COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックから約3年が経過した。専門家は、一般に「ロングコビッド(コロナ後遺症)」と呼ばれる長引く症状やその症状の最善の治療方法などについて理解を深めようと努めている。
1万6000人以上を対象とした横断的研究によると、過去にCOVID-19に感染した米国の成人の15%が、ロングコビッドの症状を訴えたという。
米国疾病対策予防センター(CDC)の報告によると、米国の成人の13人に1人が、最初にCOVID-19に感染してから3カ月以上続く症状を経験しているという。
これらの症状は、既往症のある 65 歳以上の患者に最もよく見られる。
「シンシナティ大学医学部循環器健康・疾患部門のリチャード・ベッカー博士は、大紀元の取材に対して、「これは、一つまたは複数の既往症が悪化した結果かもしれないが、免疫反応の変化に起因している可能性もある」と述べた。
今年の初めに行われた研究によると、軽い感染症の後でも、数ヶ月にわたって免疫反応に重大な障害が発生することがあるという。
ベッカー氏は、COVID-19の患者が入院中か自宅療養かにかかわらず、後遺症は同じように発生する可能性があることを強調した。
「500人以上の後遺症患者を治療した経験から、最も一般的な症状は、疲労感、運動後の疲労感、息切れ、胸痛である」とCOVID-19後遺症クリニックの運営を兼ねているベッカー氏は述べた。またブレインフォグ(「脳の霧」と呼ばれる頭がボーっとする症状)や嗅覚、味覚障害も一般的な症状として報告している研究もある。
ベッカー氏の初期治療アプローチには、心臓、肺、筋肉、および関節を評価するための慎重に選択された検査が含まれる。これらの 1 つまたは複数に関連する診断に続いて、症状を緩和するための身体的および精神的な方法を患者に指導し、的を絞った治療を行うという。
「私たちは、呼吸の仕組みやペースに合わせた活動、身体的・精神的・感情的な過剰なストレスなどに焦点を当てたCOVID回復リハビリテーションプログラムが有効であることを発見した」とベッカー氏は述べた。
ウイルス感染後の慢性疲労症候群
COVID-19のコホート研究のレビューによると、症状発現後16週間から20週間の間に、最大で33%の患者が持続的な疲労を報告していることが分かった。
「死亡、心臓障害、脳卒中は、COVID19による最も破壊的で持続的な後遺症となる可能性があるが、大きな問題は、ウイルス感染後の慢性疲労症候群と線維筋痛症だ」と、専門委員会認定の内科医であり、慢性疲労症候群、線維筋痛症、睡眠、痛みの分野で全国的に有名なジェイコブ・テイテルバウム医学博士が述べた。
ウイルス感染後の慢性疲労症候群(CFS)の兆候には、最初の感染から 3 か月以上続くブレインフォグまたは痛みを伴う疲労感が含まれる。
「『The Great Resignation:大量退職(新型コロナウィルス蔓延によるパンデミックをきっかけに、自発的に仕事を辞める従業員が大量に増えている現象)』で離職した人の大多数が、COVID感染後の慢性疲労症候群の軽いケースだったのではないかと疑われている」とテイテルバウム氏は述べた。
慢性疲労症候群は、私たちの生活の質に深刻な影響を及ぼす可能性がある。「より重度のウイルス感染後の疲労を抱えているCOVID患者の10%の人々は、完全に身体の自由が効かなくなる可能性がある」と同氏は説明している。
効果的な方法を見つけるための研究は進行中だが、COVID19感染後の慢性疲労症候群に対する特別な治療法は現在ないという。
しかし、テイテルバウム氏は、COVID感染後の慢性疲労症候群は治療可能であると考えており、彼の共著による研究では、一般に入手可能な根エキスが役に立つ可能性があることが分かった。
