「米国に戻ったら、かわいがってやる!」 米国市民を脅す中国出身の現役警官「中共の越境執法より質が悪い」

2023/03/18
更新: 2023/05/26

「米国に戻ったら、かわいがってやるぞ!」。ジョークで言っているのではない。動画のなか、威圧的な表情で「脅迫の言葉」を発するのは親中共の華人・黄斌豪氏。その職業は、なんと米ニューヨーク市警の現役警察官である。

本人による自撮り動画が華人圏に拡散され、衝撃を走らせている。米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)14日付が報じた。

警官の制服を着た「脅迫者」

「米国の現役警察官」である者が、中国共産党の政策に異見を持つ米国市民を名指しし、その市民の安全を脅かすことを予告する。これは明らかに脅迫であり、しかも「米国に戻ったら」と言っているので、たとえ口にするだけでも、国民の安全を守る公務員として明らかな背任行為である。

この前例がない、ゆゆしき事態に民主活動家らは「中共の越境執法より質(たち)が悪く、恐ろしい存在だ」として警戒を強める。民間でも当局の介入を呼びかける動きが広がり、事件は波紋を広げている。

「米国市民への脅迫」のほかにも、「反米親共」や「ウクライナ侵攻のロシアを支持する」など、中国共産党の立場と一致する数々の動画を中国のSNSなどに投稿した。その人物は、ニューヨーク市警察(NYPD)79分署に勤務する中国系の現役警察官、黄斌豪(Ben hoo Wong/51歲)氏だ。

個人的な信条が何であるかは別としても、警察官である黄氏が、一般市民を脅迫したことは問題視されて当然と言える。

黄氏は、自身が中国のSNSに投稿したと思われる自撮り動画のなかで、一昨年に中国の西安警察に拘束された中国系アメリカ人の姜氏について言及している。

黄氏は「姜は中国の疫病政策に従わず、祖国に迷惑をかけた」と姜氏を批判した後、「姜がもし米国に戻ったら、可愛がってやるぞ!」などと脅していた。

中共への信奉ぶりは「車で台湾に行く」ほど

ほかにも黄氏は、中国共産党の創立記念日のたびに、祖国の繁栄を祝福する内容の動画を投稿している。

また黄氏は「2034年开車去台湾(2034年には車を運転して台湾に行く)」など、中国による台湾統一をほのめかす歌を動画のなかに入れた。中国の習近平国家主席は、中国が主張する台湾統一事業の一環として、大陸と台湾をつなぐ「台湾海峡大橋」の建設をうたっている。

さらに同氏は「中露は同一戦線上の良き兄弟である」として、「ロシアがもし倒れたら西側包囲網の次の標的は中国になる」として、露ウ戦争でのロシアの勝利を望む発言をしている。

こうした動画や言動が、華人圏を中心に拡散されて波紋が広がると、黄氏は関連動画を全て削除し、ツイッターアカウントまで自分で削除した。

「米国に戻って来い。かわいがってやる!」

動画に残された、黄氏の中国語による脅迫は、次の通りである。

「おまえは警察を呼ぶの得意だろう?さあ、来いよ。米国に戻って来い。(通報して)俺を呼ぶが良い。かわいがってやるからな!(你不是很会报警吗?来呀,回美国来,找我报警,看我怎么收拾你!)」

この脅迫動画を見たネットユーザーは、相次ぎコメントを残した。

「米国警察の制服を着て、米国の地で中国共産党のために弾圧を行う行為は決して容認できない」

「この男は、ニューヨークにいる反共市民の身の安全を脅かす深刻な存在だ」

「黄は米国警察の制服を着て、米国民の税金で生活しているのに、常に祖国(中国)のために貢献しようとしている。米国は、このような裏切り者を見て見ぬふりをしてはならない」

「これも中国共産党による洗脳教育の成功例だ」

「中国の越境執法より質が悪い」

この件を最初に暴いたのは、オランダに亡命中の民主活動家・王靖渝氏である。王氏はRFAの取材に対し、黄氏が動画で見せた「二つの顔」について明かした。

これらの、いわゆる「問題動画」は全て、ウィーチャット(微信)やTikTok中国版「抖音」など中国SNSに投稿されているが、ツイッターやTikTokには一切そのような「中共称賛」の動画をアップしていないという。

RFAの取材に応じた米人権団体・人道主義中国(Humanitarian China)代表の人権活動家・周鋒鎖氏も、「民主国家の自由を享受する一方、独裁国家である中国を称賛して、そこから報酬を得ようとする。そんな二つの顔を持つ、両面人が増えている」と指摘している。

周氏によれば、今回の黄警官はまさにこの「両面人」というわけだ。

王靖渝氏は、携帯電話に見知らぬ中国人から100回を超える着信を受けたり、「海外警察」を名乗る人物による対面での帰国催促、さらには駅前でナイフをちらつかす男から「殺すぞ」と脅された経験もあるという。

そんな王氏は「公権力を持つ現役の警察官が、中共に協力して、米国市民を脅迫する。これは中共の(海外警察など)越境執法より質(たち)が悪く、恐ろしいものだ」と語った。

周鋒鎖氏も、今回のような現役警官の「両面人」は初めてだと述べ「これは非常に危険な現象であり、容認できない。調査を行うべき」と訴えた。

米ハドソン研究所の中国問題首席戦略家で退役軍人のロバート・スポルディング氏も、同件について自身のSNSで「調査を行うべきだ」と主張している。

「これは警鐘ととらえるべき」時事評論家

今回の事件をめぐり、時事評論家の唐浩氏は大紀元の取材に対し「これは日米など外国にとって、タイムリーな警鐘ととらえるべき」と指摘する。

「米国にも日本にも、仮に報酬がなくても中国共産党を積極的に擁護する中国系移民がいる。彼らは子供の頃から中共による民族主義的な洗脳を受けてきた。そのため、共産党や祖国への忠誠心を至上の愛国心と考え、米国や日本への恨みが根深い人も多い」

「そのような人たちは、より良い生活や自由を求めて中国から海外に出たものの、その心は本国や共産党に縛られている。そのため、彼らは往々にして中国や共産党を擁護してしまう。しかし、そのような行動は海外にいる華人に迷惑をかけるだけでなく、中共が海外で展開する諜報活動に手を貸すことにもなりかねない」

その上で唐氏は「米国など海外の政府、および軍・警察部門は、国家安全保障の観点からも、中国出身の華人を雇用する場合は、綿密な身元調査を行う必要がある。普段からの言動に、極端な親共や他国への敵対的な傾向がないか、十分に見極めるためである」と注意を促した。

ニューヨーク市警察79分署の公式サイトによると、黄氏は2019年から同署に勤務している。事件に関して、現時点での同署からのコメントはない。

中国政府が、海外で民主活動家を監視し弾圧を行う、いわゆる「海外警察」を設置していることをめぐり、各国政府が相次ぎ調査に乗り出している。この「海外警察」は日本にも存在し、工作員が暗躍している。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。