中朝国境に検問所・放射線検出器を増設 専門家「中国は最悪の事態に備えている」

2018/01/23
更新: 2018/01/23

北朝鮮と韓国による南北会談が今月9日行われた。昨年から続いた朝鮮半島の緊張感が緩和されると期待されている一方で、中国当局が朝鮮半島の有事を想定し、「最悪の事態」に備えるために中朝国境で軍事的な配備を強めている。専門家は、中国共産党内部と北朝鮮金正恩政権内部ではそれぞれ、中朝関係について意見一致していないことが、現在北朝鮮の核問題をめぐり事態の複雑化と不確実性を招いたと指摘した。

 緊迫感が増す中朝国境

AFP通信(19日付)によると、中国当局は中朝国境地域周辺で、駐在軍力を増大したほかに、監視カメラや放射線検出器を新たに設置した。また、両国の国境線となる鴨緑江の道路上に、中国当局は昨年10月、検問所を数カ所新設した。

同報道は、核実験を繰り返して行った北朝鮮に対して、中国当局が国連安全保障理事会の一部の対北朝鮮経済制裁に賛同したことから、中朝関係がすでに悪化しているとの見方を示した。

北朝鮮と中国とロシアの国境線である豆満江(中国名、図門江)北部に位置する中国の龍井市では、川が凍っている今北朝鮮難民が大量に渡ってくることを想定して、各村に自警団が組織された。川に面した水力発電所のダムに設置する監視カメラの数を増やしたという。

また、大紀元が遼寧省丹東市の各旅行会社に取材したところ、大半の旅行会社は中国人や外国人向けの北朝鮮旅行ツアー業務を行っていないことが明らかになった。条件付きで日帰りの北朝鮮ツアーを行っている旅行会社が数社だけだという。

丹東市民の張さんは大紀元に対して、国境で巡回する軍兵士の人数や検問所の数が増えたと証言した。「監視カメラが町の至る所にある。しかし、当局は市民に情報を公開していないし、(有事の)注意喚起も行っていない」。

「私たちは、戦争が起きないよう望んでいる。しかし、国境での情勢が不安定になり、戦争が起きれば、ここから離れるしかない」と張さんは話した。

 複雑な中朝関係

ジャーナリストの黄金秋氏は、中国指導部内では、中朝関係をめぐって意見が対立していると指摘した。

「中国高層内部では、いざという時に北朝鮮を切り札として利用し、北朝鮮との関係を維持していくべきだとの意見を持つ人がいる。一方、北朝鮮の頻繁な挑発行為によって、国際社会からの批判・圧力が強まっているため、北朝鮮と一線を画すべきだという意見もある」。

「そのため、中国当局の北朝鮮政策は二転三転している。だから、当局が国連の対北制裁決議を支持する動きがある反面、公海で中国の船が北朝鮮の船に物資を密輸したりもする。さらに、中国当局の対北政策の機密文書まで流出したのを耳にする」。

一方、北朝鮮労働党の金正恩委員長にも二つの考えがあると黄氏が指摘する。一つ目は、金委員長は中国当局やロシアが「今後も北朝鮮体制を支持し続ける」と確信していることだ。もう一つは、アメリカが北朝鮮と直接対話を行うならば、金委員長は中国当局との友好関係を放棄し、アメリカに直接、資源や援助を要求するとの打算がある。

「だから、北朝鮮の対中政策もよくコロコロ変わる」。

 

黄氏によると、これまで両国間に友好と対立という相反する論調が現れたのは、中国と北朝鮮指導部の認識が一致していないためだという。

今後の情勢発展は米政府の姿勢によって変わる。「米トランプ政権は北朝鮮に時間的な猶予を与えてきた。対北への軍事行動を着々と準備してきた。これに対して、中国当局も『危ない状況になってきた』と自覚している。1950年代の朝鮮戦争のように、中国当局は北朝鮮に対して軍事的支援をもう行わないだろう。中国当局は今、朝鮮半島で有事の場合、米軍より速く北朝鮮に入り金正恩を捉えることを最優先に考える。

黄金秋氏は、中国当局と北朝鮮はそれぞれ、互いに利用し合う思惑や打算をよく心得ているため、双方とも「プランAとプランB」を策定したと指摘した。中国側は、国境に戦争準備態勢を強化したのもそのうちの一つだという。

米ロングアイランド大学歴史学科の夏亜峰教授はこのほど米メディアに対して、同氏が掴んだ情報では、中国当局が戦争勃発の可能性があるとして、中朝国境に数カ所の難民キャンプを建てた、と述べた。

夏教授は、中国当局は、北朝鮮金正恩政権が中国を相手に開戦する可能性があるとみて準備を進めている、との見方をも示した。

一方、在米中国時事評論家の陳破空氏は、9日に北朝鮮と韓国が、平昌冬季オリンピックについて会談したことは「金正恩政権にとって、時間稼ぎになっている」と指摘した。

「金正恩氏は、米などの武力行使や国際社会からの制裁措置をどうしても避けたい。だから、韓国に会談を提案した。これによって、国内に対してさらに政権の基盤を固めることができる。また、国外に核兵器問題で挑発行為を続けていくこともできる」。

(記者・駱亜、翻訳編集・張哲)