イタリア、感染拡大で中国共産党との関係が浮き彫りに 見直す動きも

2020/03/15
更新: 2020/03/15

イタリアの専門家によると、イタリアでの中共ウイルス(新型コロナウイルスとも呼ぶ)の感染拡大を受けて、同国政府は中国共産党との関係を見直し、米国政府との連携を強めている。

イタリアが中国政府の主要外交政策プロジェクトである一帯一路にG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)諸国として初めて加盟し、西側同盟国から批判を浴びてからほぼ1年経過した今、この感染拡大に対するイタリアの初期対応は両国関係の変化を示している。

ローマを拠点とするシンクタンク、Istituto Affari Internazionaliのシニアフェロー兼アジア研究責任者のニコラ・カサリーニ(Nicola Casarini)氏は大紀元への電子メールで、「中共肺炎(武漢肺炎)の発生で、イタリア政府は中国共産党に対するアプローチを見直し、またトランプ政権にメッセージを送った」と述べた。

カサリーニ氏によると、現在の中道左派政権は、2019年3月に一帯一路への加盟を決定したポピュリスト政権とは異なり、今回の事態を利用して米国との関係を強化している。イタリアは中国からの航空機の運航停止を発表した初めての西側の国で、その運行停止期間は現在、西側諸国の中で最も長い4月28日までと設定されている。

「この措置を通して、イタリアのグゼッペ・コンテ首相とロベルト・スペランツァ保健相は、自らをヨーロッパの信頼できる同盟国として位置づけようとしています」とカサリーニ氏は話す。

中共ウイルス拡散を封じ込めるこの初期対応にもかかわらず、イタリアは中国以外で最もひどい被害を受けている国になってしまった。ウイルスは2月には、イタリア北部で気付かないうちに広まっていたことが判明し、そこから全国に広がっていった。イタリアでは現在、2万1000人以上が感染し、1400人以上が死亡しており、全国が封鎖状態となっている。

イタリアと中国共産党の関係

イタリアは2019年3月に一帯一路への加盟を決定し、米国と西側同盟国は懸念を示した。

鉄道、港湾、道路網を通じ、アジアとアフリカ、欧州をつなぐ大規模なインフラ投資事業である中国共産党政権の「一帯一路」計画は、発展途上国に返済能力を超える債務を負わせていると批判を受けている。一方、米国は、一帯一路は共産党の軍事的影響力を強化し、西側諸国でスパイ活動を展開するためものだと憂慮している。

米国家安全保障会議は当時イタリアに対し、一帯一路を支持すれば「共産党の略奪的な投資手法を正当化し、イタリア国民に利益をもたらさない」と警告した。

ドイツのマース外相も「もし中国とうまく取引ができると思っているなら、気がついた時にはすでに共産党に依存しているだろう」と述べた。

ブルームバーグの報道によると、イタリアのルイジ・ディマイオ外相は先月、イタリア政府の決定を擁護し、「商業上の理由」と「経済的な利点」で一帯一路に参加したと述べた。

しかし、一帯一路での投資を追跡しているRWR  Belt and Road Monitorが集計したデータによると、この1年間、イタリアの石油・ガス企業エニ(Eni SpA)が中国の太陽電池メーカー大手のジェイトンソーラー(浚鑫太陽能)との間で、約22億ドルの投資と新規ソーラープロジェクト開発で合意した以外は、多くのプロジェクトを誘致していない。

ブルームバーグによると、同国北東部のトリエステにある港開発の計画もまだ実現していないという。

一方、イタリアの国家統計局であるイスタット(ISTAT)が今年2月に発表した速報値によると、同国は引き続き対中貿易赤字を計上しており、赤字額は今年1月には24億ユーロ(27億ドル)だった。

感染が拡大して以来、経済学者らは、すでに低迷している同国経済が第1四半期末までにリセッション(景気後退)に突入し、特に重要な観光産業や高級品産業が大きな打撃を受けると予想している。

中国共産党の宣伝活動

このほど、中国共産党政権はイタリアに医薬品を寄贈し、現地の封じ込め対策を支援するために医療専門家チームを派遣した。

アナリストによると、これらの措置は、共産党政権が自らを疾病対策の世界的リーダーと位置付け、感染初期の情報隠蔽がウイルスを海外に拡大させたとの批判をかわすためのキャンペーンの一環だという。この「ポジティブな」プロパガンダの一環として中国共産党は最近の声明で、ウイルスは中国で生まれたのではなく、単に中国で最初に感染が発生しただけだと示唆した。

カサリーニ氏は、イタリアで感染の危機が治まれば、中国共産党政権は両国の関係改善のために「イタリア、特に感染の影響が大きい北部の工業地区に(投資を通じて)お金をつぎ込み始めるでしょう」と考えている。

「しかし、中長期的に中伊関係は浮き沈みを続け、二国間のみならず、イタリアとアメリカの関係の進展による影響がより大きいでしょう」と彼は付け加えた。

カサリーニ氏は、感染拡大後にイタリアや他の欧州諸国が中国共産党政権との関係にどのように取り組むかは、「政治家やメディアがこの件をどう取り上げるか」にかかっていると述べた。

彼は、「感染発生初期に重要な情報を隠蔽し、ウイルスを世界中に拡散させた中国とその政権に責任があるとすれば」欧州諸国の対中姿勢が硬化するだろうと話した。しかし、共産党政権が推進する「共通の敵(ウイルス)と一緒に戦おう」という考え方が広まれば、逆のことが起こるかもしれない。

「これは現段階では確かに驚くべきことですが、中国共産党がヨーロッパにさらに資金を注ぎ込むようになれば、なおさらあり得ます」とカサリーニ氏は述べた。
 

(大紀元日本語ウェブ編集部)