1917年のロシア10月革命から101周年を迎えた11月7日、この日を「共産主義犠牲者の国家的記念日」に設定した米トランプ政権は声明を発表した。声明発表は昨年に続き2回目を迎える。
声明の冒頭には「共産主義の全体主義体制によって1億人以上が殺害され、迫害されたことに哀悼の意を示す」とある。
また共産主義の説明として「生まれ持った人権を、全体の幸福のもとに位置付けた。このため信教の自由、私有財産、言論の自由が根絶された。また、頻繁に生命が失われた」と書いた。犠牲の例には、ウクライナの計画的な大量餓死、ソ連の恐怖政治による粛清、200万人の自国民が虐殺されたカンボジアなどを挙げた。
「共産主義は、人の精神と繁栄を永久に破壊する事実を無言で証言する者」と犠牲者たちについて表現した。
いっぽう、米NGOの最新年次報告では、アメリカの若者の半分以上が社会主義国や共産主義国に憧憬を抱き住みたいと望んでいることが分かった。
ワシントン本拠のNGO「共産主義犠牲者財団」と調査会社ユーガブ(YouGov)は2100人のアメリカ人を対象に、社会主義や共産主義などの問題についての意見を聞いた。
結果は、アメリカ人の多くは共産主義による危害を認識しておらず、特にミレニアル年代(25~35歳)は理解していないことを示した。ミレニアル世代とは、インターネット環境の整った2000年代以降に成人を迎えた世代。世界の労働人口の3分の1を占め、米国には7100万人がいる。
大半のアメリカ人は資本主義社会に住むことを第一希望としているが、ミレニアル年代では社会主義国を第一の選択としていた。さらに同世代の46%が社会主義国に住みたいと思っており、資本主義国の40%よりも多い。少数の若者がファシズム社会(専制体制)に住みたいと考え、6%が共産主義が最良だと選択した。
共産主義の残忍さを知らないミレニアル世代
米国に亡命した中国民俗学者・王康氏は米政府系VOAの取材に対して、ミレニアル世代の回答は、教師の指導により影響されているという。
王康氏は、共産主義に憧れる若者たちは実際、ホワイトハウスが形容した共産主義の苦痛、抑圧、惨殺を目撃しておらず、全体主義体制を経験したことがない。極左テロリストや赤軍によって引き起こされた破壊工作も味わったことはないだろうと指摘した。
「ミレニアル世代の心の中にある社会主義とは、旧ソ連や中国共産党ではなく、西側の民主社会でもある」と述べ、「これは歴史的な誤解だ」と述べた。
共産主義犠牲者財団による調査報告によると、アメリカ人の26%が学校で共産主義について学んだことはないと答えた。共産主義と言わずに思想を指導していることが考えられる。また多くの若者は「共産主義」と「マルクス主義」は中立的な立場を示す言語だと誤解している。
またアメリカ人の半数が、共産主義について、デンマーク、スェーデンやノルウェイなどの北欧の寛大な社会保障制度をイメージしている。つまり、社会主義を「分かち合う」「平等」と解釈し、大学の無料化、無料の健康保険、雇用の保障、格差のない社会と考えている。
共産主義犠牲者財団のマリオン・スミス氏は、「マルクス主義政権は政治的、経済的、人道的に巨大な災害をもたらした。いくつかは今日もまだ進行中だ」と付け加えた。
調査報告は、社会主義と共産主義についてのアメリカ人の考えを分析するため、2016年から年次報告書を発行している。過去3年間の報告は共通して、世界の共産主義による犠牲者数は一般的に知られていなかった。
今年の報告書によると、共産党専制体制をとる中国が新疆ウイグル自治区で人々を収容し抑圧していると聞いたことのある人は、わずか15%だった。
フランスの歴史研究家ステファヌ・クールトア(Stephane Courtois)氏の著書『共産主義黒書』によれば、共産主義運動による死者は1億人。米国の歴史学者RJ・ランメル氏も、著書『政府による死』で、同様の数字を出している。なかでも最も殺人を犯した執政者は毛沢東とされる。その犠牲者の推計は6000万~8000万。この数字は、第一次世界大戦(3700万)、第二次世界大戦(6600万)により奪われた命の数を上回る。
(翻訳編集・佐渡道世)
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