日本の防衛費増額の必要性を裏付ける報告書

2022/10/26
更新: 2022/10/25

日本の防衛態勢に関する2022年報告書は、ロシアによるウクライナへの一方的な侵略に対する非難と、中国と北朝鮮による攻撃的な行動も含め、それがインド太平洋にもたらす影響に焦点を当てている。 同報告書は、このような行動が日本の安全保障と国際秩序を脅かすと結論づけている。

そうした評価とその提案された行動方針は、戦争を嫌う平和主義国家としての数十年にわたる日本の立場に反するものといえる。 アナリストによればそれが目的の一部で、政府は安全保障上の懸念を表明することで、防衛費の大幅増に対する支援を確立しようとしている。

2022年7月下旬に公開された日本の年次防衛白書で、岸信夫元防衛相は「国際社会は今、戦後最大の試練の時を迎えている」と書いている。 ジャパンタイムズ紙によると、2022年8月に岸氏に代わって防衛大臣に就任した浜田靖一氏はその警告に同調し、世界が「新たな危機の時代」に直面していると宣言した。 浜田防衛相は、中国、ロシア、北朝鮮からの脅威の中で、日本は安全保障アプローチを再考しなければならないと述べた。

スウェーデンに拠点を置く非営利シンクタンク、安全保障開発政策研究所(ISDP)によると、日本の防衛力、同盟、課題は、「経済協力と安全保障政策との間の均衡が後者に傾き」、次第にタカ派的なアプローチになっている。 前述の白書では、認められた基準を維持し、自由で開かれたインド太平洋を確保するために世界的な対応が求められている。 

同白書では、ロシアによる侵略行為は他地域での不法行為につながる可能性のある先例を確立したと主張している。 「2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略は武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、 このような力による一方的な現状変更の影響が、インド太平洋地域にも及ぶことが懸念される」と記載している。

中国は、日本領土の尖閣諸島を含む東シナ海と南シナ海に広範な領有権を主張しているため、この地域の緊張が高まっている。 また、中国政府は台湾を自国領土であると主張し、台湾を支配下に置くために武力行使も辞さない構えを見せ始めている。

中国は「近年、侵略国であるロシアとの連携を深化させており、わが国周辺で両国の艦艇や航空機による共同航行・飛行も行っている。 さらに、台湾をめぐっては、その統一に武力行使も辞さない構えを見せており、地域の緊張が高まりつつある」と岸氏は述べている。

アナリストによれば、日本は今回初めて、防衛白書で台湾との連帯を表明した。 「全体的な傾向は、台湾に対する日本の外交政策の軌道の変化を明確に示している」とISDPは報告している。

台湾は「日本にとって、自由や民主主義といった基本的価値を共有する極めて重要なパートナーである」と防衛白書では指摘している。 台湾国民によって民主的に選出された政府の安定は「日本の安全保障にとって重要であり、危機感を持って関連動向を注視する必要がある」

この防衛白書は、ナンシー・ペロシ( Nancy Pelosi )下院議長を含む米議員団が台湾を訪問する数日前に発表された。 中国共産党は米議員団の台湾訪問に反発して人民解放軍が台湾海峡とその周辺で軍事演習を実施、日本から160キロメートル未満の海域に5発の弾道ミサイルを発射した。

ロイター通信が報じたところによると、中国外務省の王文彬報道官は、日本の防衛白書が「いわゆる中国の脅威を誇張し」、中国の内政に干渉していると批判した。

一方、北朝鮮は2022年に40発以上の弾道ミサイルを実験発射しており、10月初旬には日本上空を通過したものもあり、核弾頭発射の脅威が生じている。 北朝鮮はロシアによるウクライナ侵略も支持している。

こうした脅威に対抗するため、日本は防衛費を費やし、「力による現状変更を未然に抑止するとともに、ウクライナ侵略でも見られたような情報戦やサイバー戦といった現代的な戦いへの備えも万全とすべく」新たな戦略を立てるべきであると防衛白書は述べている。

2022年7月下旬に防衛ニュースのウェブサイトは、日本は「宇宙・サイバー空間・電磁スペクトルなど新たなドメインにおける能力を統合する、総合的なマルチドメイン軍としても自衛隊を確立していく」と発表した。

志を同じくする国々との同盟関係も、もう一つの抑止力となる。 防衛白書は日米間には揺るぎない絆があるとしている。 一方、オーストラリア、インド、日本、米国の4か国間安全保障対話は、多国間安全保障に焦点を当てたパートナーシップであり、日本は他の地域内パートナーやヨーロッパ諸国とも強い関係がある。

こうした安全保障関係を日本は強化すべきだと、観測筋は述べている。 たとえば、フィリピンは日本と防衛上の多くの課題を共有している。 2022年7月の戦略国際問題研究所( CSIS )の記事で、航空自衛隊二等空佐のトノサキ・コウジロウ氏は「10年以上の歳月をかけた日本とフィリピン間の安全保障協力の強化が地域の抑止力を強化し、今後のインド太平洋の発展と繁栄に貢献することは間違いない」と述べた。

日本の防衛白書は、ロシアのウクライナ侵攻と露・中間の友好関係を繰り返し「ゲーム・チェンジャー」として警告している。 「岸田文雄首相が『ウクライナは明日の東アジアかもしれない』と繰り返し警告するなど、軍事大国の中国と、自治国台湾に対する中国の計画を警戒する日本は数千キロ離れた地域で現在進行中の紛争に注目している」とジャパンタイムズ紙は報じている。

Indo-Pacific Defence Forum
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