中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)財政経済委員会の黄奇帆・副主任は10月9日、金融分野における米中のデカップリング(切り離し)をめぐって発言した。この中で黄氏は、中国資本市場では自由に外貨を交換できないなどと明言し、波紋を呼んだ。
黄奇帆氏は9日、北京市で開催された中小企業関連会議に出席し、米中が金融分野でデカップリングをすることは、「(米国にとって)千人の敵を殺すのに、2千人の兵士を失うことであり、損失が大きい」「自殺に等しい」と自信満々に語った。
同氏は、中国当局は金融分野において「3つの有効な切り札」があると示した。
まず、中国資本市場では自由な外貨両替制度がないことだ。「自由に両替できないため、(デカップリングは)中国に影響を及ぼすことができない」。2つ目は、中国の人民元建て金融資産は300兆元(約4712兆円)に達しており、外資企業が持つ割合はそのうちの1.8%に過ぎないことだ。「50分の1にも達していないため、大きな影響はない」。3つ目は、外資企業などは中国で金融業を展開していく際、中国当局の管理規定を受けなければならず、「さもなければ、いつものように当局の懲罰を受ける」という。
在米中国人経済学者の李恒青氏は、黄奇帆氏の発言は「無意識のうちに、中国当局の本音を反映した」との見方を示した。
「中国で自由に外貨両替できないというのは、投資家が資金を中国国内に投入しても、収益だけでなく、元本も中国から海外に移すことが不可能になるのだ。これは投資家、特に米国ウォール街の投資家らにとって非常に恐ろしいことだ」
李氏は、黄奇帆氏が述べた「外資企業がいつものように懲罰を受ける」について、「最近の習近平当局の方針と違う」と指摘した。習近平国家主席と李克強首相は過去数カ月、外資企業の中国撤退を食い止め、中共ウイルス(新型コロナウイルス)で後退した景気を立て直すため、外資企業を含む各企業のビジネス環境を改善していくと公の場で強調した。
「黄氏の話が本当であれば、習近平氏らの発言は嘘になるだろう」
また、李恒青氏によると、中国の政府債務規模は300兆元に上る。これは、黄奇帆氏が言及した人民元建て金融資産規模とほぼ一致したという。「外資企業が持つ割合が1.8%しかないということは、外資がすでに人民元建て資本市場から撤退したと推測できる」
一方、中国人民銀行(中央銀行)貨幣政策委員会の委員を務めた余永定氏は8月、米国との金融的デカップリングによって、中国が米ドル決済システムから排除されることが最大の課題だとの見方を示した。同氏は、米ドル決済システムを利用できなければ、中国企業の海外進出が非常に困難になるとした。
大紀元のコメンテーター、李林一氏は「現在、例えば原油取引においても、ドルで決済するのが一般的になっている。中国が米ドル決済システムから追放されると、中国企業の対外貿易の大半ができなくなる」と述べた。この背景の下で、中国当局は人民元の国際化やデジタル人民元の導入を急いで推進している。
(記者・駱亜/張頓、翻訳編集・張哲)
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