南太平洋の島国・ソロモン諸島政府は17日、台湾との断交を発表した。米国の専門家は、ソロモン諸島が中国共産党政府と接近することで、太平洋における米同盟国の影響力が低下する可能性があると警告する。
台湾の蔡英文総統は同日SNSで、ソロモン諸島との外交関係の終わりは、中国が絶えず台湾の国際的な孤立化を狙うためだとした。総統は、中国共産党政権が「台湾の人々の勇気をくじき、『一国二制度』を受け入れさせようとしている。断じて受け入れない」とSNSに書いた。
パプアニューギニアとオーストラリアの近くに位置するソロモン諸島は、マナセ・ソガバレ首相が4月に就任して以来、台湾との外交関係を見直すことに言及してきた。
1983年以来、ソロモン諸島は台湾の17カ国ある同盟国の1つ。台湾は2016年以来、エルサルバドル、ブルキナファソ、ドミニカ共和国、パナマ、サントメ・プリンシペの5つの同盟国を失い、それぞれが中国と国交を結んだ。
台湾には自国の軍隊、通貨、選挙制度のある民主主義国との事実があるにもかかわらず、中国共産党は、台湾を中国領土の一部とする「一つの中国」論を主張している。
台湾政府は、中国が「金銭外交」を展開していると非難している。台湾や米国の同盟国や友好国に投資して、中国共産党政権に有利な世論を作り出しているためだ。このたびの断交により、ソロモン諸島は中国から500億円の支援を受ける。
ソガバレ首相は就任後間もなく、台湾との外交関係を評価するための諮問委員会を設立した。9月1日付ロイター通信の報道によると、8月にソロモン諸島の8人の大臣と首相秘書官が北京を訪問。委員会メンバーの議員は、中国と同盟を結んでいる他の南太平洋諸国を訪問した。
米国政府は、この南太平洋地域における北京の影響力拡大を警戒している。すでに台湾との外交を放棄した太平洋島しょ国家には、地政学的に、中国軍の基地が建設されるリスクが高まっている。
台湾の呉ショウ燮外交部長(外相)は11日、台湾官製メディア・中央社のインタビューに応じ、ソロモン諸島が中国と外交を結べば、約束を守らなかったり、守っても巨額の債務に苦しめられることになると警告を発していた。
ソガバレ首相は9月13日、諮問委員会所属議員と会議を開いた。中央社が入手した会議資料のコピーによると、ソガバレ政権は、中国共産党政権誕生から70年を迎える10月1日までに、北京との国交樹立を推しているとの内容があったという。さらに、外交相手を台湾から中国に変えることで「多くの利益がある」とし、中国共産党による「一つの中国論」について「原則順守を受け入れる」と記されていた。
中央社の報道によると、親中派のソロモン議会議員は、首相がニューヨークで米国政府の影響を受けるのを避けるために、国連総会が始まる前に決定を急がせていると伝えた。
中央社は、マイク・ポンペオ米国務長官もしくはペンス副大統領が今週始まる国連総会でソガバレ首相と会い、台湾との国交維持を支持することを伝える予定だったと報じた。
中国の南太平洋地域での影響力増加は米豪の利益を損なう
米国と台湾は1979年、外交的な調整のために断交しているが、台湾は引き続き、インド太平洋地域において、米国の同盟国として存在感を発揮している。中国共産党は2019年1月、台湾統合のために武力を辞さないと明言した。米国は台湾の自衛能力強化のために、武器を売却し続けている。
同年6月、米国国防省の報告では、台湾は、地域の安定を守る「自然なパートナー」と表現した。
太平洋諸島の米国大使キャサリン・エバート・グレイ氏は9月10日、ソロモン諸島の首都ホニアラを訪問し、ソガバレ首相と会談した。中央社によると、グレイ氏は、ソロモン諸島はパートナー国家の一つであり、もし北京との外交を結んだ場合、潜在的な課題に直面すると警告したという。
9月11日、米国国防総省のアジア太平洋地域安全保障担当次官デビッド・ハーベイ氏は、シンクタンク「グローバル台湾研究所」のフォーラムに出席し、「台湾が外交的パートナーを維持し、国際的に孤立せず、地域の安定を守ることが重要だ」と述べた。
ワシントンにあるシンクタンク 「戦略国際問題研究所」 のマイケル・グリーン上級顧問は、中国が南太平洋地域で軍事的・地質的利益を拡大しているため、米国、オーストラリア、ニュージーランドの利益が損なわれていると指摘した。
米中経済安全保障審査委員会の2018年6月の報告書によると、太平洋の島しょ部には、中国の軍事基地が建設されるリスクがあると指摘した。
豪州フェアファクス・メディアは4月9日、消息筋の話として、バヌアツ政府は中国共産党政府と会談し、島内に中国の軍事基地を建設する可能性について議論したという。しかし、両国はこの報道内容を否定している。
委員会の報告によると、「太平洋諸島における中国の軍事基地または施設は、インド太平洋における米軍のプレゼンスおよび訓練に影響を与える可能性がある。さらに、太平洋諸島における米国の戦略的アクセスに障害をもたらす恐れもある」と書いた。
太平洋地域の地政学に詳しい、同志社大学の早川理恵子氏は自身のブログで、このたびのソロモン諸島と台湾の断交を受け、日本や豪州、米国への提言を行った。同氏は、中国はインフラを狙っているため、日米豪の安全保障に必要な太平洋の離島の通信、空港、港湾などを確保すべきだ。そして、中国による離島の分離独立が進むと予想されるため、離島支援を推進する必要があるとした。
(翻訳編集・佐渡道世)