米国務省、昨年 法輪功学習者83人死亡 6千人以上拘束=報告書

2021/05/14
更新: 2021/05/14

米国務省は12日発表した「世界の信教の自由に関する2020年版」の年次報告書で、昨年の中国共産党による法輪功学習者への迫害を詳述した。83人が迫害を受け死亡し、6000人以上が逮捕および拷問され、600人以上の法輪功学習者は不法に刑を宣告されたという。

「中国共産党は、超法的な機構(610弁公室)を通じて法輪功や他のグループを消滅させようとしている」と同報告書は指摘した。

中国共産党中央の「邪教問題の防止と対応指導チーム」は610弁公室とも呼ばれる。江沢民元総書記が法輪功学習者を迫害するために1999年6月10日に設置した法外機関だ。

アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は同日の記者会見で、法輪功学習者への迫害に関与したとして、中国の政府幹部1人とその家族の米入国を禁止する制裁措置を発表した。制裁の対象となった高官は、四川省成都市610弁公室の前主任の余輝氏だ。

ブリンケン氏は、「世界中の誰もが信教の自由の権利を持っている」「信教の自由は世界人権宣言でうたわれており、米国憲法の修正第1条によっても保障されている」と述べた。 

今回の報告書には、米国務省が昨年、法輪功を迫害した中国政府幹部、福建省アモイ市公安局梧村派出所所長の黃元雄氏に制裁を加えたことも記録されている。

米国際宗教自由事務所の責任者を務めるダニエル・ナデル(Daniel Nadel)氏は同日の記者会見で、「北京の人権記録を見て見ぬふりはできない。我々が言っているのは新疆だけではない、チベット、香港など……中国で起こったすべてのことだ」 と述べた。

また、「チベット仏教からキリスト教、そして法輪功学習者に至るまで、数十年にわたる中国の宗教弾圧はピークに達している」と指摘した。

同報告書は、法輪功学習者など良心の囚人に対する強制的な臓器摘出と、中国の警察による法輪功学習者への強制採血などに関する2つの調査結果も引用した。

法輪功学習者83人が迫害されて死亡

報告書は一部の迫害の実例を詳述した。

「『明慧網(法輪功情報サイト)』によれば、中国の20の省および直轄市の法輪功学習者83人がこの1年で迫害されて死亡した。なかには、拘束期間中に睡眠や食事を奪われ、適切な医療も受けられないなどの身体的虐待を受けて死亡した人もいる」

「また、一部の法輪功学習者は健康上の問題で仮釈放され、まもなくして死亡している」

「5月13日、河南省禹州市当局は、法輪功の資料を配布していた学習者の張志温さんを逮捕した。張さんの夫は彼女に服とインスリンを届けようとしたが、当局によって拒否された。当局は「彼女には医療サービスを提供する」と主張した。しかし、5月17日、張さんは拘留中に死亡した。当局は彼女の夫に通知することなく、遺体を直接火葬場に送った」

「山東省蓬萊市大張家村の法輪功学習者の李玲さんは6月28日に逮捕され暴行を受け、7月13日に死亡した。同日、村の村民委員会は彼女の家族に遺体の火葬を強要した。李さんの家族によると、彼女の顔は変形しており、全身アザや傷だらけだったと説明した。村の住民が、李さんが数十冊の法輪功のパンフレットを所持しているのを見て報告した後、役人らは6月28日に彼女を自宅から拉致した」

法輪功学習者6600人以上が逮捕され、残酷な拷問を受けた

報告書は法輪功の迫害の深刻さを伝える「明慧網」の情報を引用し伝えた。

「明慧網によると、中国の警察当局は2020年の1年間で、信仰への放棄を拒否した法輪功学習者6659人を逮捕し、8576人に嫌がらせを働いたと報じた。2019年に逮捕された人数は6109人で、嫌がらせを受けたのは3582人だった。逮捕は中国全土で行われ、中でも迫害が最も深刻な地域は河北省、黒龍江省、山東省、吉林省、四川省、遼寧省となっている。逮捕された法輪功学習者の職業は教師、エンジニア、弁護士、ジャーナリスト、作家、ダンサーなど様々であり、これらの人々は拘禁中に残酷な拷問による迫害を受けたとしている」 

「明慧網によると、9月22日と23日、黒龍江省ハルビン市の当局は、法輪功学習者27人とその家族(非学習者)3人を逮捕し、自宅から法輪功の書籍、ノートパソコン、プリンター、現金、法輪功創始者の写真などの私物を没収した。逮捕から数日後、当局は他の8人の法輪功学習者にも嫌がらせをした。ある法輪功学習者が帰宅すると、警察が家宅捜査をして家財を没収している現場に遭遇した。警察は法輪功の書籍を没収し、同学習者と法輪功を修煉していない夫まで逮捕した」

「7月、吉林省警察は法輪功学習者数人を逮捕した。うちの1人は殴打され、頭を壁に叩きつけられ、コンクリートの床の上で体を引きずられた。この学習者の膝は重傷を負った」

