イタリアがChatGPTを禁止 プライバシーと年齢確認の問題で

2023/04/04
更新: 2023/04/05

イタリアのデータ保護当局は3月31日、昨年11月公開された対話型AI(人工知能)「チャットGPT」の使用を一時的に禁止すると発表した。当局は開発企業の「オープンAI」社による膨大な個人データの収集は個人情報保護法に違反すると指摘している。

ユーザーがテキストで質問すればウェブ上の膨大なデータを参照し、人間のような回答を返してくれるチャットGPTは、世界的ブームを巻き起こしている。3月発表されたUBS投資銀行の推計によると、昨年11月の公開からわずか2か月で月間アクティブ ユーザーが1 億人に達した。この高度AIが医師免許や司法試験で合格する日も遠くないとされる。

この潮流に反してメロー二極右政権はチャットGPTの停止措置を講じた。データ保護当局の調査によると、収集した個人データを利用者に適切に通知することなく、法的根拠なしにAIの訓練用に使用した可能性があるという。

さらには利用規約で13歳以上の年齢制限を設けるも年齢を確認する仕組みはなく、AIとのやり取りで子どもが年齢にふさわしくない回答を受け取る恐れがあるとした。イタリア当局は個人情報の違法収集の疑いと年齢確認の仕組みの未整備を理由に使用禁止を決めた。2000万ユーロ(約29億円)の罰金が科される可能性もある。

イタリアにデータサーバを置かないオープンAI社によれば、「イタリアからは利用できない仕組み」を当局が設定したのではないかと推計する。このアプリケーションを停止した国は欧州で初。このほか中国本土、香港、イラン、ロシア、アフリカの一部では使用できない。

チャットGPTの技術の急速な発展は日本当局や議員も注目している。朝日新聞によると、政府側から「(国会)答弁を作るためのたたき台にはなる」(総務省幹部)と歓迎する声もあるという。3月29日の衆院内閣委では中谷一馬議員(立憲民主党)がチャットGPTを使い感染症対策政策の質問を作成すると、岸田首相がその問いに答えた。

しかし、高度AIが人類文明に大きな変化を与えかねないとして、有識者が開発の一時停止を呼びかける事態にまでなっている。イーロン・マスク氏らテック界の実業家らは3月末、公開書簡を通じて、法整備や検証などが不足したまま予想困難な最先端AIの開発競争を行わないよう、開発者らに呼びかけた。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
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