【大紀元日本3月7日】3月6日、日曜日の北京。一番の繁華街、王府井大通りでは、吉野家やマクドナルドが入居する工芸ビルが閉鎖されている。大勢の警察官が張り込み、周囲の通行人を監視する。
この日、40都市の中心部で同時に散歩しようという呼びかけが、何者かにより数日前ネット上で広まった。「中国ジャスミン集会」と呼ばれるこの活動は、2月20日の最初の呼びかけ以来すでに3回目。北アフリカ・中東で広まっている独裁政権を倒す花革命の波を受け、躍動する中国民衆の熱情に北京当局はもはや平穏ではいられない。3月5日、中国全土に関する政策決定の場となる全国人民代表大会が北京で開幕し、2011年政権維持に使用する「維穏経費」は公表された軍事費を上回り、昨年より13.8%増の6.2兆元となると発表された。
当局、花への恐怖
一方、3月5日と6日の二日連続で、北京市の政府紙「北京日報」は、「社会調和と安定を自ら守ろう」との社説を発表し、噂された翌日の「ジャスミン集会」の参加者に警告を出した。
北アフリカ・中東で広まっている政治変動が昨年末に起きて以来、中国当局は公の場では「国民の選択を尊重する」として、直接のコメントは避けてきた。しかし、北京日報は、社説を通して中東のジャスミン革命に直接言及し、中国情勢と並べて論じるという異例な行動に出ている。
「下心のある人は中東や北アフリカの動乱的な情勢を中国に誘導させようと企て、インターネットを通して非合法な集会を煽り、街頭政治を煽動している」と述べる。また、中国は「政治が安定、経済が繁栄」しているため、「これらの少数者のパフォーマンスは自作自演の茶番劇として失敗してしまう」としている。
北京日報に続き、6日、「北京青年報」など北京市数社の政府系も相次ぎ社説や評論文を出して政治の安定維持を強調し、中東の反政府運動のアジア国家への波及に不安を見せている。
さらに、上海市の政府紙「解放日報」も同日、同じ論調の評論文を掲載し、市民に「社会の調和安定を維持しよう」と促した。
いずれも全国紙ではなく、主要都市の政府系報道機関。香港紙「明報」の分析によると、当局の政権維持費の劇的な増加は、各地で炎上し始めた「中国ジャスミン革命」に対する恐怖を表している。一方「中国ジャスミン集会」は中国大陸では未だにタブーであり、地方紙の北京日報や解放日報を通しての論調発表は、革命の影響を中国全土に波及させないことが目的と指摘する。
集会呼びかけ、大学生や軍人に広まる
しかし、当局の花に対する恐怖は、ネットユーザーの目には明らかだ。政府紙の連続する社説に、「ジャスミン革命のことは、大半の国民は知らないことだったが、主要の政府紙が今回ジャスミン革命を口にしたおかげで、その存在を国民が認識するようになった」というネットユーザーの皮肉も見られる。
チュニジアのジャスミン革命の発端で広まった中東の反政府抗議の影響を受け、中国大陸では2月下旬、ネット上に匿名の「ジャスミン集会」の呼びかけが現れた。毎週週末に数十の都市で「散歩」の形で当局に対して抗議しようとの主張。中国各地で絶えず起きているあらゆる群衆事件や、巨大な貧富の格差によって生じた民衆の政府へ敵対感情に加え、これらの呼びかけは政府に一層の危機感をもたらしている。激しいインフレや社会全体に浸透する腐敗に庶民が喘いでいる現状について、温家宝首相も全人代の開幕演説で「大衆が強く不満を抱いている」事実を認めざるを得なかった。
うわさ半分に聞こえた2月20日の初集会で、各地の「集会」場所に姿を見せたのは、警察と記者が大半だった。「散歩者」と見られる一部の人が現場から連行された。集会日に先立ち、北京、上海、杭州などの人権活動家はすでに当局に拘束されていた。
ジャスミン集会の初回呼びかけ以来、すでに100人を超える異論派や活動家が、当局の鎮圧行為により暴行を受けている、と中国の人権活動家は明らかにしている。
そして3回目となった3月6日の日曜日は、北京での集会場所は当局の指示で閉鎖され、周辺の店もほぼ全てが営業中止。上海では、集会場所となっていた「和平映都」は先週日曜日につづき、臨時休業となっている。入り口では制服警官と私服警官が張り込んでいた。
政府が神経を尖らせ、ジャスミン開花を必至に阻止しているなかでも、呼びかけは密かに広まっている。5日にインターネットで「中華青年学生への公開信函」という大学生向けの呼びかけが流出し、北京大学や清華大学を含む107の重点大学の学生に、「恥ずべき沈黙」を破り、毎週日曜日の「集団散歩」に参加するよう呼びかけている。さらに、1976年4月5日に起きた「四人組」に抗議する民衆運動35周年を記念して、4月3日に民主と自由を求める全国的集会を開こうと呼びかけている。
さらに、「中国人民解放軍への手紙」「全国人民警察への手紙」が民間で起草されているという情報も流れている。手紙は、国家・民族を第一義とするはずの軍人に、今回の愛国民主運動を実際の行動で支持し、民族復興の歴史的機運を失わせないよう訴えている。
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