公明党などが早急な成立を目指すLGBT関連法案をめぐって、自民党内で開かれた「性的マイノリティに関する特命委員会」では反対・慎重意見が続出した。エマニュエル駐日米大使が推進に向けた情報発信を続けているが、「アメリカでさえ差別禁止法は成立していない」と指摘する声もあった。
「G7各国で差別禁止法があるのはカナダだけ。日本が遅れている訳では無い。アメリカでさえ差別禁止法は成立していない」。こう指摘するのは高鳥修一衆院議員だ。会合では反対意見や慎重意見を述べた議員は14人に上り、対する推進意見は7人にとどまったという。
法案をめぐっては、与野党協議の中で追加された「性自認を理由とする差別は許されない」との文言に反発の声が上がった。会合に出席した西田昌司参院議員は「差別があってはならない、そのような厳しい対立を産むような言葉遣いでやっていると、その方々に不利益が逆に生じてしまうのではないか」と苦言を呈した。
日本はLGBT問題における後進国であるという推進派の認識が事実とそぐわないことも証明された。28日付の産経新聞によると、衆議院法制局は同日の会合で「(G7各国に)性的指向・性自認に特化して差別禁止を定める法律はない」と説明した。
医者などによる客観的な判断がなくても自己の性別を決めることができる「性自認」の概念も論点となった。トイレや更衣室、公衆浴場といった女性スペースにトランスジェンダー女性が入ることに恐怖心を抱く女性もいるほか、安全面での懸念も提起されている。
当事者団体からも慎重な意見が出ている。今月5日に厚生労働省で行われた会見では、法案を推進する「LGBT法連合会」は当事者の代表ではないとの声も上がり、推進活動にはいわゆる「活動家」が混じっているとの指摘もあった。また、法案がなくても当事者はヘイト事件に遭うことなく生活していると強調した。
長尾敬前衆議院議員は「2年前、安倍元総理があらゆる手段を尽くしてストップさせたLGBT法案。速やかな成立などさせてはなりません」とツイートした。米国では保守政党の共和党がLGBT法案に「大反対」しているとし、成立すれば「米国共和党から完全に見放される」恐れがあると警鐘を鳴らした。
識者によれば米国はLGBTへの姿勢に一枚岩では決してなく、むしろ「保守とリベラルがぶつかり合う激戦地」(福井大学名誉教授の島田洋一氏、産経新聞4月6日付)だという。
実際、今月20日には共和党が多数を占めるで下院でトランスジェンダーの生徒や学生が女子スポーツに参加することを禁じる法案が可決した。LGBT課題への教育関連規制を推進する共和党は、州レベルでも同様の法律を相次ぎ成立させている。
前出の高鳥議員は、米国でさえLGBT差別禁止法は成立していないとし、「5月のサミットに期限を切るべきでない意見が多数」だったと綴った。
山場を迎えた議論は連休明けにも継続する予定だ。
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