香港メディア「立場新聞」運営停止 歌手の何韻詩さんら幹部逮捕で 国連などが非難

2021/12/30
更新: 2021/12/30

香港メディア「立場新聞」は29日、運営停止を発表した。現職と前職の幹部など7人が香港警察に逮捕され、事務所は強制捜査を受けた。中国共産党の影響を受ける香港当局の言論弾圧に対し、国際社会は厳しく非難している。

逮捕されたのは鍾律師元編集長や林紹桐編集長代理、元民主派議員の呉靄儀(マーガレット・ン)氏、同社役員で歌手の何韻詩(デニス・ホー)さんなど。鍾氏の妻で「蘋果日報」の副社長だった陳沛敏氏も再逮捕されたという。

歌手の何韻詩(デニス・ホー)さん。資料写真(宋碧龍/大紀元)

「立場新聞」が自社Facebookで運営停止を告知すると、20分以内に7000人以上のユーザーが悲しい感情の絵文字を投稿したほか、「立場新聞」に感謝を伝える投稿も多数見られた。

香港の警察当局は「立場新聞」の資産約6100万香港ドル(約9億円)を凍結した。従業員には即時解雇が言い渡された。

香港警察で国家安全を担当する李桂華警視は同日午後の記者会見で、「立場新聞」は2020年7月から11月にかけて「扇動的な記事」を多数発表し、暴力を扇動した疑いがあると述べた。「外国勢力」との関係や資金源についても捜査するという。

「立場新聞」の運営停止が発表され、職場から出る編集者(宋碧龍/大紀元)

これを受けて国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は声明を発表し、香港政府に対して「情報、表現および結社の自由に対する権利を尊重」するよう呼びかけた。

ロイター通信の報道によると、ドイツ外務省報道官は今回の逮捕について、香港国家安全維持法が施行されてから香港における言論の自由や報道の自由が後退していることを示すものだと非難した。

「立場新聞」は2014年12月に設立された香港のネットメディア。民主主義や人権、法の支配などを擁護する報道スタンスで、中国共産党やその影響を受ける香港当局に批判的な報道を行ってきた。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。