「法輪大法情報センターによると、5月22日、北京当局は毎年恒例の全人代(国会に相当)の前に少なくとも40人の法輪功学習者を逮捕した。警察は法輪功学習者に嫌がらせをしたり、彼らの家の家宅捜査をしたりした」

「4月21日、警察は学習者の王玉玲さんの自宅の窓をこじ開け、無理やり彼女の家に侵入した。当局は王さんの自宅にあった法輪功の書籍、法輪功関連の印刷物、印刷機およびコンピューターなどの家財を没収し、王さんとその娘を連行した」

「4月27日、当局は別の学習者の楊玉良さんの家にも無理やり侵入し、法輪功創始者の写真を没収し、楊さんとその娘の楊丹丹ちゃんを3日間拘留した」 

622人が不法に有罪判決を下される

「明慧網によると、中国当局はこの1年間で、622人の法輪功学習者に有罪判決を下したと報じた。刑期はそれぞれ3カ月~14年で、平均刑期は3年4カ月という」

法輪功学習者が受けた解雇などの差別を記録

米国務省の報告書は、明慧網などが報道した法輪功学習者が信仰のために職を失った事例についても記録した。

「法輪大法情報センターのウェブサイト(faluninfo.net)によると、河南省禹州市の警察当局は、警官である法輪功学習者の查卓琳さんが法輪功を誹謗中傷する声明を書くのを拒んだために、同氏を解雇した。查さんは、その上司から『警察官にとって、党(中国共産党)に忠誠を尽くすことは何よりも重要だ』と言われたと明かした」

「キリスト教徒、イスラム教徒、チベット仏教徒、法輪功学習者らは雇用、住居、ビジネスチャンスなどの面において深刻な社会的差別を受けている訴えが報告されている」 

「メディアは、山東省のある政府職員が上司から『地元以外の入居者、特に法輪功などのグループのメンバーを見つけ出すように』と命じられたことを明かしたと報道した」

「中国の信教の自由と人権について報道するオンライン誌 『Bitter Winter』によると、昨年11月1日、中国政府は第7回国勢調査を開始し、身分証明書番号を含む個人および家族データを広範に収集した。山東省煙台市のある調査担当者は、地元警察から法輪功に関連する写真などを所持する家族を通報するよう要求されたと明かした」 

「明慧網によると、江蘇省南京市の警察は、法輪功学習者である馬振宇さんを厳重に監視していた。 馬さんは、3年間の服役後、9月19日に蘇州刑務所から釈放されたが、当局は馬さんの監視だけでなく、馬さんの母親や他の法輪功学習者らに対しても脅迫していた」

「2020年末現在、キリスト教グループ、法輪功学習者らを支援する中国の著名な人権派弁護士である高智晟氏は依然として行方不明である」

迫害者に報奨金を支払うことへの懸念

「国際的な宗教メディア機構や人権団体の報告によると、中国のいくつかの地域では、一部の宗教団体のメンバーを逮捕、また彼らから財産を没収した警察官に対し、地方当局は報奨金を提供し続けているという。もし、地方幹部が毎月の検挙数のノルマを達成できなければ、処分を受けるとされている」

「明慧網によると、警察官は法輪功学習者を逮捕するたびにボーナスを受け取っている。金額は不明である」 

米国、中国当局の信教の自由に対する侵害を公に批判し、制裁を科す

米国務省の報告書は、「米国務長官、大使、他の国務省高官、大使館および総領事館の総領事らは、(中国共産党による)信教の自由に対する侵害について、繰り返し公の場で懸念を表明してきた」と述べている。

「2020年9月30日、米国務長官(ポンペオ氏)は、在バチカン米大使館が主催したシンポジウムで、中国共産党はキリスト教、チベット仏教徒、法輪功学習者および他の全ての宗教団体に対して残酷な取り締まりを行っており、もちろんカトリック教徒も免れていない」「中国以上に、信教の自由が攻撃されている場所はない」と厳しく指摘した。

「10月、インドネシアを訪問したポンペオ氏は、「中国共産党は、イスラム教徒、仏教徒、キリスト教徒、法輪功学習者など、すべての信仰集団に対して宣戦布告している」とし、「宗教の自由の未来に対する最大の脅威」という表現を用いて中国政府による宗教への弾圧を非難した。

昨年12月10日、米国務省は腐敗と人権侵害に関わった外国政府の現職と前職の高官17人に制裁を科すと発表した。その中には法輪功学習者に対する中国当局の弾圧政策に関与した、福建省アモイ市公安局梧村派出所の黃元雄所長が含まれている。国務省の声明によると、黄氏への制裁の理由は「厦門で人権侵害に関与し、信念を実践する法輪功学習者の拘禁と拷問に関わった」「深刻な信仰の自由の侵害に相当する」としている。黄氏とその家族に今後、米国入国を禁じている。

(大紀元日本ウェブ編集部)

 

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