全国政治協商会議(政協)の機関紙「人民政協網」は9日、政協委員であり「中国平和統一促進会(統促会)香港総会」の会長でもある姚志勝氏による「香港の物語を台湾人民に聞かせるべきだ」との談話について報じた。
中国和平統一促進会(中国平和統一促進会)は「中国本土と台湾の平和的な統一を促進する」ことを目指す半官半民の組織とされるが、実態としては中共中央の統一戦線部が主管している。「平和的に」という表看板に反して、海外での台湾独立(台独)の動きには激しく非難するのが常である。
香港は「一国二制度の成功例」か?
姚氏は「祖国統一への必然的な流れに直面するなか、ますます多くの台湾人民が一国二制度の方針について理解を深めたいと考えている」と前置きした上で次のように言う。
「香港は、一国二制度の成功例だ。香港は台湾人民がこの制度を十分かつ正確に理解できるよう、これを伝える架け橋の役割を果たすべきだ」
具体的に、どのような「香港の物語(香港的故事)」を台湾人に聞かせるのかということに関して、姚氏はこう提案する。
「台湾同胞を安心させるため、香港の社会制度および生活スタイルが長らく変わらないという物語だ。さらに台湾人民の経済に関する懸念を払拭するために、香港の経済発展なども伝える」
台湾は、香港の二の舞になってはならない
姚氏はさらに、こう述べる。
「一国二制度という方針、および祖国という強大な後ろ盾があってこそ、台湾の平和が保障されることを台湾に知らせるべきだ。香港という一国二制度の成功例を伝え、台湾人民の心をつかむことで、平和統一のプロセスを効果的に推進できるとともに、統一後の台湾の統治工作にも有利になる」
中国メディアによるこうした「香港の物語」の報道は、ツイッターなどSNSでも伝えられ物議を醸している。
そこには「なんて恥知らずな」「恐ろし過ぎる物語だ」「台湾人を恐怖のどん底に突き落としたいのか」「これは台湾人に対する赤裸々な脅迫だ」というコメントが相次いだ。
なかでも、ある台湾人の次のようなコメントに多くの賛同が集まった。
「よーくわかった。(台湾は)決して香港の二の舞になってはならないということだ。人民政協網の注意喚起に感謝する」
「本当の香港物語」は凋落した国際都市
香港はかつて、世界の金融センターとしてアジアを代表する有力都市だった。
しかし、1997年に英国から中華人民共和国(中国)に返還されて以来、20年以上が経過した現在は、自由な国際都市としての機能が失われ、徐々に中国の一地方都市と化した。米国企業の8割が撤退したともいわれるなか、外国資本の香港流出は今も止まらない。
2020年6月、反政府的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)が施行される。これにより、香港の民主活動家らは逮捕・投獄された。
また、中共が指定する「愛国者」による香港の統治、香港民主派の統治機構からの排除などにより、香港に高度な自治を認めたはずの「一国二制度」は反故にされ、事実上崩壊した。
香港の教育現場でも中国式の「愛国教育」が急速に進められている。中学や高校の新版教科書は「香港は英国の植民地ではなかった」といったような、歴史を改ざんした記述に変えられた。
周知のように、中国に併呑された香港の末路は「恐怖物語」以外の何物でもない。なお、中国平和統一促進会の支部は、日本の東京にも存在する。
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