米国は日本、韓国と新たな経済安全保障対話を立ち上げ、協働して中国に対する技術的な競争力を高めることを図る。28日にホノルルで初会合が開かれた。3カ国の技術産業を通じて半導体や新興技術、バッテリー、データの透明性などに関連する問題に対処する。
米中技術競争への半導体産業サプライチェーンの強靭力を高めることも狙う。バイデン政権が昨年可決した、米国の半導体生産体制強化に向けて産業界に資金援助を行う「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法」の予算から捻出されるとみられる。
日米韓の安全保障対話は、以前より存在する北朝鮮の核脅威に焦点を当てた3国間協力の拡大版となる。昨年11月にプノンペンで開催された東アジアサミットで決定した。
現代の戦略物資と呼ばれる半導体をめぐり中国デカップリングを試す米国は、先進半導体製造装置の対中輸出規制に協力するよう、日本とオランダに呼びかけたとされる。両国には世界的なチップ製造技術のリーダー企業が存在する。
韓国は以前、在韓米軍の高高度ミサイル設置契約で中国から経済報復を受けた経緯から、対中切り離しには足踏みしている。米商務省の求めに応じた対中輸出規制には、韓国企業への影響を図るため1年間の猶予を設けられたという。
米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の人工知能ガバナンスプロジェクトのグレゴリー・アレン氏は、日本と米国が協調的な切り離しをしたとしても、韓国が抜け穴になっては無効化してしまうと指摘する。「これは日米が避けたいシナリオだ」とボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた。
台湾の半導体
このほか、2月にはこの3カ国に加え台湾高官を含めた「チップ4イニシアチブ」の予備会議が開催された。半導体サプライチェーンの安定化を目指し、半導体製造の原材料や製造装置を含む混乱を防止する早期警告システムを設置することが提案された。
半導体ファウンドリー(受託製造)の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、400億ドルを投じてアリゾナ州に半導体工場を2棟建設する。工場は2024年に稼働する予定で、1万人以上の雇用を創出し、米史上最大の外国投資の1つとされる。TSMCは熊本県の工場もすでに建設を開始しており、2024年末までに生産開始する。設備投資額は86億ドル、従業員数は1700人とされる。
台湾は世界で最も先進的な半導体の90%以上の生産を担っているとされる。一部のアナリストは、生産拠点を米国や日本に移してしまうと、地政学資産としての「シリコンシールド」が弱まり中国の軍事侵略のリスクが高まるとの見方を示している。
どのような理屈か。中国は生活家電などに使用する半導体をTSMCに依存しており、台湾の安定性と中国の利益が結びついていること。さらに、台湾の半導体製造能力が西側諸国の台湾主権関与への動機づけになっているとの視点だ。
いっぽう前出のアレン氏はこうした指摘を否定する。世界的なデジタル化が進むにつれて台湾は戦略的な意味を持ち続けるとした。「(先進半導体の供給が)90%から75%になったとしても、台湾は変わらず世界経済にとって重要だろう」。TSMC米国工場により台湾の世界市場シェアが減ったとしても、市場全体の需要は続くだろうと付け加えた。
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