FBとグーグル、中国企業による、米・香港間の海底ケーブル計画 米が不承認検討=WSJ

2019/09/02
更新: 2019/09/02

地球をめぐる光ファイバーケーブルは、世界の国家間の国際通信の90%以上を担っており、各国の安全保障上の重要インフラにも数えられている。情報の安全性を懸念する米司法省は、グーグル、フェイスブックおよび中国企業が出資する海底光ケーブル事業の開通を不許可にすることを検討している。ウォール・ストリート・ジャーナル8月29日付が報じた。

太平洋横断海底光ファイバーケーブル計画「パシフィック・ライト・ケーブル・ネットワーク」は、グーグルとフェイスブック、および鵬博士電信伝媒集団股份(Dr. Peng Telecom&Media Group)が共同で計画している。鵬博士電信は、中国で4位の上海市場上場の通信プロバイダで、中国政府にもサービスを提供している。

米国西海岸ロサンゼルスから太平洋を横断して香港、中国南西部、インドネシア、マレーシア、フィリピン間に光ケーブルを設置し、その長さは1万2800キロメートル、投資額は3億ドル(約310億円)に及ぶ。東アジアおよび環太平洋地域に通信網を使って高速で大容量のサービスを提供できるとしていた。

フェイスブックとグーグルがこの海底ケーブル計画を発表したのは2016年10月。グーグルと親会社アルファベットは2017年、この光ケーブル計画を司法省に申請し、一部の試験運用のための敷設許可を得ていた。2019年にケーブル敷設はほぼ完了している。

しかし、司法省が率いる有識者を集めた政府間パネル、チーム・テレコム(Team Telecom)は安全保障上の観点から、計画の承認に反対した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、司法省は連邦通信委員会(Federal Communications Commission、FCC)に対して、米国全土の安全性評価が確認できるまで、計画の完全承認を遅らせるよう通知したという。

2019年9月には、ケーブル開通に関するFCCによる商用許可の承認期限が切れる。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、チーム・テレコムの反対意見により、期限が延長されることなく、計画がとん挫する可能性もある。

ファーウェイと共に監視技術に協力してきた企業

深セン拠点の鵬博士電信の代表、Yang Xuepingは中国共産党政権のために積極的な協力を示してきた人物。同社は技術大手・華為科技(ファーウェイ)と提携し、5Gネットワーク建設および人工知能の開発に取り組み、市民の監視業務の市場に関わっている。

中国共産党による国家情報法によると、すべての在中組織と中国人は、国家安全部の情報活動に協力する義務がある。反スパイ対策法は、すべての企業と市民が情報を提供し、拒否してはならないことも規定している。

米司法省が中国資本の含まれる情報技術計画を差し止めるなら初めてのケースとなり、米国の安全保障の警戒基準が一層高まったことを示唆させる。

チーム・テレコムの懸念には、香港の自治権の低下および中国共産党による影響力の拡大がある。6月に開始した香港市民デモは、警官らの武力鎮圧の激化により、ますます中央政府の介入が色濃くなってきている、

野心的な光ケーブル通信網の設置は、中国共産党政権が掲げる広域経済圏構想「一帯一路」のひとつに含まれる。アジア、アフリカ、欧州に関わる海底ケーブルや地上・衛星回線を「デジタル・シルクロード」と呼び、インフラ建設を進めている。

海底光ケーブルの脆弱性

通信市場調査およびコンサルティング企業のテレジオグラフィ(TeleGeography)によると、現在、国際通信の99%以上が光ファイバーケーブルで賄われており、その大半が海底にある。さらに、ほぼすべての国家間の国際通信は光ケーブルが使用されている。

海底ケーブルは、悪意ある相手のターゲットになる。7月26日、CNNは、海底光ケーブルが伝送する情報の窃盗は簡単なことではないが、ケーブル自体を制御していれば、傍聴は難しいことではないと伝えた。

ウォール・ストリート・ジャーナルは2019年3月、米国の関係者や元安全保障当局者の話として、ファーウェイが海底ケーブルの統制権を握れば、中国共産党はデータ操作や監視を強化する可能性があり、都合により特定地域のネットワークを遮断する場合もあると懸念していると伝えた。

オーストラリアは2018年6月、パプア、ソロモン諸島とシドニーを結ぶ海底ケーブル敷設事業のため1億3600万豪ドル(約110億円)の資金を拠出すると決定、事業をソロモンから受注していたファーウェイを排除した。

(翻訳編集・佐渡道世)