現代の奴隷で作られる中国「一帯一路」=労働NGO報告

2021/06/14
更新: 2021/06/14

中国の労働環境改善に取り組む労働NGO「チャイナ・レイバー・ウォッチ(CLW、China Labor Watch)」は、世界各地で大型インフラプロジェクトを計画する「一帯一路」には強制労働が関わっていると指摘する報告を発表した。同NGO代表のリー・チェン氏は、中国共産党は「政治的な利益を得るため、労働者を利用している」と非難した。

中国共産党の広域経済圏構想「一帯一路」は、巨額融資や大型インフラを関係国に行うため、中国の重要な外交政策のひとつとされる。海外の建設計画には、中国本土から多くの労働者が派遣される。チャイナ・レイバー・ウォッチ(CLW)はこのほど、インドネシアやアルジェリア、シンガポール、ヨルダン、パキスタン、セルビアの約100人の中国人の一帯一路関係の労働者に話を聞いた。彼らは逃げ道を奪われ、過酷な労働を強いられていることが明らかになった。

中国の労働者は「国内の家族を養うために、高収入の仕事を従事した。しかし、仕事の現地に着くと、中国の雇用主にパスポートを没収された。早めに帰国したければ契約違反の違約金を払えと言われた。その違約金は多くの場合、彼らの月給の何倍分に相当する」という。

チャイナ・レイバー・ウォッチ(CLW)は、国際労働機関(ILO)が定められた強制労働の定義のほとんどが、彼らがインタビューした中国の労働者に当てはまることを確認した。

報告書によると、ほとんどの労働者は、雇用主が一定の賃金と合法的な就労ビザによって採用された。しかし、労働者たちのパスポートは飛行機から降りた直後に没収され、中国の雇用主に多額の罰金を払わない限り、その場を離れることができない。パスポートもなく、合法的な労働許可証を得られないため、不法労働者となる。

労働者たちは警備員が見張っている作業場で、劣悪な生活環境と労働環境の中に閉じ込められている。外出することは警備員の許可を必要とする。また、1日12時間、週7日という過酷な労働時間に加え、休日も手当もなく、労働者の保護や安全設備も十分ではない。多くの労働者が仕事中にケガをしても治療を受けることができず、後遺症が残ることもあった。

インドネシアにある中国系鉱山会社の労働者は、2020年11月に中共ウィルス陽性と診断された後、20日以上も誰もいない寮の部屋に隔離され、治療を受けることもなかった。その後、他の労働者が彼の死体を発見した。

海外にある中国企業が管理する鉄鋼や鉱山関係の現場では、不服従、ストライキ未遂などを理由に、労働者が会社の警備員に拘束されたり、殴られたりすることが頻繁にあることがわかった。インドネシアにいる中国系鉄鋼労働者のWeChatグループでは、ある労働者が何度も叱責され、平手打ちされ、制服が鼻血だらけになった動画が投稿された。

一帯一路プロジェクトの一部では、強制労働を強いられている中国人労働者をコントロールするために、脅迫がよく行われている。最もよく使われる脅迫の方法には、国外追放、帰国後の報復、高額な罰金や罰則などがある。また、労働者に雇用主を訴える権利の放棄に署名させたり、労働者の携帯電話に入っている労働権侵害の証拠を削除させたりすることもあった。

報告書によると、「ヨルダンに行った労働者は砂漠で5か月ぐらい働いていた。最初の6日しか給料がもらっていない。アルジェリアで、業務委託会社の設置プロジェクトが2019年に、メンテンナンスのために2人の労働者が取り残された。雇用主から6か月分の給料で脅し、その要求を拒否することができなかった」という。

さらに、労働者が苦情を申し立てる組織さえなかった。現地の中国大使館も救済の手を差し伸べることはないという。

「何人かの労働者は、パスポートが雇用会社によって没収されたことを通報するために中国大使館に電話をかけた。大使館から、介入する権限がなく、労働者は地元の警察署に報告すべきだと言われた。これらの労働者は、職場のドアから出ることさえできず、言語の問題もあるため、地元警察への通報もためらう。合法的な就労資格を持っていないし、罰金が課される恐れもある」。

中国には、強制労働が2つの異なる形態で存在する。1つの形態は、上記の一帯一路プロジェクトの労働者によって例示されているようなもので、もう一つは国家によって直接認可されていない現代の奴隷制だ。

2018年のGlobal Slavery Index(世界奴隷指標)は「2016年、中国では現代の奴隷の状態で生活している人が380万人を超え、国内の千人あたり2.8人いる。この推定値には、臓器売買の数値は含まれていない」と発表した。

他の形態の強制労働は、中国の刑事制度の下で体系的かつ合法だ。中国共産党は、1950年代以来、「再教育」を理由に強制労働と労働収容所を利用してきた。2013年に、中国共産党は労働収容を廃止すると発表したが、数年後にウイグル人を「再教育」するために再び復活させた。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の報告によれば、中国政府は新疆で約400収容所を建設している。ASPIの研究者であるネイサン・ルーザー氏(Nathan Ruser)によれば、「推定では、新疆ウイグル自治区にいるウイグル人と他のイスラム教徒の約10%がこれらの収容所に恣意的に拘留されている」という。

ASPIの報告によれば、「新疆ウイグル自治区の継続的な拘禁キャンプは、同意のいらない労働であり、中国の生産ネットワークを支えている。この仕組みは、数百の多国籍企業のサプライチェーンを汚染している」という。

近年、ウイグル人の強制労働が国際的に注目されているが、中国が大規模かつ組織的にチベット人にも強制労働を課していることは、あまり知られていない。米シンクタンクのジェームズタウン財団のアドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz)研究員は2020年の報告書「新疆ウイグル自治区の軍隊化した職業訓練制度がチベットに導入(Xinjiang’s System of Militarized Vocational Training Comes to Tibet)」のなかで、同年最初の7か月間で、中国は50万人以上のチベット人を強制労働に追い込んだとした。中国共産党は、新疆ウイグル自治区でウイグル人を強制労働させているのと同様の方法で、チベットでチベット人を「再教育」しているという。

(翻訳編集・蘇文悦)