2016年、中国の資金流出規模は7250億ドル(約82兆6500億円)に達し、15年と比べて500億ドル(約5兆7000億円)増加した。国際金融協会(IIF)は17年に、中国の資金流出がさらに拡大すると予測する。
米国サウスカロライナ大学エイキン校ビジネススクールの謝田教授はこのほど、米国トランプ政権の保護貿易主義の下では、今後中国の資金流出が拡大していくと指摘した。国内要因としては、中国のビジネス環境の悪化と経済成長の鈍化、債務危機、不動産バブル、生産能力過剰の問題がある。さらに、企業経営者や投資家の中国共産党政権への不信感が高まり、汚職官僚も海外へ逃亡するため、資金流出は続くという。
「中国の外貨準備高は、資金流出が原因で過去1年間で1兆ドル(約114兆円)減り、現在3兆ドル(約342兆円)を下回っている。仮に現在、中国の対米貿易黒字の額が大きくないとすれば、トランプ氏の貿易政策では、中国の資本流出のペースは一段と速くなり、外貨準備高もさらに激減するだろう」と謝教授は語る。
一部の専門家の「米中貿易戦争はすでに始まった」との認識に関して、謝教授は「米中で真の貿易戦争はないだろう。なぜなら、貿易戦争が始まったら、中国共産党政権はすぐさま負けてしまうからだ。中国の貿易は米国市場に強く依存している、だからこそ中国当局は毎年3000億(約34兆2000億円)~4000億ドル(約45兆6000億円)の貿易黒字を享受することができた。中国当局は、米国に対抗できる資本の基盤もなければ、戦う策略も持っていない。米国と貿易戦争をすれば、中国経済は崩壊するしかない。一方で、米国は中国当局と戦っていく資本もマーケットも持っているのだ」と述べた。
米トランプ大統領によって不公平貿易は是正される
トランプ大統領がこれまで中国商品に対して45%の関税をかけると発言したことに関して、「トランプ氏は勤勉なビジネスマンだ。その発言で、とりあえず中国当局に暗示したことになる。まさしく、孫子が言う「不戦而屈人之兵」(戦わずして人の兵を屈する)だ。トランプ氏は国家通商会議を設立し、通商代表や商務省長官の人事も決定している。今後、氏は中国に対して非常に強硬な交渉を行っていくだろう。これによって、中国当局は米国商品の輸入規制を緩和せざるを得ず、より多くの米国商品が中国市場に入るだろう」と謝教授は語る。
より多くの米国商品が中国市場に入れば、商品を輸入した決済を行うとき、中国企業はドルで支払わなければならない。このことは外国為替市場でのドルへの需要が一段と増えることを意味する。これによって、ドル高・元安に振れる可能性が高い。つまり多くの米国商品が中国に輸入されればされるほど、決済を通じてますます多くの資金が米国に渡っていくことも意味する。
謝教授はまた「トランプ氏は2つのシナリオを考えているだろう。もし、中国が直ちに市場を開放すれば、氏にとって目的達成となる。しかし、中国が市場を開放しないならば、氏は安価な中国商品の輸入を制限し、高い関税をかける他、中国で生産された米国企業の商品にも関税をかけ、米国企業を中国から撤退を促していく等、強硬な手段を採るだろう」と分析している。
「米国第一」を唱えるトランプ氏は、メキシコなどの他国との貿易関係を見直しているが、最も重視しているのは中国との不公平な貿易関係だという。
資本流出を止められない中国当局
中国当局は資金流出の拡大を阻止するために、例えば、外資企業に対して本国への収益送金を制限するとか、国民に対して個人による外貨両替を年5万ドル(約570万円)に制限するなどの対抗措置を実施しているが、効果は薄い。
謝教授は中国当局が貿易活動と投資活動を認めている限り、資金はそのルートが合法か違法かに関わらず、中国国内から海外にどんどん流出するとしている。その理由として「国民はあらゆる方法で、地下銭荘(銀行)、偽の貿易活動、偽の投資活動を通じて、お金を海外に移そうとしているからだ」と述べた。
一部の中国人富裕層には個人用ジェット機を購入し、そのジェット機で海外に飛び、海外でジェット機を売却して、ビットコインに交換するという動きがある。謝教授は「これは一つの資本逃避の方法だ」と指摘している。ただビットコインに関しては教授は「ビットコインに交換するのはよくない」と述べている。謝教授は、資産運用ツールの一つとされるビットコインに対して懐疑的で、ビットコイン投資を勧めない考えを示している。
(記者・徐翠玲、翻訳編集・張哲)
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