新型コロナ治療薬使用禁止は「ただの勧告だった」= 米国食品医薬品局

2022/11/26
更新: 2022/11/27

新型コロナ治療薬にイベルメクチンの服用を「やめる」よう指示した米国食品医薬品局(FDA)の行為は「医療行為を行う能力を違法に妨害」するものだとして、3人の米医師がテキサス州の連邦地裁に申し立てた問題で1日、FDA側は「単なる勧告に過ぎない」と主張した。

ポール・マリク医師などは6月、寄生虫病薬「イベルメクチン」の新型コロナウイルス治療薬としての有効性が複数の研究で示されているにもかかわらず、FDAが文書やツイッターなどを通して使用を停止するよう呼びかけていたことは「その権限を逸脱」する行為だと提訴していた。

FDAの代理人を務めるアイザック・ベルファー氏はこれに対し「引用された文章は指示でも強制でもない。推奨であった」と反論した。「新型コロナウイルスを治療するためにイベルメクチンを服用してはならない理由を述べたが、禁止・違法であるとか、医師がイベルメクチンを処方してはいけないとは言っていない」と強調した。

FDAは、イベルメクチンを抗寄生虫薬として承認しているが、新型コロナの治療としては承認していない。米国では他の薬が有効でない場合などに、「適応外使用」として承認されていない医薬品を使用することがある。

FDAは2021年に「新型コロナウイルスの治療・予防のためにイベルメクチンを使用してはならない理由(Why You Should Not Use Ivermectin to Treat or Prevent COVID-19)」と題するウェブページを作成。また、イベルメクチンが馬など家畜用の駆虫薬として用いられていることから、ツイッターで「あなたは馬じゃない、牛でもない。真面目な話だ、使うな」と投稿した。

さらに、ホームページの「よくある質問」ページでは、「新型コロナウイルスの予防や治療のためにイベルメクチンを服用すべきか?」との質問に対し「いいえ」と回答するなど、同薬を使用しないよう呼びかけている。

訴状では、こうした行為は、医師の医療行為を妨害し、連邦食品・医薬品・化粧品法などの法律に違反するものだと主張。原告側の代理人であるジャレッド・ケルソン弁護士は、FDAのこうした発言などはイベルメクチンを新型コロナ患者に使用することは「容認できないことを明確に伝えている」と強調した。

2022年10月14日、ポール・マリック博士 (The Epoch Times)

 

予測可能な反応

また、ベルファー氏は「(イベルメクチンを使用できなかったことで引き起こされた)各種の障害が独立した第三者の行為によって引き起こされたものであり、FDAの声明に対する予測可能な反応ではない」と主張。原告には原告適格がないとして、訴えの却下を申し立てた。

これに加え、FDAの声明などは「一般市民やFDAを拘束するものではなく、実質的な規則を規定するものでもなく、当局の方針を定めるものでもない」「消費者に対して拘束力のない勧告を行うものに過ぎない」と改めて強調した。新しいデータが利用可能となった場合、FDAの立場は将来的に変わる可能性があるとしている。

こうした主張に対し、ケルソン弁護士は「政府がイベルメクチンを馬用駆虫薬と表示し、動物にしか使えないという考えを広めようとするならば、それを処方する医師はヤブ医者ということになる」と反論。「裁判に持ち込むには十分な理由」とし、却下の申し立てを非難した。

さらに、政府の絶大な影響力にも言及した。「FDAがイベルメクチンの使用を『止めろ』と発言したことで、その通りになった。こうした事実のもと(イベルメクチン使用停止が)FDAに結びつかないとは言えない」とした。

前出のマリク医師はイースタン・バージニア・メディカル・スクールの肺・重症患者医療部長とサンタナ・ノーフォーク総合病院の集中治療室長を務め、新型コロナウイルス治療プロトコルにイベルメクチンを組み入れていた。しかしFDAの声明後、学校側はプロトコルを削除するよう命じたほか、病院はイベルメクチンを使用しないよう、FDAを引用した覚え書きを発表した。

後に、マリク医師はFDAの声明によりイベルメクチンを処方できなくなったため、職を辞することを余儀なくされている。

11月19日の時点では、まだ判決は出されていない。

メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。