米中間選挙が11月8日に実施され、下院の全435議席と上院35議席が改選される。これまで中間選挙は一般市民が関心を持つ経済や雇用など現地の課題に集中していた。しかし、昨今の米中関係の悪化や中国共産党政権による好戦的な姿勢により、「中国」が今年の選挙のキーワードになっている。
「これ以上中国に弱腰ではいけない。私たちを憎む人々に米国の雇用機会が奪われるのをやめなければならない」と、トランプ元大統領の支持を得た共和党候補J.Dバンス氏は選挙演説で述べた。同氏はオハイオ州選出の連邦上院議員の座を争う。
いっぽう、バンス氏のライバルである民主党候補ティム・ライアン氏も対中強硬姿勢を示す。「中国は米国の製造業の仕事を盗んだ。今度は私たちが反撃する時だ」と訴えた。両候補とも、中国製品に関税を課す第301条の継続を支持している。
ペンシルベニア州では、共和党の連邦上院議員候補のメフメット・オズ氏は「対中強硬(get tough on China)」を選挙スローガンに掲げ自らの選挙サイトに掲げた。胸部外科医であるオズ氏は健康番組「ドクターオズ・ショー」司会を務め、米国で知名度が高い。
他州でもこのような構図がみられる。ミズーリ州の共和党の連邦上院議員候補で、同州司法長官のエリック・シュミット氏は対抗馬と中国との投資関係を指摘した。アリゾナ州では共和党の挑戦者ブレイク・マスターズ氏が、米国の中国人留学生が国家安全保障に脅威を与えていると公言した。迎える民主党の連邦上院議員マーク・ケリー氏は、中国製産業に対抗するために成立したチップ法案を牽引したひとり。
「中国はこの中間選挙で重要なテーマになっている」とニュージャージー州のラマポ・カレッジ政治学助教授の陳鼎氏は、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に答えた。「選挙状況が思わしくない時、候補者は有権者の注意を引くために、際立つ問題を掲げなければならない。外部の敵対勢力の存在を訴え人を団結させれば、候補者に有利に傾く」とした。
「中国は米国の安全脅威として定義されており、競争相手でもある。このような言い回しはますます増えており、両党とも採用している」とジョージ・ワシントン大学戦略計画主任で元CNNワシントンニュースセンター主任のフランク・セスノ氏はVOAに語った。
米中貿易委員会の統計によると、連邦議会における過去5年間は中国関係法案はますます増加している。
2017年までは中国関係の法案は約200から250本を推移していた。同年以降急上昇し、昨年は約639本、そして今議会では700本を超えた。
バイデン政権は最近、CHIPSおよび科学法や国家重要能力防衛法案、ウイグル強制労働防止法などいくつかの中国に関する重要な法案を可決した。CHIPS法は中国が政府補助金を受けて半導体を支えているのに対抗し、米国内の半導体と研究開発に資金を充てる。防衛法案は米企業の中国科学技術企業への投資を制限する。ウイグル法は、強制労働を理由に中国新疆ウイグル自治区からの輸入を全面的に禁止する。これらは、両党の議員から多数の支持を得て可決した。
「両党は中国に対する態度で、めずらしく意見が一致している」と、カリフォルニア大学バークレー校の政治学教授ダン・シュヌール氏は述べた。対中強硬で一致する両党は「選挙の年で両党間の意見の相違を棚上げするまでに至っている」という。
シュヌール氏によれば、対中強硬姿勢への期待は中西部で顕著だという。「中西部は伝統的に製造業の拠点だったが、ここ数十年間で多くの雇用が他国に流失した。ブルーカラー層有権者はグローバル化が有利だと思っていない。両党の候補者もこの感情を利用しようとする」と述べた。
世論調査大手ピューリサーチ・センターによると、中国に対して否定的な考えを持つ米国人の割合は82%と、過去最高となった。調査では、中国の人権侵害について米国人は嫌悪しているという。
専門家たちは、共和党が下院で多数派になるならば、対中強硬の傾向はますます強まると予想する。米国の世論調査サイト、538(ファイブサーティエイト)によると、共和党が下院を再び奪還できる確率は約70%となっている。
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