ウクライナ侵攻 窮地に立たされた在外中国人

2022/03/03
更新: 2022/03/03

日米英など多くの国は、ロシアによるウクライナ侵攻の数週間前に、自国民に国外退避を勧告したが、中国政府はそうした呼びかけをしなかった。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)はウクライナに足止めされている中国人の窮地を報じた。

二転三転する在ウクライナ中国大使館の対応は物議を醸した。

同大使館は侵攻初日の2月24日、チャーター機を手配して自国民の出国を幇助するとはじめて表明したが、同日、ウクライナ政府はミサイルなどの砲撃被害を防ぐという理由で、民間航空の領空利用を中止すると発表した。

同大使館は26日午後、公式SNSで范先栄・駐ウクライナ大使の10分間の動画と文書を公開。大使逃亡説はデマだとして、現状で自国民を避難させるのは危険すぎると釈明し、足止めされた人々を落ち着かせようとした。

ロシアのウクライナ侵攻後、同大使館は、車で長距離移動する中国人に、攻撃されないよう目立つ場所に中国国旗を掲げるよう助言したが、26日未明、公式SNSで緊急通知を出し、「国籍などを安易に明かさないように」と一転した。

中国国内SNS上は、ロシアの侵攻を支持しウクライナを貶す書き込みであふれ、ウクライナのメディアが報じたことにより、同国内で嫌中ムードが広まっているためとみられる。

現地投稿の動画や写真では、中国人だとバレないよう防空壕を出る人や、日本人だと偽る留学生、また、国籍などが判別できる物の処分を急ぐ人々の姿があった。

中国政府の過去の公式データによると、留学や仕事関係など含めてウクライナに住む中国人は約6000人。

ニューヨーク・タイムズ紙の最近の報道によると、バイデン政権はロシアの軍事行動の可能性を習近平国家主席におよそ6回伝え、プーチン氏に侵攻を思いとどまらせることを期待した。

米国在住の中国問題専門家・唐靖遠氏は、ウクライナにいる約6000人の中国人を退避させれば、ロシアが軍事行動に踏み切ることを世界に知らせることになるため、「中国共産党当局にとって、中国人はロシアに協力するための道具に過ぎず、その安全を考えていない」と中国の対応を批判した。

(翻訳編集・叶子静)