メタバース技術とその応用はまだ初期段階にあるが、中国はすでに国家安全保障への影響、戦争への応用について研究を始め、関連産業への投資が昨年末から急増した。
米空軍大学の中国航空宇宙研究所(CASI)のアナリスト、ジョシュ・バウマン氏によると、2021年11月以降、中国軍の機関紙「解放軍報」はメタバースに関する記事を3本以上掲載した。
これらの記事から、中国軍がすでにメタバースのセキュリティの脆弱性を狙った攻撃法を研究し、メタバースを利用した仮想戦闘訓練や演習を目指していることが読み取れる。
21年後半から、中国のハイテク業界でメタバースは関心の高いテーマに上った。軍事利用だけでなく、インフラ領域での応用も見込まれている。
米国土安全保障省(DHS)傘下のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁(CISA)は、メタバースを重要インフラ分野の1つに挙げた。
バウマン氏は米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、「次世代仮想空間・インターネットともいえる未来のメタバースは、国家安全保障、経済、保健、セキュリティ、商業、政府、学術界、市民にとって重要である」と述べた。
現在、中国企業はVR(バーチャルリアリティ、仮想現実)のコア技術がまだ米国に遅れており、VRの新興企業を買収することで劣勢を挽回しようとしている。
ロイター通信によると、昨年1年間で1000社以上の中国企業が約1万件のメタバース関連商標を出願し、同9~11月にかけてメタバース関連産業への投資が100億元(約1930億円)を超え、2020年通年の投資総額21億元(約405億円)を大きく上回った。
バウマン氏は、中国がメタバース分野で優位に立とうとしていると指摘した。
「メタ(超)」と「ユニバース(宇宙)」を合わせた造語であるメタバース(Metaverse)とは、分身キャラクターである「アバター」を介して仮想空間の中に入り、他者とコミュニケーションしたりする技術。
遠隔地での医療行為や、身体的な制約を持つ人が仮想空間で物理的な制約のない活動ができるなど、さまざまな応用が期待されている。
叶子静
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