米中貿易摩擦が高まるなか、米トランプ大統領は7日、自身のツィッターに「中国に対して貿易赤字10億(約1060億円)ドルを削減するよう求めた」と書き込んだ。しかし、米メディアは、米政府は実際、中国に対して1000億ドル(約10兆6000億円)の貿易赤字削減を要求したと報じた。
昨年、中国のモノの対米貿易黒字が3752億ドル(約39兆7712億円)に達し、過去最高を記録した。
中国当局は2月末、貿易問題で対立が深まる米中関係を回復させるため、習近平国家の首席経済顧問、劉鶴・中央財経領導小組主任を米に派遣した。
8日付米紙・ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は情報筋の話を引用し、米政府高官と劉氏の会合で、米側が中国に対して1000億ドルの貿易赤字削減を求めたと伝えた。これに対して、劉氏は「双方の莫大な貿易赤字を削減することは中国の国益に一致する」、「中国は輸出主導の成長モデルからの脱却を目指している」と述べた。
トランプ大統領は1月、中国を念頭に、太陽光発電パネルに高率の輸入関税をかけると大統領令に署名した。
また、大統領は今月1日、鉄鋼やアルミニウム輸入製品に対して、それぞれ25%と10%の追加関税を課すと表明し、8日に大統領令に署名した。新制度は23日から適用が始まる。カナダとメキシコは除外された。EUや日本など各国は同措置に反発している。
米ロス商務長官は8日、米メディアCNBCの取材に対して、安価な中国製鉄鋼は他の国を経由して米国に入ることがあるため、関税実施対象国が多くなったと説明し、「中国当局は非常にずるい」と批判した。長官は、今後関税税率をめぐって各国政府との間で調整を行うと述べた。
一方、中国当局が8日に発表した貿易統計によると、2月の対米貿易黒字が210億ドルで、1月の219億ドルからわずか減少した。1月と2月の対米貿易黒字総額は過去最高となった。
中国当局が譲歩
中国当局は、トランプ政権の鉄鋼など高率関税措置に反発し、「中国に与える損失を算出し、有効な措置をとって正当な権益を守る」と対抗措置を構える姿勢を示した。
しかし実際、中国当局は米国にすでに譲歩をしている。
劉鶴氏が米国に出発した2月27日、中国商務部は米国産鶏肉に対して課していた反ダンピング(不当廉売)関税措置と補助金総裁関税措置を、同日を持って撤廃すると発表した。米は11年、米国産鶏肉に中国が高い関税を不当に課していると、世界貿易機関(WTO)に提訴し、13年に勝訴した。しかし、中国が関税を十分に引き下げていないとして、米は16年再提訴していた。
中国当局の2月末の関税撤廃決定は、劉氏の訪米に合わせ、米国への「おみやげ」だととらえられる。
また、香港英字紙・サウスチャイナ・モーニングポスト(7日付)によると、中国当局は、当初劉鶴氏の訪米代表団人数を40人設定したが、米側の反対を受け、10人まで減らした。
さらに、劉氏が率いる代表団に対応する米政府担当窓口が不明だったという。中国当局関係者の話によると、「トランプ政権内、大統領の信頼を受ける高官が誰なのかがわからない」「(貿易政策をめぐって)トランプ政権内で意見が対立したため、劉鶴氏らは誰と会談すればよいのかもわからなかった」という。
劉鶴氏は今回の訪米で、ムニューシン財務長官を含む閣僚と会談したが、トランプ大統領との直接会談は果たせなかった。またトランプ政権の対中貿易強硬姿勢を崩すこともできなかった。
中国外交部の張業遂副部長は4日の記者会見で、米政府に対して新たな経済・貿易対話を要請したと話した。しかし、ホワイトハウス側は対話の計画はないと張副部長の発言を否定した。
劉鶴氏は1月末、世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で、中国の金融や製造などの分野で外資企業に対する規制緩和、知的財産権の保護と輸入拡大を含めた新たな市場開放策を約束した。
一方、米政府は昨年8月、通商法301条に基づき、中国を対象に、知的財産権侵害や米企業が中国進出の際不当な技術移転を迫られる状況などを調査してきた。調査結果が今後数週間内に発表されるとみられる。
調査結果によって、米政府は中国当局に対して、さらなる強硬措置を実施する可能性もあり、注目が集まっている。
(翻訳編集・張哲)
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