習近平政権、アリババ集団を締めつけ強化 馬雲氏を排除へ

2021/03/19
更新: 2021/03/19

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は15日、情報筋の話として中国当局は電子商取引最大手アリババ集団に対して、メディア関連事業を売却するよう求めたと報じた。また、ロイター通信16日付によると、アリババ集団のモバイルブラウザー「UCブラウザー」が中国国内のアンドロイド向けアプリストアから削除された。習近平政権は、江沢民派に近いアリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の追放を狙っているとみられる。

WSJの報道によると、中国当局は今年初め、アリババ集団傘下のメディア事業を調査し、その資産規模の大きさに「驚いた」。当局は、アリババ集団がメディア事業を通して世論に強い影響力を与えることに警戒し、当局のプロパガンダ宣伝にとって脅威であるとの見方をしたという。

アリババ集団のメディア事業は、新聞、雑誌、ソーシャルメディア、広告、映画など多方面にわたる。同社は、中国版ツイッター、微博(ウェイボー)の約30%株式を、動画共有サイトbilibili(ビリビリ)の約6.7%株式をそれぞれ保有する。また、同社は中国メディアの「第一財経」(37%株式を保有)、「虎嗅網」、「商業評論」などに投資した。さらに2017年、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストを買収し、完全に子会社化した。

アリババ集団の金融子会社、アント・グループもメディア事業に進出している。なかに、中国メディア「36氪(36Kr)」を運営する北京品新伝媒文化有限公司の16.2%株式を保有。日本経済新聞社は2019年5月、北京品新伝媒文化有限公司と業務提携した。アント・グループは、中国経済専門メディア「財新伝媒」の5.62%株式を保有していたが、同年にすべて売却した。

ロイター通信16日付によれば、中国国営中央テレビ(CCTV)が15日、毎年恒例の消費者権利擁護番組で、アリババ集団の「UCブラウザー」が医薬品に関する虚偽広告を掲載したと批判した。翌日、中国国内のアンドロイド向けアプリストアでは同ブラウザーが削除された。

大紀元コメンテーターの李沐陽氏は、中国国内では偽物の医薬品が氾濫していて、検索大手の百度(バイドゥ)でも医薬品の虚偽広告が数えきれないほど掲載されているとした。李氏は、医薬品の虚偽広告がUCブラウザーへの取り締まりの主因ではないかとの見方を示した。

馬雲氏を排除

中国当局は昨年11月初め、馬雲氏とアント・グループの上級幹部から聴取し、監督管理上の指導を行った。翌月、当局は独占禁止法違反の疑いで、アリババ集団を調査すると発表し、アリババ集団と馬雲氏への締め付けを強化した。

当局は今月12日、独占禁止法の違法行為があったとして、IT大手テンセント(騰訊控股)など12社に罰金を科した。アリババ集団は含まれていなかった。

李沐陽氏は「アリババ集団が対象にならなかったのは、当局がアリババ集団の問題が深刻で、単独に処罰する必要があると考えていた可能性がある」と推測した。WSJ紙の11日付はこの可能性を示唆した。同紙によると、中国当局はアリババ集団に対して、「記録的な罰金」を検討している。金額は、2015年に中国当局が独占禁止法違反として米クアルコムに科した罰金9億7500万ドルを超えるという。

同報道は、中国指導部に近い情報筋の話として、もしアリババ集団が立場上で馬雲氏と一線を画して当局の指示に完全に従うならば、当局はアリババ集団への締め付けを緩める可能性があると報じた。中国当局は「中国国民と全世界の投資家の間で高い人気を誇るこのIT大手を倒したくないからだ」という。

情報筋は、馬雲氏は2019年にアリババ集団の会長を退任した後も、同社に強い影響力を維持してきたとした。

李沐陽氏は、習近平当局が独占禁止法違反でアリババ集団を取り締まっていると見せかけて、実際にはアリババ集団から馬雲氏を追い出し、同氏の粛清を図るのが真の狙いだと指摘した。

馬雲氏と江沢民派

馬雲氏は、江沢民政権の当時にアリババ集団を創業し、胡錦濤政権の間に事業を拡大してきた。WSJやロイター通信など複数のメディアは過去の報道で、馬雲氏と江沢民・元国家主席は近い関係にあり、江沢民の孫である江志成氏が率いる投資会社がアリババ集団とアント・グループに出資したことを明らかにした。

一方、習近平氏は国家主席の1期目において、反腐敗キャンペーンを通して、共産党党内の江沢民派の高官を次々と失脚させた。2期目になると、習近平派と江沢民派の権力闘争が一段と白熱化した。2017年10月の党大会が閉幕して以降、国内外で習近平氏に対する批判の声が高まっている。中には、習近平氏を引きずり降ろそうとする江沢民派の挑発もある。

馬雲氏は昨年、公の場で中国当局の金融規制システムを強く非難し、注目された。

昨年10月24日、上海市で開催された金融サミットで、王岐山・国家副主席は、国内の金融リスクが拡大していると警告し、「絶対にシステミック・リスクを発生させてはいけない」と金融規制を一段と強化することを示唆した。

同サミットでスピーチを行った馬雲氏は、王氏の発言について「中国には、いわゆる『システミック・リスク』などがそもそも存在しない。むしろ、健全な金融システムが欠けているというリスクがある」と反論した。

李沐陽氏は「馬雲氏の背後に江沢民派がいなければ、中国全体主義体制の下で、大富豪であっても、公然に習政権を挑発するような発言をする勇気はないだろう」とした。

「習近平氏は、馬雲氏を警戒し、アリババ集団が持つメディア帝国が今後、世論を習政権打倒に仕向けるよう扇動することに危惧したため、アリババ集団にメディア事業の処分を命じたのだろう」

李氏によると、昨年4月、中国国内でアリババ集団の上級幹部、蒋凡氏の不倫疑惑が報じられ、同氏の妻が微博に投稿し、不倫相手とみられた女性を糾弾した。中国の各メディアは蒋氏の妻の対応について報道を行った。しかし、その直後、一部の関連報道が取り下げられ、蒋氏の妻の微博アカウントではコメント機能が停止され、一部の投稿も削除された。ネットユーザーは、微博上でこの不倫騒動に関する投稿ができなくなったと訴えた。

李沐陽氏は「削除を命じたのは中国共産党のネット検閲当局ではなく、アリババ集団のようだ。アリババ集団は新浪微博の約30%株式を持ち、2番目の大株主だ」とした。この出来事で習近平政権は、アリババ集団がメディア事業を通して情報操作できることを意識し、政権にとって脅威であると気づき始めたと李氏は推測した。

習近平氏は2016年、国内の報道機関に対して「媒体姓党(メディアは党の絶対支配に従う)」を要求し、習近平政権への忠誠心を求めた。

「アリババ集団が掌握するメディア帝国は解体されるに違いない」と李沐陽氏は示した。

(翻訳編集・張哲)