中国の「内循環」政策、専門家「所得格差と個人消費低迷が主要課題」

2020/10/22
更新: 2020/10/22

中国指導部は今年5月、米国などとの経済的デカップリング(切り離し)を意識し、国内経済(内循環)を柱にする新発展モデルを提起した。しかし、中国の専門家はこのほど、中国の個人消費(対国内総生産比)が低迷しており、月収2000元(約3万1591円)以下の国民は、人口の約半分にあたる7億1000万人いると指摘し、「内循環」の実現は難しいとの見方を示した。

習近平国家主席は5月半ば、党中央政治局常務委員の会議で、「国内と国際の双循環相互促進の新発展パターンを形成していく」と初めて述べた。習氏は、産業サプライチェーンの安定性と競争力を高めることを指示した。

習近平氏は5月下旬、全国人民政治協商会議の経済界メンバーらと会談した際にも、「国内の大循環を主体とし、国内と国際の双循環相互促進の新発展パターンを次第に形成していく」と発言した。また7月の党中央政治局会議でも、同様の方針を繰り返した。これ以降、中国国内メディアは、「内循環」について頻繁に取り上げた。

「内循環」とは、米中貿易戦やハイテク戦などを背景に、海外への輸出や投資を減らし、国内の生産、投資、個人消費、技術革新などを強化していくことで、一段と内需を刺激し経済発展を維持することだ。

中国経済誌「財経」は10月18日、中国経済体制改革研究会の元会長で経済学者の宋暁梧氏の寄稿を掲載した。宋氏は、中国の所得分配は非常に不公平で、所得格差が「内循環」を阻む主因になるとの見解を示した。

同氏は、中国には潜在的な需要が大いにあるとした。「2019年、中国国民の個人消費(対GDP比)はわずか38.8%だ。米国の68%、ドイツの52%と韓国の49%よりはるかに低い。2018年の統計によると、1人当たりの収入水準で、米国は中国の8.4倍。しかし、(同年の)1人当たりの個人消費では、米国は中国の15.2倍となった。個人消費には、経済成長をけん引し、国内大循環を促進する潜在的な可能性がある」

宋氏は、個人消費が低迷している主因は所得格差にあるとした。同氏は「国家統計局の数値」でさえ、所得格差を測る指標、ジニ係数は過去20年間「高水準を維持している」とした。中国当局の統計では、「2015年以降、中国のジニ係数は毎年、微上昇している。2018年には、0.468となった(係数が1に近いほど所得格差が大きい)」

また、「一部の研究機関が提供したデータでは、(ジニ係数指標が)もっと悪い」という。

宋氏は北京師範大学収入分配研究院の6月の統計を引用した。これによると、中国では、月収500元(約7898円)以下の国民は1億1000万人で、国民全体の7.5%を占める。月収1000元(約1万5796円)以下の国民は3億1000万人で、全体の23.5%。月収2000元(約3万1591円)以下は7億1000万人で、全体の50.7%。

宋暁梧氏は、「中国居民収入分配年度報告(2019)」などを挙げ、近年、中国国民の所得格差が一段と深刻化しているとした。また、2015年以降、中国の2億9000万人の農民工の収入が減り続けている。さらに、一部の地方政府が、農民工や低収入の住民を「低端(低ランク)人口」として都市部から追放したことで、失業や貧困問題を激化させたと同氏は批判した。

米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の「2006年版グローバルウェルス・レポート」によると、中国本土では、0.4%の国民が中国の7割の富を保有している。一方、北京大学が2014年7月に発表した「中国民生発展報告2014」によれば、中国本土の貧困人口は少なくとも3億5000万人いる。貧困層が持つ財産は、中国人が持つ総財産の約1%しかない。所得の配分が非常に不均衡であることがわかる。

時事評論家の文小剛氏は、大紀元に対して、中国の所得階層別人口構成について、「上位の富裕層の人口はわずかで、中間層は少なく、下位の貧困層が多くを占めるピラミッド型をしている」との見解を示した。現状では「個人消費の拡大による景気回復は望めない」。文氏は「高価な医療費や老後の資金を貯めるため、中国人の多くは消費したくてもできない」と話した。

(翻訳編集・張哲)