上海封鎖を記録する動画「四月之声」 当局の削除に市民がリレー投稿で対抗 

2022/04/26
更新: 2022/04/26

中国インターネット上では22日、都市封鎖中の上海市民の悲鳴を記録した動画「四月之声」が話題となり、ネットユーザーによって各SNSサイトで転載された。ネット検閲当局は「四月之声」と「四月」を検索禁止ワードに指定し、動画と関連の書き込みを相次いで削除した。ネットユーザーらは対抗して動画の転載リレーを展開し、ネット上で拡散した。

約6分間に及ぶ同動画は、上海市民が政府職員らに陳情した電話音声や動画内容を収録した。内容には、乳幼児と親が別々に隔離されたこと、飼い主の隔離中にペットが撲殺されたこと、病を抱える市民が医療サービスを受けられないこと、臨時医療施設の劣悪な環境などが含まれた。

動画の作成者「Cary」は、3月15日と26日の記者会見での上海市政府の発言内容を動画の冒頭に置いた。高官は、中国経済の中で上海市は重要な役割を担うため、都市封鎖を実施しないと話した。

「Cary」は動画の中に自身の考えや不満を加えていない。動画には、空から撮った上海市の風景が白黒で映し出され、白文字のテロップが入っている。

動画の最後は、感染は収まりつつあるとの市政府の主張を引用し、上海市民に「一日も早く健康になりますように」と願った。

動画は「Cary」が22日に自身の微信アカウントに投稿した後、瞬く間に話題となり、その後、微博(ウェイボー)でも大きく注目された。まもなくネット検閲当局が動き出し、各SNS上に転載された同動画を削除し、関連動画の書き込みも制限した。微博では「四月之声」は検閲対象のワードとなり、「四月」だけで検索しても、政府公式アカウントや政府系メディアなどの投稿しか表示されない。

多くのネットユーザーは、動画の内容について「故意に煽ったり、政府を批判したりしていない」「過激な内容はない」などと評価し、「(封鎖中の出来事を)悲しむ権利も記憶する権利も奪われた」と憤った。

ネットユーザーらは各SNS上で、当局に対抗して同動画の転載リレーを始めた。動画が削除されるたびに、もう一度掲載することを繰り返していた。また、微博ユーザーらは「#上海静黙#」というトピックを作り、当局の言論統制に不満をぶつけた。このトピックも現在、封殺された。

官製メディア「環球時報」の前編集長、胡錫進氏は23日、微博上で「四月之声」に対する当局の言論統制について弁解した。

「ネット管理者が書き込みを削除したのは、各地の政府が意見を重視していないというわけではない。逆に、中国のネット上で意見を述べることは、西側諸国のネット上で文句を言うよりもずっと効果がある」

「政府は書き込みを削除しながら、投稿の内容と人々の心情に着目し、改善の努力をするのが中国の実情だ。しかし、欧米では、人々は不満をいくらでも言えるが、基本的に誰も聞いてくれないし、言っても無駄だということが多い」

微博のユーザーは胡氏の言い分に対し、「でたらめを言っている」「削除する側を正当化している」などとバッシングした。

一方、ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』の1曲、民衆の歌(Do You Hear the People sing ?)も同時に中国ネット上で検閲された。2019年の香港民主化運動で、学生らは暴政に立ち向かおうと呼びかけるこの歌を歌っていた。
 

張哲
張哲
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