東シナ海、南シナ海で脅威を増す中国共産党の「第二の海軍」

2023/02/22
更新: 2023/02/25

インド太平洋の係争海域で、急成長し自己主張を強めている中国海警局が厄介な存在になっている。 インドネシア、ベトナムから日本、フィリピンまで、中国共産党の約150隻を擁する中国海警局の艦隊が近隣諸国の沿岸に出没し、時には漁船や石油、ガス、鉱物を求める船舶と衝突している。

中国海警局は、他国の排他的経済水域(EEZ)において権限の主張を強めている。排他的経済水域とは、沖合200海里(約370km)までの水域を指す。 中国政府は、南シナ海のほとんどの水域と地形が中国の領土であると主張しているが、2015年の国際法廷で、中国はそのような法的地位にはないことが宣言されている。

2021年2月に中国政府が施行した中国海警法は、中国が主権を主張する海域で活動する外国船に対して、この海警法を執行する艦隊が殺傷力を行使することを許可している。 この法律は国連海洋法条約に違反し、自由で開かれたインド太平洋の原則に逆行すると、ニュース誌「ザ・ディプロマット」は2021年4月に報じた。 「法執行機関と称しているが、中国海警局の戦闘能力はアジアのほとんどの海軍をはるかに凌駕している」と同誌は報じている。

共同通信が2023年2月上旬に報じたところでは、中国海警局は第二の海軍ともいえる存在であり、一部の艦船には軍艦と同じ大砲が装備されている。 2015年4月の時点で、米国海軍研究所は中国共産党が 「海警法執行、および海警局を国家運営の道具として着実に利用している」と指摘していた。 それ以来、中国海警局は劇的に成長し、船舶や人員を増やし、対立を引き起こしている。

  • 中国とフィリピンの法執行機関と中国海警局は、2022年11月末に中国のロケットの残骸を回収していたフィリピン船の引き綱を中国海警局の船員が切断した際に、パグアサ島(ティトゥ島)沖で対立した。AP通信によれば、アユンギン礁とも呼ばれるセカンド・トーマス礁でフィリピン海兵隊への食糧輸送を妨害しようと中国海警局の船舶が放水砲を発射してからおよそ1年後のことだ。 フィリピン沿岸警備隊は、この地域の漁民などに対する中国海警局の脅威を阻止するためにパトロールを強化していると、ロイター通信は2023年2月初旬に報じている。
  • 2023年1月下旬、東シナ海の尖閣諸島周辺の日本の領海で、中国海警局の船舶4隻が民間船に接近したことを、ジャパンタイムズ紙が報じた。 日本の海上保安庁の船は、中国海警局の船に対して退去を要求した。 両国はこの海域の排他的権利を主張しており、しばしば対立の場となっている。
  • ラジオ・フリー・アジア(RFA)は2023年1月、中国海警局最大の船舶が、インドネシアとベトナムが領有権を持つナトゥナ海のガス田と油田の近くで数週間にわたり巡行し続けていたと報じた。 インドネシアの軍艦が中国海警局の船舶を監視した。

戦略国際問題研究所のアジア海上透明性イニシアティブ(Asia Maritime Transparency Initiative – AMTI)によると、中国海警局は2022年に南シナ海5か所でプレゼンスを高め、一部の地域ではほぼ毎日巡行を実施している。

例えば、2012年に中国がフィリピンから奪取したスカボロー礁では、中国海警局の船による巡行が2020年の287日から2022年には344日に増加していることが、AMTIの分析で明らかになった。

ベトナムが石油・ガス開発を行っているバンガード堆では、中国海警局の船による巡回は2020年は142日であったのに対し、2022年は310日にまで達している。

こうした活動は、中国政府が自国の領土と主張する広大な海域を支配しようとする決意を示していると、AMTIの2023年1月の報告書は結論付けている。

一方、東南アジア諸国連合が最近復活させた南シナ海行動規範の策定作業は、地域の様子が合意に資するものではないため、成功の見込みはほとんどないと、アナリストらが2023年2月初旬にベナール・ニュースに語っている。

シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究大学院のコリン・コウ(Collin Koh)研究員は同ニュースに対し、「インドネシア、マレーシア、フィリピンなど東南アジアのライバルに対する中国の最近の海上での強制的な行動は、信頼の構築に寄与しないだろう」と述べている。

Indo-Pacific Defence Forum