これまでの研究で、高麗紅参と呼ばれる独特のオタネニンジンの根エキスが、慢性疲労症候群を改善する効果があることが分かった。
テイテルバウム氏の研究によると、ウイルス感染後の慢性疲労症候群や線維筋痛症を患う人の60%が、高麗紅参を摂取するだけで改善されたそうだ。
このグループの改善は、エネルギーが平均67%増加、全体的な幸福感が平均44%増加、精神的明瞭さが平均48%改善、睡眠が平均46%改善、痛みが平均33%減少、そしてスタミナが平均72%増加したという。
高麗人参は、ほとんどの人に安全に使用できると考えられているが、胎児への影響に関する情報が不足しているため、妊娠中の女性には禁忌とされている。
「我々の研究では、ウイルス感染後の慢性疲労症候群と線維筋痛症は、治療可能であることが分かった」と同氏は述べた。「問題は、高価な薬が必要ないため、情報を得るために誰も医師にお金を払わないことだ」と同氏は付け加えた。
息切れ
最大で12%の人がCOVID感染後に息切れ(呼吸困難)を経験している。
「息切れはCOVID感染後では非常に一般的だが、通常は危険ではない」「ほとんどの場合、単に怖く感じるだけだ」とテイテルバウム氏はいう。
ハーバード・ヘルス誌の記事では、COVID後の回復を促す多くのサプリメントがあるという強力で科学的な証拠が見つかった。
栄養素として、彼のウェブサイトで推奨されているのは、マグネシウムを含む高用量のB-コンプレックス、D-リボース、コエンザイムQ10、その他のハーブなどがある。
COVIDに起因する肺やその他の炎症は、クルクミン、ボスウェリア(乳香)、グルタチオンで改善されることがある。
「これらのサプリメントはどれも比較的安価だ」とテイテルバウム氏は繰り返し述べ「それゆえ、医師はそれらを紹介しないのだ」と付け加えた。
しかし、これらの治療法の中には、人によっては効果がよくないことがある。ボスウェリアや高用量のクルクミンを使用すると、胃に不快感を感じることがある。また、グルタチオンの長期的な使用は、亜鉛のレベルの低下を引き起こす可能性がある。
ブレイン・フォグ(脳の霧)
COVID感染後の患者の約3分の1は、記憶や実行機能に深刻な障害をもたらす「ブレイン・フォグ(頭がボーっとする症状)」と呼ばれる認知障害を経験する。しかし、この症状に対してFDAが承認した治療法は現在ないという。
11月、イェール大学医学部の研究チームがコロナ後遺症に悩む患者12人を対象にグアンファシンと抗酸化物質のN-アセチルシステイン(NAC)を就寝時に投与した。その結果、12人の患者のうち8人の認知障害(ブレイン・フォグ)を軽減したという事例研究を発表した。研究者らは、この2つの物質は、脳と脊髄の炎症を抑える可能性があると述べた。
また、彼らによると、1人の患者は、低血圧のために一時的にグアンファシンを中止したが、その後ブレイン・フォグが再発したという。グアファシン治療の再開で、症状は改善された。
「ある患者の認知能力がグアンファシン治療を中止すると悪化し、グアンファシンの再開で改善したという所見は、この化合物の治療的役割を裏付けるものである」と、著者らは書いている。
「これらの薬剤は、手頃な価格で、広く入手可能だ」と、イェール大学医学部の行動神経学・神経精神医学のアルマン・フェシャラキ・ザデー医学博士が述べた。「研究試験に参加するのを待つ必要はない。主治医に尋ねればいいのだ」と同氏は付け加えた。
彼らはまた、ブレイン・フォグの治療に対するこれらの薬の効果を理解するために、プラセボ対照試験が必要だと強調した。
これらの医師が推奨する低コストの治療法の研究は、コロナ後遺症に悩んでいる人たちに希望を与えるものだ。ただし新しい治療法を試す前に、服用している薬との併用禁忌の可能性について、主治医に相談することをお勧めする。
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