アルゼンチンの中国宇宙探査センター「中国軍が運営」米国も憂慮

2019/02/04
更新: 2019/02/04

中国当局が南米アルゼンチンのパタゴニア地方ネウケン州に、海外で初めて建設した宇宙探査研究センターについて、地元住民や米国などが強い懸念を示している。ロイター通信は1月30日、同センターは中国軍が管轄している宇宙基地だと報じた。

ロイター通信は、地元住民数十人やアルゼンチン前政権と現政権の政府関係者、米政府関係者、天文学者などへの取材で、同センターは中国軍の軍事施設である可能性が高いと強い懸念を抱いているという。

センターは、高さ16階建てビルに相当する直径35メートルの巨大アンテナを構える。中国当局は当初、宇宙探査研究センターは有人月面着陸や火星探査の目的に使用され、自由に見学できる宇宙科学施設を造るとした。しかし完成後、施設の立ち入りは限定されている。

国際法に詳しい専門家は、50年間無税で借用されている敷地面積200ヘクタールの中国の宇宙センターは、外国公館のように治外法権となっており、アルゼンチン政府の監督管理下に置かれていない状況だと指摘する。

マウリシオ・マクリ現政権で外相を務めたスサナ・マルコーラ(Susana Malcorra)氏は、アルゼンチン政府が同施設の運営に実質的な監督を行ったことがないと述べた。2016年、マルコーラ前外相は中国側との協議で、同施設について「民間用に限る」との規定を盛り込ませた。しかし、専門家は両国が締結した契約では、中国側が同施設の運営管理状況をアルゼンチン側に報告するよう定められただけで、法的拘束力がなく、軍事利用される恐れがあるという。

中国メディア・参考消息網は2017年2月18日、宇宙開発を管轄する中国国家航天局傘下の衛星発射測控系統部(CLTC)が同センターを管轄すると伝えた。

ロイター通信は、実際に中国軍当局が同基地を管理しているとした。電波天文学者は、この基地で使われている無線通信の電波が監視されているものの、中国側が重要データを暗号化して送信することができると強調した。アルゼンチンの宇宙開発当局、宇宙活動委員会(CONAE)によると、同センターにはアルゼンチン人職員が駐在していない。委員会は定期的に同基地を訪問しているという。

米「情報収集のために使用」

ロイター通信によると、米政府は長い間中国当局による宇宙開発の軍事利用について懸念し、警戒感を高めてきたと伝えた。米政府関係者は、アルゼンチンにある宇宙探査基地の目的は宇宙観測だけではないと主張している。

米国家安全保障会議(NSC)のガレット・マーキス(Garret Maquis)報道官は、同宇宙探査基地の建設は、中国当局が、2009年深刻なインフレで危機的な経済状況に見舞われたアルゼンチン政府との間で密かに締結されたと批判した。「(アルゼンチンの)主権を侵害し、不透明で略奪的である」

中国当局は、当時アルゼンチンのキルチネル政権に対して経済支援やインフラ整備などを約束しながら、基地建設を巡って秘密裏に交渉を進めた。この結果、中国当局は2012年11月、同国ネウケン州政府と基地建設に関する合意を締結した。

2015年アルゼンチン国会では、賛成133票、反対107票で中国の宇宙探査研究センタ―建設に関する協力協定が通過した。同年12月10日マウリシオ・マクリ氏が大統領に就任して以降、アルゼンチン政府は中国側との再協議で、施設の利用について「民間に限定する」と付け加えた。しかし、マルコーラ前外相は再協議では、施設に対するアルゼンチン政府の管理監督権限が盛り込まれていないと指摘した。

米紙ニューヨーク・タイムズは2018年7月28日、専門家の話として、同宇宙探査センターに設置されたアンテナや宇宙探査に関わる設備は、南半球における中国当局の情報収集能力が高まると報じた。

また米誌「ザ・ディプロマット」2016年5月24日によると、一部の宇宙・衛星専門家は、中国の宇宙基地の役割は他国の衛星やミサイル発射、無人機の発動などを監視し、妨害することにあると見ている。

謎めいた施設 住民は不安視

同センターから車で40分ほど離れた小さな町、ラス・ラハス(Las Lajas)では、一部の住民は同基地について、科学研究施設ではなく、「中国当局の軍事基地」だと認知している。また、謎めいた施設について「核爆弾を製造している」と主張する住民もいたという。

ラス・ラハスのマリーア・エスピノーサ(Maria Espinosa)町長はロイター通信に対して、同宇宙探査基地は昨年4月から運営が始まり、現在約30人の中国人スタッフが基地内に駐在していると話した。中国側のスタッフは地元住民に対して、同基地への接近を禁じている。また、施設内のスタッフとして地元の住民を雇用することも行っていないという。

アルゼンチン政府関係者は同基地を見学した各メディアの記者のリストをロイター通信に公開した。しかし、ジャーナリストが同基地を見学したのは2017年2月だった。運用を開始した18年4月より14カ月前のことだ。

ロイター通信は、不透明な運営体制から、この宇宙探査基地を「ブラックボックス」と例えた。

同基地が運用を開始した数週間後に、米政府は、国防総省の人道支援/災害対応プログラム(HA/DR)の一部として、中国の宇宙探査基地が位置するネウケン(Neuquen)州で、総工費130万ドル(約1億4269万円)の危機管理センター(Emergency Operations Center、EOC)を建設すると発表した。米政府がアルゼンチンにおける初めての建設プロジェクトだという。

在アルゼンチン米国大使館は2018年6月1日同ウェブサイトで、ネウケン州政府の要請でEOCの建設を決定したと発表した。EOCは、同州都であるネウケン市の空港の近くに建設される。広さは6458平方フィート(約600平方メートル)。

(翻訳編集・張哲)