中国共産党政権は、「アメリカの裏庭」であるラテンアメリカとの貿易を通じて、同地域に浸透している。駐米エクアドル大使はこのほど、バイデン米大統領に同地域を中国に渡さないよう呼びかけた。
イボンヌ・バキ駐米エクアドル大使はこのほど、米新興メディア「アクシオス(AXIOS)」のインタビューで、米国のラテンアメリカを重視しない姿勢がこのまま続けば、中国共産党に隙を与えてしまうことになる、と警鐘を鳴らした。
ラテンアメリカは長い間、アメリカの「裏庭」と言われてきた。
経済が低迷するエクアドルでは、ギジェルモ・ラッソ新大統領が米国をはじめとする世界の経済大国と貿易協定を結ぶことを、経済の最優先課題としているという。
バキ大使は、中国政府が2022年3月までにエクアドルと自由貿易協定を結ぶ意向であることを明らかにした。 「米国側は問題の緊迫性を認識していない」と同大使は指摘した。
「我々は(中国に)頼りたくないし、ラッソ大統領もそうだが、そうせざるを得ないかもしれない」
バキ大使によると、中国の習近平国家主席がラッソ大統領と電話で会談し、ロシアのプーチン大統領もラッソ大統領との対話を望んでいる。すでにいくつかの具体的な提案を議論している。
同大使の話では、エクアドルに7月、米国が200万本のワクチンを提供してくれたことに感謝の意を述べたが、中国はその時点ですでに、1300万本のワクチンを寄贈していたという。
中国、貿易を通じてラテンアメリカ諸国に浸透
エクアドルは個別の事例ではない。アクシオスによると、20年前、アメリカは南米の12カ国のうち9カ国の最大貿易相手国だった。 現在、状況が逆転し、9カ国の最大貿易相手国は中国に変わり、コロンビア、エクアドル、パラグアイの3カ国のみ、最大貿易相手国がアメリカである。中国はまもなく、この3カ国も最大のパートナーになる可能性がある。
ウルグアイのルイス・ラカジェ・ボー大統領は、今月初めのテレビ演説で、中国との自由貿易協議を検討していると表明した。保守派で経済重視の姿勢を見せてきた同大統領はかつて、米国との貿易協議を提案したが、米国はほぼ無反応だった。
「この地域の国々にとって、米国が重要な同盟国でなくなったわけではない」 。米国のラテンアメリカ専門シンクタンク「米インターアメリカン・ダイアログ(IAD)」のマーガレット・マイヤーズ氏は、「アメリカがいない地域で、中国が非常に活発に動いている」と述べた。
アクシオスの報道によると、トランプ政権の終期では前向きな動きがあった。米国の国際開発金融会社がエクアドルの石油やインフラに投資する協議に調印した。エクアドルは5Gネットワークからファーウェイを締め出すことを決めた。
バキ大使は、アメリカ政府が態度を示せば、いまの状況は変わると考えている。マイヤーズ氏は「それは地域全体で聞いてきた話である」と同調した。
大国間競争がアメリカ大陸で起きている
バイデン米大統領は、増大する中国政府の影響力を抑止するため、インド太平洋地域を重視している。いっぽう、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のダニエル・ルンデ氏は、バイデン政権が気づいていようといまいと、「大国間の競争がすでにアメリカ大陸にやってきている」と指摘した。
中国・ラテンアメリカの政治・ビジネスの動向を紹介するニューズレター「チャイナ・ノート」の著者であるニコラス・サント氏は、中国がラテンアメリカとの貿易の主導権を握れば、米国をけん制し、台湾の同盟国を引き離し、政治や経済の運営に影響を与え、この地域で軍事拠点を築く可能性さえある、と予測した。
サント氏は、この地域における中国政府の利益は貿易協定の範疇をはるかに超えている、と付け加えた。
「不思議に思うのは、アメリカがこの10年間、この問題にほとんど関心を寄せていない」
バキ大使は、バイデン米大統領の前向きな対応を期待すると示した。
(翻訳編集・叶静)
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