ウクライナ戦争が長引くなか、国際社会では、中国がロシアへの影響力を発揮し、あるいは「中立」を保つよう期待が広がっている。専門家の間では、中国政府は米国と大国競争を繰り広げるため、「中立」を保つことも、ロシアを見捨てることもないという見方を示している。
ロシアがウクライナに侵攻して以来、中国政府は一貫して「中立」を主張している。ここにきて中国の秦剛駐米大使は3月20日、中露の協力に制限は設けていないと従来の主張を繰り返しながら「デットラインはある」と付け加えた。
この変化は、中国は欧米諸国の圧力によりロシアと距離を置こうとしていると憶測を呼んだ。
いっぽう、中国の政治事情に詳しい専門家の間では、ウクライナ侵攻でロシアが劣勢になればなるほど、中国政府は犠牲を払ってでもロシアを支援するという見方が大半を占めている。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)中国部門のジュード・ブランシェット主任は3月24日付のワシントン・ポストへの寄稿で、「中国政府はたとえ経済・外交上の大きなリスクを払ってでも、ロシアの地位を維持させようとする」という観点を示した。 その根拠について、「中国政府にとって、ロシアの敗北は中国の安全保障および米国との大国競争に極めて不利であるからだ」と分析した。
米シンクタンク、スティムソン・センターの東アジア部門の孫韻主任も、中国はロシアを見捨てることはないと考えている。
同氏は、同センターのウェブサイトの記事で「中国にとって、ロシアの存在は切り札であると同時に、米国の関心をヨーロッパに向けさせる手段でもある」と指摘し、「ロシアを突き放して欧米諸国への脅威を緩和させることは、中国にとって不利益だ」と分析した。
孫氏は、習近平指導部が今ロシアとの関係を見直すことになれば、2月上旬に発表した中露共同声明は政策の誤りとして認めることになるとも指摘した。習近平氏が3期目の続投を目指す重要な時期に、そのような過ちは許されないとした。
中露共同声明は「両国の友情に終わりはなく、協力関係に制限はない」と強調した。
中国メディアも中露関係の重要性を強調している。中国共産党機関紙・人民日報傘下の「環球時報」の胡錫進・元編集長は3月20日、自身のSNS微博(ウェイボー)で、「ロシアは中国にとって戦略的に不可欠だ」と述べ、米中対立の場合、中国は米国の制裁を受けても、かわりにロシアからエネルギーや食糧、他の原材料の安定供給を受けられるとした。
「中露両国は相互補完という強みを持っている。両国の連携によって生まれる地政学的優位性は最強だ」「両国が米国によって切り離された場合、現在のロシアにとっても、将来の中国にとっても、米国との競争で極めて不利になるだけだ」などと強調した。
いっぽう、米経済学博士であるジャーナリストのリジー・C・リー氏は「中国も欧米の主要貿易パートナーを失いたくないことから、露骨にロシアを援助することはない」とみている。
(翻訳編集・叶子静)
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