端などで随意に露店や屋台を出すことは「城管」の取り締まりの対象になるため、無許可で路上販売を行うのは、言わば「命がけの行為」である。(城管の関連動画はこちら

街の景観や秩序を維持することも、確かに公共の課題ではあるだろう。しかし庶民の側も、そうせざるを得ないほど生きるために必死なのだ。

これに対する城管の取り締まりは、日本に住む私たちには考えられないほど威圧的かつ暴力的である。城管による凄まじい暴行の場面を捉えた映像は、ネット上にあふれかえっている。

それらは、城管に殴る蹴るなどの集団暴行を加えられるシーンや、城管によって路上にぶちまかれ、踏みつけられた商品を泣きながら拾い集める女性。没収されようとする売り物を返してもらおうと、城管の腰に泣いてしがみつく老婆、などである。正視できないほど心が痛む光景に、怒りを露わにするネットユーザーも多い。

実際、城管によって殴り殺される路上販売者も相次いでおり、ニュースにもなっている。

昨今は、たとえ自分が路上販売者でなくても、日常的に「城管の各種の悪行」を目にしてきた市民の怒りが高まっている。そのため、露天商ではない一般市民も加わった、城管との衝突事件も各地で頻発している。

(没収された売り物の「靴下」を返してもらおうと、城管に泣いてしがみつく老婆)

 

(野菜売りの女性一人に対し、大勢で「公務執行中」の城管)

 

(城管に、売り物のスイカを投げつけて反撃する路上販売者たち)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。