中国は世界を分断する挑戦者

2023/02/25
更新: 2023/02/26

不和から悪化する世界

日本では3年前の2020年に日本上空を飛行する気球が報道で報じられたが国籍不明の気球として終わった。だが2023年2月にアメリカは中国の偵察気球と公言すると中国は気象気球だと反論した。この結果、気球の国籍が確定する。

アメリカは偵察気球と断定し2月4日にアメリカ上空で撃墜する。中国は気球撃墜を非難するがアメリカのバイデン大統領は謝罪しないことを公言。米中関係は悪化し中国はロシアへの急速な接近を露骨に示す。これに対してアメリカは偵察気球の写真を2月22日公開。同じ2月22日に中国の王毅外相とプーチン大統領がロシアで会談していた。

1970年代からの挑戦

中国は以前からアメリカに対抗意識を持っていることは知られている。1970年代の中国から見れば世界の頂点に君臨していた中華思想を持つが、現実を見ると世界のリーダーはアメリカであり現実の中国は後進国だった。しかも世界は中華思想ではなく強国のリーダーで動いている。全てが中国の世界観とは異なるので不満を持っていた。

そこで中国は軍事力強化に邁進しアメリカを打倒する未来を夢見ていた。1980年代になっても技術不足でアメリカ軍の脅威ではなかった。それでも中国は原子力潜水艦を保有し戦力強化を突き進む。

状況が変化したのは1990年代の後半からだった。インターネットが誕生しアメリカ主導で世界への普及が始まった。2000年代になる時にはグローバル・スタンダードとして世界に定着した。グローバル・スタンダードの実体はアメリカン・スタンダードだが、皮肉なことに世界に押し付けたグローバル・スタンダードが中国を急激に経済成長させた。

何故なら中国は安い人件費を武器に中国で生産する。このため中国は“世界の工場”と呼ばれる様になる。これで中国経済は急激に豊かになり資金は武器購入に使われた。実際に人民解放軍の戦力は質・量ともにこの頃から急激に向上したのは事実。

人民解放軍はアメリカ軍が保有するステルス兵器・空母を獲得したが実際の能力は不明。だがアメリカ軍から見ても人民解放軍の軍事強化は驚異となっていた。これまでの中国はアメリカとの直接戦争を回避して台湾侵攻の道を選んでいた。中国が台湾侵攻をするとアメリカは台湾を軍事支援する立場だから間接的な戦争になる。中国としては台湾を橋頭堡としてからアメリカと雌雄を決する戦争を選ぶ予定だった。

だが2023年2月4日から状況が変化した。アメリカが中国の偵察気球を撃墜したことで米中関係が悪化。そんな時に中国人が日本の無人島である屋那覇島を購入したことが知られる。屋那覇島は自衛隊とアメリカ軍基地が存在する沖縄の北方約20Kmに位置するが、日本政府は安全保障上重要な施設や国境離島を対象とする土地利用規制法の対象外に該当するとの認識を示した。

この状況は中国には有利だった。何故なら日本では簡単に軍事基地の近くに土地が買えるのだ。中国がアメリカとの雌雄を決する戦争を決意すると、日本は在日米軍を攻撃できるジャンプ台に早変わり。しかも岸田政権は中国に対して弱腰だから自衛隊に対して反撃命令を出さない可能性も有り得る。仮に出しても遅れて出すのだから中国には好都合。

 

中国が世界を分断する

中国は日本を米中戦争のジャンプ台にできる。だが、これでは不足。2月22日に中国の王毅外相とプーチン大統領がロシアで会談した。ロシアはウクライナに侵攻したが勝利を得られない。それどころか損害が増加するだけで敗北の道を進んでいる。そんな時に弱体化したロシアを中国が助ける理由は何だ?結論から言えば、ロシアとの同盟ではなくロシアを使って欧米を弱体化させたいのだ。

中国がロシアに武器を供給すると、アメリカがロシアと戦争を始めた時にアメリカは中国とロシアの二正面作戦を強いられる。それに対して中国は目の前のアジアでアメリカ軍に戦力を集中できる。アメリカは二正面作戦になるが中国はアメリカとの戦争に専念できる。この違いは大きい。

中国がロシアにすることは戦争前の明確な陣営分け。しかも緊張から対立へ向かう行為だからNATOは警戒したのだ。中国が善意でロシアを助けるのではなく中国のための鉄砲玉。ロシアは中国と隣接し覇権拡大を求めていることで共通。そんな両国が隣接するのだから友好関係は得られない。中国から見ればロシアを弱体化させる好機。しかもロシアが欧米との戦争を始めればアメリカ軍をロシアで拘束できる。この状況が得られたら中国は米中戦争を始めるだろう。

アメリカ軍がロシア軍と戦闘開始するとどうなる?中国は日本をジャンプ台にして在日米軍を攻撃開始。アメリカは二正面作戦を強いられるだけではない。ロシアとの戦争は陸軍と空軍が主役。それに対して中国との戦争は空軍と海軍が主役。

中国との戦争になると、アメリカ軍は空軍戦力を二分しなければならない。しかも対中国戦では空軍と海軍が主役だから航空戦力の不足は厳しい。アメリカ海軍の質は高いが人民解放軍海軍は量で戦うのは明らか。

さらに日本各地の土地を中国人が買うと、付近のアメリカ軍基地を監視することも攻撃することもできる。人民解放軍は質でアメリカ軍に劣るが開戦劈頭(へきとう)の奇襲攻撃が成功する可能性が高くなった。何故なら日本各地で土地を買えたのでアメリカ軍基地を複数同時攻撃できる条件を獲得したのだ。

アメリカ海軍の質に人民解放軍海軍が量で挑むならば、開戦劈頭の奇襲攻撃が勝敗を左右する。日本各地の中国人が買った土地からアメリカ軍基地に妨害が行われたらアメリカ軍の質を低下できる。僅かな時間差だとしても致命的な損害が発生する可能性を持つからだ。

この時は武器弾薬を直接使う必要は無い。今であれば大量のドローンをアメリカ軍基地に突入させるだけでも妨害になる。しかもドローンは日本各地で買えるし武器と見なされない。さらに阻塞気球を使えば航空機の離発着を妨害できる。気球を撃墜できることは明白だが安全確保までの時間を失うことになる。

 

日本政府の対応が左右する

アメリカ軍は以前からドローン対策をしていることは知られている。だが日本政府は戦争に関することは後回しにしている。これで中国は簡単にアメリカ軍基地の近くに土地を買えた。こうなるとアメリカ軍は対策をしていても日本政府が間接的に妨害していることになる。

日本政府は外国人でも簡単に土地が買えることを改めるべきだ。さらに基地周辺の土地を厳重に保護しなければならない。今であればドローン飛行の規制だけではなく妨害装置を作動させてドローンの侵入を防止しなければならない。

致命的な問題としては首相による自衛隊への出動命令は出せるのか?自衛隊はアメリカ軍との協定で動ける範囲は限定される。このため自衛隊が全力で動けるには首相命令が必要なのだ。今となっては日本が米中戦争のジャンプ台にされるのは明白。これを少しでも改善するには首相が素早く自衛隊に出動命令を決断することだ。遅れるだけ日本とアメリカに損害を出すが、おそらく首相は自衛隊に対して出動命令を遅れて出すだろう。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。