湖南省の女子大学生、葉婷さんとその家族を巡る事件が中国のネットで注目を集めている。
発端は葉婷さんが発表した5日の短編動画だ。この日の動画に登場したのは彼女の妹・葉氷艶さんで、目に涙を浮かべながら、昨年父親が地元・河南省開封市で発生した集団暴行で殺されたと訴えた。警察は取り合わず今も犯人逮捕に至っていないという。
「食堂にいた父親は殴られ、路上に引っ張り出されて殴られ続けた」「犯人らはヤクザ。自分と母親は1年以上も住まいを転々としている。家に帰ることもできない」などと家族の窮状を語った。些細なことで3人組の男と口論になり暴力を振るわれたという。
母親と称するユーザーの説明によれば、この動画投稿の後、インフルエンサーの葉婷さんは何者に連れ去られて行方不明になった。のちに、地元の杞県公安局が葉婷さんを「調査している」と発表。2日間の拘束ののち、8日に釈放された。家族は、葉婷さんは拷問で精神に異常をきたしたと訴えている。
葉婷さんの動画投稿と失踪をめぐり、「葉婷」のキーワードが中国SNSウェイボー(微博)でトレンド入りした。関連動画の再生回数は1億回以上に達した。しかし、まもなく当局が検閲したとみられ動画は削除された。
動画の影響によって葉家事件の真相解明を問う世論の声が高まった。地元政府当局は8日、「事件を重視し、調査している」と回答した。当局の対応に疑問を抱くネットユーザーから反発が起こり、批判的な書き込みが相次いだ。
「事件発生から1年以上経っているにもかかわらず、今だに犯人には法的制裁が下っていない」「賄賂があったのでは」「犠牲者の娘がネットで訴えなければ事件は重視されないのか」など、民衆の怒りを呼び起こした。
米国在住の時事評論家である秦鵬氏は自身の評論番組の中で、「『徐州の鎖の母』事件でも深刻な官民癒着の闇が浮き彫りになったが、中国の司法制度は腐りきっている。このような事件は氷山の一角だろう」と述べた。
『徐州の鎖の母』事件とは、北京冬季五輪開催期に注目された人身取引事件。江蘇省徐州市豊県で、ジャーナリストが偶然発見した30代の女性は、首を鎖で繋がれ、粗末な小屋に閉じ込められていた。女性は子供を8人産んだとされ、誘拐や人身売買、性的虐待の疑いがある。
「このような悲しい事件が今後も絶えないかもしれない。だが、新疆ウルムチで起きたビル火災をきっかけに、『白紙革命』が起きたように、このような事件はいつか国民の怒りに火をつける火種になるという直感がする」と秦鵬氏は話した。
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