2020年の初頭、中国武漢における新型コロナウイルスの流行初期に、当局が隠蔽しようとしていた真実の感染状況を現地から伝えたことで逮捕され、約3年余り収監されていた市民ジャーナリスト・方斌(ほう ひん)氏が先月30日、釈放された。
釈放はされたが、方氏は依然として当局の監視下に置かれている。当局による圧力のため、家族は方氏の身柄引き受けができない状況にある。さらには、方氏が所有していた会社や財産が「消えた」ことがわかった。
釈放されても、追尾は続く
大紀元の取材に応じた複数の情報筋の話によると、方氏は4月30日に出所した後、武漢警察によって北京へ送られた。方氏は、北京で息子と夕食をともにした後、北京警察によって再び武漢に送り返されたという。
現在、方氏の武漢の家族は、当局の脅しにより方氏の身柄を引き取ることができていない。そのため方氏は5月1日の夜、武漢の街をさまようしかなかった。方氏は現金を持っておらず、またその行動を常時監視する要員もついているという。
さらに「方氏は、間違いなく刑務所で厳しい拷問を受けている。彼の身を案ずる多くの武漢市民は、みな当局の監視下に置かれている」として、警察当局が彼の帰る場所を奪い、あえて放浪させているのは、方氏に救いの手を差し伸べるのは誰かをみるための「釣り」が目的ではないか、と方氏にちかい関係者は疑っている。
いずれにしても北京と武漢の警察は、方氏を監視しながらも、警察にとっての「面倒」に巻き込まれることを嫌がり、互いに方氏を腫物扱いしている模様だ。
収監中に奪われた「会社と財産」
方氏が武漢に所有していた、漢服(中国の伝統衣装)をあつかう会社や倉庫などが、関連部門によって差し押さえられたことも関係者の話で明らかになった。「会社も財産もどこかへ消えた。探そうにも、そもそも責任者が見つからない。(人の)義はどこに消えたのか?」と同関係者は嘆く。
米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)も、釈放後の方斌氏を追跡している。RFAの報道によると、方氏が4月30日に北京に到着した後、当局の圧力を受けたとみられる方氏の息子は、父親が北京で生活することを望まなかった。一度だけ食事をともにした後、方氏に衣服を一枚プレゼントすると、北京の警察はその日のうちに方氏を武漢行きの列車に乗せたという。
方氏は現在、外国メディアの取材を受けることが許されておらず、また動画を投稿することもできない状況にあるという。
SNS上に現れた「方斌」は本人か?
方氏が出所する前の4月26日、ツイッターには「方斌」と名乗る新たなアカウントが突然現れた。
同アカウントの人物は「皆さんに感謝します。ただいま戻りました」と報告していた。「これは中国当局が、彼の支持者を『釣る』ためにやったのではないか」と関係者は疑っている。
方斌氏は2020年2月9日、武漢のロックダウン期間中に武漢市の病院内を撮影し、新型コロナの感染状況をネット上に投稿したことで公安当局に逮捕された。その後、家族は方氏の行方を知ることもできず、裁判についても確認できない状態が続いていた。
(方氏が拘束前にSNSに投稿した自撮り動画)
方氏は拘束される前「(中国)共産党の暴政に反対する」内容の自撮り動画をSNSに投稿していたため、著名な「反共勇士」として広く知られていた。方氏は、法輪功学習者でもある。
方氏が中国で拘束されたことについて、海外の民主活動家をはじめ多くの在外華人が抗議集会などで彼のポスターを掲げるなどして抗議をしてきた。
米議会両院議員と米政府高官からなる中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)も今年2月、方斌氏の釈放を中国に要請している。
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