米で出生証明書から消える「性別」欄、物議醸す

2021/08/11
更新: 2021/08/11

医師と医学生の米国最大組織、米国医師会(AMA)は、出生証明書性別表記を廃止するよう求め、物議を醸している。

この案は、6月にAMAの評議員会で採択されたもので、公的書類である出生証明書に出生児の性別を記録することは、「差別の可能性」があるとしている。

文書には「米国医師会は、出生証明書の性別記載廃止の合法化を求める」と記されており、出生時の性別情報はこれまで通り当局に提出され、医療、公衆衛生、統計の目的でのみ使用されると付け加えた。さらに、性別を記載することは、自身の性自認や自己表現が出生時に割り当てた性別と異なる人にとって、「混乱、差別、嫌がらせ、暴力を招く可能性がある」としている。

AMAのLGBTQ諮問委員会は、「性別を2択にして、出生証明書に記載することは、性別が不変であるという見解を永続させ、性自認における医学分野を認識していないことになる」と指摘した。また性別を区別するシステムを押し付けることは、「自己表現やアイデンティティを抑圧するリスクがあり、社会的排除やマイノリティ化を助長する」と述べた。

この提言は、医療ニュースサイトWebMDで取り上げられ、ソーシャルメディアで反発を招いた。批評家は、生物学を軽視していることへの不満と、進歩主義によって科学が蔑ろにされていることへの懸念を表明した。

テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)の国家安全保障顧問オムリ・セレン氏は、「過激で進歩的な幻想主義に代わって、科学がほぼ全面的に政治化された。実に速いペースだ」と述べた。

ニューヨーク・ポストの編集者ソハーブ・アマリ氏は「これだけでは不十分だ。AMAは、社会的に構築された染色体の迷信を暴くことに専念する研究部門を創設すべきだ。それをルイセンコ部門と呼ぶがいい」と皮肉った。トロフィム・ルイセンコは、自身のマルクス・レーニン主義のイデオロギーに基づく疑似科学に反対する人々を、政治や世論を利用して、抑圧したソ連の生物学者だ。

米国務省は6月30日、LGBTなど性的マイノリティーの人たちの権利に配慮し、国民がパスポートを申請する際に医療証明書を提出せずに性別を選択できるようにすると発表した。AMAの提言はこれに続く形だ。今後、米国のパスポートの性別欄で「第3の性」を選択することができるようになる。
 

(翻訳編集・蓮夏)

関連特集: 米国