英国の非政府組織(NGO)、環境正義財団(EJF)の最新調査レポートは、違法漁業を繰り返す中国漁船が、西アフリカの漁業資源を枯渇させていると報告した。
4月初旬に発表された同レポートによると、ガーナの大型トロール船の約90%は中国企業の所有だが、合弁会社、ペーパーカンパニーなどの手法でガーナ人名義の会社として登録し、違法・無報告・無規制の操業を繰り返している。
EJFによると、中国の遠洋漁船団は年間、西アフリカ海域で200万トン以上の魚を獲り、中国の遠洋漁業全体の約50%を占め、商品価値は約50億米ドル(約6250億円)を超える。
同海域では、乱獲により良質な魚類資源が枯渇している。
EJFは、中国遠洋漁船団はガーナ、シエラレオネ、ガンビア、セネガル、ギニアビサウといった国々の漁業収益を横取りしていると批判した。
現地の従業員に対する人権侵害が問題視されている。EJFの取材を受けた10人のガーナ人全員が「中国人船長による暴行を経験または目撃したことがある」と証言した。
中国の遠洋漁船保有数は3000~6000隻と推定され世界最大規模であり、近場のアジアから、遠くアフリカや南米に操業範囲を広げている。その多くが違法な漁業活動に従事しているともいわれる。
背景には、水産物の巨大な需要、国による手厚い補助金制度など、いくつかの要因がある。
世界の海洋保護を調べる非営利団体Oceanaの上級顧問、周維徳(フィリップ・チョウ)氏によると、中国政府の漁業向け補助金は世界で最も高く、年間で72億米ドル(約9000億円)にも上る。
西・中央アフリカの人権・法律専門家のアグネス・エボオ氏は、中国はアフリカの主要な投資国であり、地域に対して大きな影響力を持っているため、中国の沖合漁業に悩む多くの政府は、公に非難することを躊躇していると指摘した。
EJFの報告書は、「海辺の村の波止場には、色鮮やかな細長い木造の漁船が次々と帰還し、毎日獲れた魚を運び込んでくる。 このガーナの伝統的な生活様式は、次第に中国の脅威にさらされつつある」と締めくくった。
(翻訳編集・叶子静)
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