ラーム・エマニュエル駐日米大使は10日、内外情勢調査会の全国懇談会で講演した。中国共産党は「良き隣人ではない」と述べ、不正な貿易慣行や経済的威圧、他国の権利侵害についてあらためて非難した。
エマニュエル氏は、中国がインドとの国境問題や南シナ海、フィリピン沿岸警備隊、日米国家安全保障など多くの国と地域で問題を引き起こしており「良き隣人としての役割を果たしていない」とした。
「中国は調印した国際ルールを守らず、責任を取らないことがある。他国からの信頼を得ることが難しい。このことは各国が事実を正確に認識し、対応策を練る上で重要な点だ」と述べた。
中国共産党への懸念は日米のみならず多くの国々に共有されていると指摘。ロシアによるウクライナ戦争では意見の一致しない米国とインドでも、インド太平洋地域の安全保障では意見を合わせることができると例示した上で、対中政策には地域的・組織的な連携が一層求められると語った。
LGBT法案にも言及
エマニュエル氏はこのほか、国会で議論されている性的少数者への理解増進法案(LGBT法案)について、法案は日本自ら決定するものとの前提を強調しつつ「可決は難しくない」と述べた。
「(憲法の)枠を超えるものではなく、(憲法の理念を)強化しようとするものだ」と指摘、バイデン政権も性的少数者の権利保護を掲げていると述べた。
エマニュエル氏の発言に対して一部の議員や識者からは苦言が呈されている。山田宏参議院議員は12日、「『期待』とは言え、大使の発言としては日米関係とは関係のない、不適切な内政干渉的発言だ。米国内ですら民主党と共和党の対立案件となっている」とツイートした。
また、龍谷大法学部教授の石埼学氏は「LGBTへの『理解増進』が憲法の『原則や価値、理想』を明示というのは論争的。憲法は個人を個人として尊重することを要請し、その属性ゆえに尊重することを要請していない」と指摘した。
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