中国版GPS「北斗」が運用開始 「各国の安保にとって新たなリスク」との指摘も

2020/08/05
更新: 2020/08/05

中国当局は7月31日、独自の衛星利用測位システム(GPS)の全面稼働を始めた。一部では、中国側が同システムを利用して、国際社会への監視や情報取集を強化し、各国の国家安全保障に新たなリスクを与えるとの指摘がある。

中国の習近平国家主席は7月31日の式典で、衛星測位システム北斗衛星導航系統、BDS(以下は北斗システム)」の運営開始を宣言した。当局は6月、北斗システムを構成する衛星のうち、最後となる55機目の実用衛星を打ち上げた。官製メディアは、同衛星は軌道上テスト、ネットワーク関連評価などが実施されたと報道した。

中国の人工衛星開発機関、空間技術研究院は1994年、北斗システムを開発し始めた。2000年以降、第1世代の「北斗1号」衛星群が打ち上げられた。今回は、2015年から打ち上げてきた第3世代の「北斗3号」衛星群だという。中国当局の発表では、現在137カ国との間で、北斗システムの協力合意を結んだ。同システムの関連製品を120カ国以上に輸出した。

現在、全世界に4大衛星測位システムがある。北斗システムのほかに、米国の全地球測位システム(GPS)、ロシアのグロナス(GLONASS)システム、欧州のガリレオ(Galileo)システムである。

専門家によると中国当局は、北斗システムで他国の市民の個人情報取得を強化していく恐れがあると指摘した。香港軍事評論員の黄東氏は、地元紙・蘋果日報に対して、北斗システムは、中国通信機器大手ファーウェイ、ネット大手テンセント(微信)などのように、世界各国に浸透する可能性があるとの見方を示した。

黄氏によると、北斗システムの開発において、中国当局は半導体チップなど、主要部品の国産化を実現し、他国の製品への依存度を低減させたため、「他国への浸透はさらにしやすくなった」と話した。同氏は、今後北斗システムが、世界の衛星測位システムの中で主導的な地位を占め、各国の国民経済・生活まで浸透すれば、国際社会における中国当局の影響力行使がさらに強まると警鐘を鳴らした。

中国当局は当初、米のGPSシステムからの技術的独立を加速するために、北斗システム開発を始めたとした。しかし、その背後には米国を念頭に置いた中国側の軍事的な狙いもある。

中国科学情報サイト「中国科普」は6月23日、北斗システムの戦略用途について記事を掲載した。同記事は米GPSシステムの軍事的用途を挙げながら、北斗システムの必要性を強調した。記事は、「GPSは米空軍の軍用衛星測位システムだ」「GPSシステムの下で、人類の戦争に『ピンポイントで暗殺』『斬首行動』などの新単語が生まれた」と指摘した。さらに同記事は、「北斗システムの完成は、GPSシステムのできることを、中国ができることを意味する。国家安全保障上の意義が大きい」と強調した。

大紀元コメンテーター、田雲氏は、同記事は中国の北斗システムの開発が、国民生活よりも、対米ハイテク戦争のためにあることを浮き彫りにした、と指摘した。

一方、2017年米議会に提出された報告書では、中国軍は「米GPSシステムの使用が停止された場合でも、北斗システムを使ってミサイルをターゲットに誘導できるように開発を急いでいる」との見方を示した。

豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドは昨年、ニュージーランドの政治学者、アンマリー・ブレイディ氏を取材した。ブレイディ氏は、中国の北斗システムが米GPSシステムの独占的な地位に取って代わることは可能で、中国軍に莫大な利益をもたらすとした。

北斗システムには、位置探知や通信のほかに、情報収集、偵察、監視の機能が備わる。中国警察当局は、国内での「社会安全維持」に同システムを使っている。2012年11月、北京市で中国共産党第18回全国代表大会の開催にあたって、市警察当局は500セット以上の北斗システム位置測定端末を新たに導入し、集団抗議活動への警戒にあたった。

(翻訳編集・張哲)