中国製のクレーンは精巧なセンサーを備えており、輸出入データを追跡するなど中国政府のスパイツールになっている可能性がある。6日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。
疑惑の目が向けられているのは、クレーン世界最大手の上海振華重工(ZPMC)の貨物用クレーン。安価で販売されているものの、コンテナの出所や目的地を登録し追跡できる精巧なセンサーが搭載されている可能性があるという。WSJによれば、中国の国有企業であるZPMCは、現在米港湾で操業しているクレーンの約80%を占めていると推定される。
こうした中、一部のセキュリティ専門家は米軍事物資の輸送状況に関する情報を中国が入手できる可能性があると指摘する。
米国の防諜当局の幹部を務めたビル・エバニナ氏は「クレーンは新たなファーウェイになり得る」とWSJの取材に答えた。「合法的なビジネスでありながら、秘密裏での情報収集活動ができるという完璧な組み合わせになっている」
かつてヒューストン港のサイバーセキュリティー担当をしていたクリス・ウォルスキ氏も、攻撃者がクレーンのセンサーを無効化してクレーンを停止させることが可能だと指摘。緊急性のある軍事物資の輸送妨害になりかねないとの見解を示した。
国防情報局が行った2021年の機密評価は、中国はクレーンを通じて軍事機器の出荷に関する情報を収集できる可能性があるとしている。
ZPMCは中国交通建設(CCCC)の子会社でもある。CCCCは「一帯一路」構想の主要な請負業者の一つで、インフラ建設などを通じて、南シナ海への中国の軍事的拡張を進めている。米当局は2020年、中国当局の軍民融合計画への関与を理由に、CCCC子会社5社を輸出管理対象とする「エンティティリスト」に加えた。
当時のポンペオ国務長官は「中国(共産党)がCCCCやその他の国有企業を武器に拡張主義を押し通すことを許してはならない」と発言していた。
進む法整備
中国製クレーンの潜在的な脅威に対抗するため、米国では法整備が進む。
2022年12月に成立した2023年国防権限法には、連邦海事局が国防総省、国土安全保障省、サイバーセキュリティおよびインフラセキュリティ庁(CISA)と協力して、米国の港で使用される外国製クレーンの脅威調査を実施するよう求める条項が含まれている。
調査は12月までに完了し、下院運輸委員会、上院商業委員会、上下両院軍事委員会に提出される予定だ。
また、2022年1月にはカルロス・ギメネス議員が、「2022年ポートクレーン保安検査法案」を提出した。米国の港で敵対的国家が作った外国製クレーンの使用を制限することを目的に、セキュリティの脆弱性や脅威を調査することをCISAに義務付ける内容が盛り込まれていた。
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