中国で激増する自殺者は「生活できない老人」 貧困に沈む大国(3)

2023/03/23
更新: 2023/03/22

(前稿から続く)「たとえ少しでもいいから、この社会の進歩を促したかった。しかし、それさえ許されないとは思いもしなかった」と、できるだけ抑制したかたちで「遺憾と不満」を吐露した戸晨風氏。案の定そのライブ配信後、戸氏の配信アカウントは、なんと直接削除された。

「こうなったら寝そべりしかない」

Bilibili(ビリビリ)やTikTok中国版「抖音」。これら中国の2大動画配信プラットフォームからの徹底した封殺の事態に、ネットユーザーは大騒ぎとなった。戸氏のアカウント封鎖のニュースは、瞬く間にツイッターなどの海外SNSにも拡散され、多くのメディアが取り上げた。

「ひどすぎる。ただ多くの民衆のリアルな生活を伝えただけで、アカウントを止めるなんて」

「これは中国の言論環境の窮屈さとともに、不協和音に対する当局の恐怖感を浮き彫りにしたと言える。今では、憐憫(れんびん)の声を上げることすら許されないなんて」

「富裕を見せびらかすことも、貧困を嘆くことも許されない。こうなったら躺平(寝そべり)しかない」など、ため息のような声がネット上に広がった。

中共の「共同富裕」の嘘を暴いた映像

中国の芸術家である童一敏氏は17日、大紀元の取材に対し「(戸氏は)低層民衆の苦難を露呈させてしまった。だから動画が封殺されたのだ」と指摘し、次のように述べた。

「動画に映ったような高齢者の現状は、いま中国の至る所でみられている。彼らは、一生かけて懸命に働いてきたが、十分な年金も生活保障もない。なかには、一生の努力の結晶であるお金を銀行に預けたまま、引き出せなくなった人もいる。その一方で、共産党体制内の退職老人は、各種の特別待遇を享受し、世界中を旅行するなど贅沢な生活をしている」

「底層の高齢者の貧困を伝える映像は、共産党が宣伝する貧困からの脱却や共同富裕の嘘を暴いた。当局は当然、自分たちのイメージにマイナス影響を及ぼすものを許さない」

米国在住のフリーのメディア従事者、黄子茵氏は17日、大紀元の取材に対し「恵まれない低層の人々の苦しい生活をテーマにしたショートムービーは、特に人々の共感を引き起こしやすい」と指摘した。

「このような動画は、人々の現実への不満を刺激する。自分や周りの老人が、苦しい生活をしているのはなぜか。なぜ世界第2位を誇る経済大国なのに、中国の老人たちはこれほどみじめなのか。そういうことを考えさせる機会になる」

その上で黄氏は「人々が自分で思考を始めれば、おのずと中国共産党による独裁体制が、中国人民の苦難の根源であることに気づくだろう」という。さらに黄氏は、こう話す。

「わずかな肉すら食べられず、貧困にあえぐ自国民が少なくないのに、中国共産党はアフリカやアジアに大金をばら撒いて外国人の生活を潤している。中国国民から搾取したそのお金を外国でばら撒き、軍用につぎ込むのだ」

「中共の高官は、蓄財した金をスイス銀行などに預けるが、自国の人民には使わせない。中国の低層の人民は、最も基本的な生活保障すら受けられないでいる」

貧困にあえぐ「老人の自殺」が増加

中国国家社会科学基金が以前に行った調査は、農村部の高齢者が貧困や医療を受けられないことを理由に自殺する現象が「驚くほど深刻だ」とする結果を出している。

調査によると、農村の高齢者が首を吊ったり、毒を飲んだり、川に飛び込んだりするケースが本当に普遍的に存在しているという。湖北省の京山県には「自殺小屋」や「自殺洞窟」と呼ばれる自殺の名所があるとも言われる。

中国の伝統的な家族観に「息子が、高齢の親の面倒をみる」という思想がある。それが今では、自殺の方法を暗喩する「薬息子、縄息子、水息子の3人の息子が、一番頼りになる」と話す農村の老人もいるほどだ。

もちろん老人が自殺する現象は農村部に限らず、都市部でも同じで、高齢者の自殺率は年々上昇しているという。清華大学公共健康研究センターの責任者を務める景軍教授は、かつて「中国の高齢者の自殺率は2000年以降急速に上昇している。2018年時点で、すでに世界で2番目に自殺率が高い」と明かしている。

中国の山東省出身で、盲目の人権擁護活動家である陳光誠氏はかつて、山東省の農村における老人の自殺についてこう話している。

「彼らは(高齢になっても)働かなければ何もない。自殺する原因は、生活ができないからだ」(完)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!