滴滴出行の米上場廃止、専門家「中国企業が米市場から姿消すきっかけに」

2021/12/07
更新: 2021/12/07

中国配車サービス大手の滴滴出行は3日、米ニューヨーク証券取引所(NYSE)からの上場廃止手続きと香港株式市場への上場手続きを始めると発表した。同社は今年6月にNYSEで新規株式公開(IPO)したばかりだ。専門家は、中国企業が米市場から消える引き金になると指摘した。

滴滴出行の声明を受けて、米東部時間3日の米株式市場では、同社の株価は前日比22.18%安と急落し、1株=6.07ドルとなった。同社は6月30日に米上場を果たし、1株=14ドルでIPOした。

台湾経済評論家の黄世聡氏は、中国当局が当初から滴滴出行の米上場に反対し、強い不満を持っていたことを挙げ、「同社はその後、当局の厳しい締めつけを受けていたため、米上場廃止を決めたのは当然のことだ」と大紀元に語った。

中国指導部は、滴滴出行が米市場に上場した直後の7月4日、個人情報の収集などについて法令違反があるとして、同社にアプリ配信や新規ユーザー登録の停止を命じ、調査を始めると発表した。同月7日、当局は独占禁止法に違反したとして、滴滴出行やアリババ集団に巨額の罰金を科した。

時事評論家の王剣氏は、YouTube上における自身の評論チャンネルで、滴滴出行が米上場からわずか5カ月で上場を廃止したことは、米国の個人や機関投資家に巨額な損失を与え、「中国企業の信用を損なった」と批判した。また、滴滴出行やアリババ集団など、中国当局によるIT企業への規制強化は「ウォール街の投資銀行が中国企業の米上場のために行った事前準備を台無しにした」と示した。

いっぽう、黄世聡氏は今後、米株式市場において、中国企業が次々と上場を廃止する可能性が高まったとの見方を示した。

「要因は2つある」と同氏は述べた。1つは、中国指導部は米上場の中国企業に対して、香港市場または上海市場への上場を求めていること。もう1つは、米政府が米上場を目指す中国企業の審査を厳格化していることだ。

「中国企業は、中国当局と米政府の双方から強い圧力を受けている。中国当局は企業に対して、米証券当局の上場会社会計監督委員会(PCAOB)の審査や検査を受けないよう要求している。その一方で、米政府は上場のための審査をさらに厳しくしている」

黄氏は、苦悩する中国企業は当局の報復措置を恐れ「最終的に米市場からの上場廃止を選択せざるを得ないだろう」との見方を示し、「中国企業にとって米上場廃止は避けられず、大きな流れになる」と述べた。

中国ネット規制当局、中国共産党中央サイバーセキュリティ情報化委員会弁公室(以下は網信弁)は滴滴出行のほかに、トラック配車サービス会社の満幇集団と採用情報サイト「看准網」に対しても、サイバーセキュリティ調査を行っている。満幇集団と看准網は6月中旬、それぞれ米市場の上場を果たした。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは10月、情報筋の話として、網信弁は滴滴出行、満幇集団、看准網の上級幹部らとの会談において、3社に対して香港市場への上場を「提案した」と報じた。

米証券取引委員会(SEC)は2日、米上場の外国企業を対象にする新規制を決定した。新規制の下で、SECは中国企業を念頭に、当局による監査を受け入れない企業について、早ければ2024年にも上場廃止にする可能性がある。SECは声明で、米上場の中国企業は必ず中国当局の支配下にあるかなどを情報開示しなければならないと強調した。

黄世聡氏は、中国企業の香港上場に関して「楽観的ではない」と話した。中国共産党政権が統治を強化している香港では、「政治的かつ経済的リスクが拡大しているため、多くの外資企業は撤退している。香港株式市場の市況は、世界各国の株式市場と比較してみると、今年は明らかに低迷している」

(翻訳編集・張哲)