中国大使の「日本侵略」発言…在豪日本人、歴史利用は中国の「常套句」

2023/01/13
更新: 2023/01/13

中国の肖千・駐豪大使は、第二次世界大戦中の日本の行動を取り上げて、豪州に「日本に気をつけろ」と述べた。発言は、中国の拡張主義に対抗して関係強化を図る日豪関係に楔を打ち込むことを狙ったものとみられる。

肖氏は10日、在キャンベラ中国大使館で開かれた新年の記者会見で、第二次世界大戦中の日本軍によるダーウィン攻撃や、豪州人捕虜への対処を取り上げ、「日本は過ちを受け入れていない」「また同じ歴史を繰り返すかもしれない」と批判した。

外務省によれば日本は謝罪を行っている。終戦後の1957年、岸信介首相(当時)は豪州を訪問し、戦時中の行いに対する反省と犠牲者への哀悼の意を示した。安倍晋三首相が2015年に発表した戦後70年談話でも、「植民地支配から永遠の決別」「大戦への深い悔悟」をしたためた。

歴史利用は「もはや常套句」

日本は豪州と安全保障上の連携を強化する円滑化協定を結ぶなどして結束を強めている。日米豪印4カ国の戦略枠組みのメンバーでもある。

日本とオーストラリアの関係に軋轢を生もうとする中国の歴史利用は「もはや常套句」だと、在豪日本人でダーウィン戦争博物館日本語ガイドを務める平山幸子氏は大紀元の取材に語った。

それは2013年、平山氏が豪州北部準州政府首席大臣室多文化共生アドバイザーを務めていた時のことだ。中国外交官がテリー・ミルズ州首相を訪ねた際に「日本と豪州は戦争していた」「日本軍から空爆を受けている」と第二次世界大戦中の話を持ち出した。

外交の接遇場面で戦争史、ましてや他国の攻撃について話題にあげた中国外交官の言葉に州政府関係者は驚いたという。

当時、中国資本の厚い豪メディアや華人団体によるネガティブキャンペーンが続き、親日家だったミルズ氏も標的となっていた。評判を落としたミルズ氏が東京へ公式訪問中、州議会は同氏を失脚させた。

後任の親中派州首相が誕生すると2015年、中国軍と繋がりの深い嵐橋集団による州都ダーウィン港の99年租借契約が決まった。

平山氏によると北部準州は資源が豊富で、中国依存脱却を図る日本にとっても重要な地域だ。しかし、ミルズ氏の失脚によって日本経産省らとの契約交渉の話もキャンセルとなり、日豪関係は距離が生まれることとなった。

肖氏の歴史発言について「今は日本と豪州との関係がいかに重要であるかを表しているのでは」と平山氏は指摘する。日本は、ダーウィン攻撃等の戦争問題を含め両国関係に真摯に向き合い、信頼を築いていくべきではないかと語った。

豪首相、日本関係は「非常に良い」 タカ派の山上大使は反論

11日、アルバニージー首相は肖氏の発言について記者団に問われると「日本とは非常に良好な関係」であり、2023年もクアッド会合が豪州で開催されることを期待すると語った。

いっぽう中道左派のアルバニージー政権は中国との関係修復も念頭に置いている。同じ会見で「中国とも関係改善したい。大使の発言は前向きで建設的だったと思う」と述べた。 ウォン外相は先月、中国を訪問し王毅国務委員と会談。3年ぶりの豪外相の訪中で、中国は禁止していた豪州産石炭輸入を1月に再開させた。

対中強行姿勢の鮮明な山上信吾・駐豪日本大使は、肖氏の発言に強く反論した。「平和を愛し、ルールを遵守する日本の戦後の軌跡は誰もが知っている」とABCテレビに語った。

「現在の問題は80年以上前に起こったことではない。この地域(インド太平洋)全体の強制と脅迫にどう対処するかだ」「この面でオーストラリアと日本は完全に同意している」と強調した。

山上氏はオーストラリアン紙9日付でも、中国政府は言動不一致であり、日豪は中国に対して「警戒」を続けるべきとの認識を示した。

水際政策強化を実施する日本や韓国に対して、中国政府はビザ発給停止という報復的行動をとったと指摘。国際的な貿易枠組み「環太平洋経済パートナー協定(CPTPP)」にも中国を参加させてはならないと警告を発した。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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