中国「一帯一路」は恐るべき罠 狙った相手を債務で従属国にする

2023/02/18
更新: 2023/05/26

中国が主導する広域経済圏「一帯一路」。この計画は、2013年9月に中国共産党の習近平総書記がカザフスタンのナザルバエフ大学で行った演説で「シルクロード経済ベルト」の構想を提案したことに始まる。

以来、約10年が過ぎようとしているが、中国が進める「一帯一路」は、アジアやアフリカの多くの国を「恐るべき債務の罠」に陥れてきた。

「不平等条約どころではない。従属国だ」

アフリカ東部の国ケニアは、2014年に中国と締結した事業であるモンバサ・ナイロビ標準軌鉄道(SGR)を2017年5月に開業させた。

これは、ケニアが1963年に英国から独立して以来最大規模のインフラ事業であるが、中国側からは「一帯一路」構想の一部として位置づけられている。

モンバサ・ナイロビ標準軌鉄道は“Standard Gauge Railway”(標準軌鉄道)の頭文字を取って「SGR」と呼ばれる。ケニア政府は、SGRが経済活性化の起爆剤になると期待をかけてきた。

しかし、その実態は完全に中国主導であり、ホスト国であるケニアにとって大きな不利益であることが判明した。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、2022年9月に就任したケニアのウイリアム・ルト大統領が同年の後半に公開した契約文書には、以下のような条件が記されていた。

「鉄道運行による収入で購入する物品は、中国産のものが望ましい」「契約の履行に伴いトラブルが生じた場合は、中国の仲裁によって解決する」「中国側の同意なしに、第三者に契約内容を開示してはならない」

「開示してはならない」とされていながら契約文書を公開したことは、中国側の反発を招くことは覚悟の上という、ケニア側の判断でもある。

この契約文書の内容について、台湾契約文書の金融系教授で、公共財政と国際債務問題の専門家である楊德源氏は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューに答えた。楊氏は「もはや不平等条約どころではない。これは中国の従属国になる契約だ」と指摘した。

まるで19世紀「帝国主義の再現」

楊氏はさらに「中国のやりかたは、まるで19世紀の帝国主義の再現だ」と言う。

「中国は勢力拡張のために、ケニアやアンゴラスリランカなどの、資源はあるが政治的に腐敗している国の政府関係者を、まず買収する。さらに鉱物資源の採取を開始し、やがてホスト国を全て乗っ取るのだ」

その上で楊氏は「本来、インフラ建設はホスト国に雇用機会や所得増加をもたらすものだ。しかし、相手が中国である場合、ホスト国にとっては何のメリットもない。ホスト国を、ただ従属国として扱い、搾取する。ホスト国が中国に抵抗するようになるのは時間の問題だろう」と指摘した。

また、台湾国防部のシンクタンクである国家安全保障研究所の准研究員・侍建宇氏も「中国は、債務でホスト国を支配している」とRFAに語った。

侍氏は「中国の一带一路は、その計画段階から数えて10年経つが、ホスト国は巨額の債務を抱えるようになった。債務が、国のGDPの4分の1以上を占める国も多い」という。

さらに侍氏は「アフリカで影響力を拡大する中国は、アフリカの友人たちの協力を得て、国際的な発言権の向上を図っている。一方、ホスト国が借金を返せなくなると、その国の資源を取り上げる。また軍事上、戦略的な位置にあるホスト国には、中国の軍事基地を設置する」と述べた。

中国の「一帯一路」に警戒せよ

しかし近年、対中債務の急増に警戒し始めたアジアの新興国では、中国の「一帯一路」の関連事業を縮小する動きが相次いでいる。

こうした動きに対し、昨年8月、中国の王毅外相は突如、アフリカの17カ国に向けて、支払期限がきた23件の無利子貸し付けについて「債務の免除」を提示した。その総額は100億ドルに及ぶ。

近年の国内経済の減速で、中国は「一帯一路プロジェクト」の見直しを余儀なくされるだろうが、それでも「中国はアフリカをあきらめない」と侍氏は指摘する。

一方、アフリカで影響力を増大しつつある中国に対抗するため、主要7カ国(G7)は途上国向けのインフラ支援構想「Build Back Better World (B3W)」を打ち出している。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。