中国政府の厳しい「ゼロコロナ政策」に対する抗議活動が全土に拡大する中、現場では若者の姿が目立った。若い世代が表立って政治的な動きに出たのは、1989年の天安門事件以来となる。
つい数か月前まで怠惰な日々を送る「寝そべり主義」といった社会現象を起こした若者たちは、中国のネット検閲をかいくぐるVPN(仮想プライベートネットワーク)やテレグラムなどを使い、デモ情報を拡散した。彼らは中国当局の理不尽な言論統制に対する反抗を意味する「白い紙」を掲げた。このことから「白紙革命」と呼ばれる。
若年失業率が過去最高の19.9%という過酷な環境に置かれ、将来像を描きにくくなっていることがその反抗要因だと分析する人は多い。
先週末から本格化した抗議活動は、北京、上海、武漢、広州など少なくとも十数の大都市や90以上の大学で展開された。中国最高学府の1つで習主席の母校でもある北京の清華大学でも先月27日に「反ゼロコロナ」を訴え、自由を求める学生集会が開かれた。
「中国のZ世代は突然、『寝そべり』から起き上がり、抗議に加わった。若者が将来の展望を描けるよう政府が有意義な措置を講じなければ、彼らはますます反抗するだろう」とブルームバーグのコラムニスト、アダム・ミンター氏は先月28日付の記事で指摘する。
Z世代(1995〜2009年生まれ)は中国史上最高の教育レベルを持つ世代だ。しかし、その大学生活のほとんどはコロナ禍の中で過ごした。厳格な感染措置の中で、数週間ひいては数か月も寮の中に閉じ込められることもある。中国経済の減速や過去最高の若年失業率に直面した彼らの多くは、先の人生が見えず、努力が報われないと挫折感を感じている。そのような不安や不満が新疆ウルムチのマンション火災をきっかけに爆発した。
消えぬ火
中国の教育省は先月27日、各地の大学トップらを対象とした緊急会議を開き、学内の外出禁止の緩和と学生間の連絡や往来の防止を指示した。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
また、抗議デモのあった大学では冬休み開始を繰り上げて学生を実家に帰省させるなどして、政府は活動抑制に躍起になっている。
学生を帰省させたり、行動制限の一部緩和などを講じてガス抜きすることで抗議活動は一時落ち着くかもしれない。しかし、景気後退による就職難といった根本的な問題は解決されていないため、不満はくすぶっている。
当局は武装警察を出動させて抗議デモの鎮圧を図っており、上海や武漢、北京では複数人が逮捕されたという。法的支援を行う有志の弁護士はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して「中国憲法は言論の自由を保障しており、民衆が白紙の紙を掲げて街頭で抗議しても犯罪にはならない」と述べた。
中国各地の白紙革命の広がりを受け、台湾の立法院(国会)前で先月30日、台湾や中国の学生運動や香港民主デモの経験者らが支援を表明する記者会見を開いた。参加者は中国政府に対し、学生運動を武力で鎮圧した1989年の天安門事件のような悲劇を繰り返してはならないと訴えた。
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