1月4日は2016年中国株式市場の最初の取引日で、昨年、中国政府当局が発表したサーキットブレーカー制度の実施日でもある。この日、国内景気先行き不安感や8日に控えた上場企業大株主の株式売却禁止令の解禁観測で売り注文が集中したため、A株式市場主要株価指数の滬深300指数(CSI300)の下げ幅が5%と7%のサーキットブレーカー発動の限度幅に触れた。
7日にCSI300指数が取引開始直後に下落し、下げ幅が5%と7%に達したため、取引終日停止のサーキットブレーカーが発動された。その日の上海と深セン両市場での取引はわずか29分で終了した。
サーキットブレーカー制度は米国、日本をはじめとする主要金融市場で用いられている。1988年に同制度を実施した米国は、今までのサーキットブレーカー発動回数はわずか2回。1994年に実施した日本は2001米国同時多発テロ、2008年世界金融危機、2011年東日本大震災などの重大事件関連で約8回発動した。2000年に実施した韓国も今まで3回しか発動しなかった。
しかし、なぜ中国のサーキットブレーカー制度は実施されて間もないにもかかわらず、4日に2回、7日にも2回の計4回と頻繁に発動されたのか。
中国A株市場にはすでにストップ高とストップ安制度があった。余分とも言えるサーキットブレーカー制度の実施で、主に個人投資家で構成されるA株式市場はいったん突発的な状況が発生した場合、よりパニック的な連鎖反応を招くことしかできない。
4日の市場状況をみると、主にサウジアラビアとイランとの断交、中国国内経済の鈍化などの政治的経済的要因があげられる。また、昨年中国当局が上場企業の大株主に対して保有株式の売却を禁止する措置が1月8日に解禁されるとの見通しで、市場では約100社以上の上場企業の巨額な株式が売却されると予測されている。そのため、投資家の間では相場下落との観測がすでに広がっており、空売りしようとする者にとってより簡単に空売りできる。サーキットブレーカー制度は空売り側にとって好都合な制度だ。
空売りの投資家がこの機会を利用し、市場の悲観的心理を拡大させしようとすれば、情報収集に長けて瞬時に売買判断し注文を出せる他の機関投資家にとって、ともに空売りで利益を得るチャンスだ。しかし、取り残された個人投資家にとっては、情報を入手してもすでに遅すぎて何もできない状態で、相場の暴落をみるしかない。まさに地獄を見ることになる。
本来ストップ安であれば、限度の下げ幅になっても取引は中断されず、引き続き取引できるため、相場が、値上がりに転じるチャンスが残される。しかし、いったんサーキットブレーカー発動され、取引が停止されるとそのチャンスがなくなる。その日優勢となっている売り手の力はまだまだ残され、次の取引日に持ち越される。次の日、好材料がなく買い手が依然に劣勢であれば、売りが売りを呼び相場は再び直ちに下落し、またサーキットブレーカーが発動される悪循環になる。
一方、4日と7日の暴落の主因は国内景気の鈍化、人民元の下落と上場企業大株主の株式売却の解禁とされるが、それらについて国内外の金融機関と投資家はすでに織り込みで、相場の下落に繋ぐにしても、暴落にはならないはず。悪意を持って意図的に空売りで株式市場をかく乱しようとする者がいれば、このサーキットブレーカー制度では、(国有大手証券会社で構成される)国家隊の力はもはや要らない。(中国において)一般の金融機関、または投資銀行だけで十分にその目的を果たせる。
(評論員・陳思敏、翻訳編集・張哲)
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