【大紀元日本2月5日】エジプトなどの中東諸国で反政府デモの嵐が吹き荒れ、世界の注目の的となっている中、中国のメディアは旧正月報道一色で、エジプト情勢に関する詳細な報道が見当たらない。一方、20年前反政府運動で共産党体制が崩壊したロシアでは、エジプト情勢の報道は各メディアのトップを飾り、公にプーチン大統領をエジプトのムバラク大統領に例えるメディアも見受けられる。
「反政府抗議に対して、北京よりモスクワのほうが自信を持っている」とロシアの中国問題専門家が述べている。社会に鬱積した不満が何かのきっかけで一気に爆発することを恐れている中国当局は、表向きは太平を装い、国民の目をそらしている。体制的に共通点の多い国で起きている政変の飛び火防止に中国当局が長けているのは、旧ソ連諸国で起きた一連の「色の革命」で「豊富な経験」を備えたからだと、ロシアのビジネス紙が伝えている。
3日付の米VOA放送で紹介されたロシア紙の報道によると、中国当局は「色の革命」を研究する専門チームを立ち上げていた。グルジアやウクライナ、キルギスで起きた民衆革命について徹底的に分析し、当局にデモの鎮圧手段やデモ情報のブロック策などを具体的に提案し、胡錦濤主席にこれらの国の指導者の「二の舞」を演じないような方策も教え込んでいたという。
この方策に則って、今回のエジプト情勢について、中国当局は国内メディアに対し、「新華社通信の記事の使用」や「ミニブログなどの書き込み管理強化」など、厳しい報道規制を発していた。国内報道はエジプト滞在中国人の帰国に焦点を当て、騒乱の起因となる国民の執政者への不満については一切言及していない。
1月30日の中国政府系紙・環球時報の英語版で伝えられた内容からも、中国当局の色の革命に対する警戒が窺える。「色の革命が真の民主をもたらさない」と題する環球時報の社説で、「世界共通の民主はない、失敗した民主も多々ある」ことを論じていた。
VOAが引用した香港中文大学の林和立・教授の分析によると、環球時報の社説は、これらの国では民主の条件がまだ育っていないため、実現した民主は表面的なもので、社会の安定や経済の発展には促進作用を持たないとの論調を国民に吹き込んでいた。「これらの論調は、中国国民が抱く『色の革命は中国で起きないのか』という疑問を打ち消そうとしている」と指摘した。
さらに、林教授は「北京当局は色の革命に常にビクビクしている」と話し、エジプト情勢については、中国メディアは「政変がアメリカに与える影響を分析しても、中国への影響に言及することを明らかに避けている」と指摘した。中国当局がエジプト情勢の本質を避け、国民の関心をそらそうとする行為は、革命が飛び火することへの警戒感からだと分析した。
VOAはさらに北京の匿名社会学者の話を紹介した。同学者によれば、中国で毎年起きている群衆による抗議事件は20万件を超えており、社会全体に不満が鬱積し、民衆の怨恨が根深いことを示している。「中国社会では、権力に付着した腐敗はすでに人々の我慢の限界を超えており、全国民にとって激痛を伴う社会の『ガン』と化している。権力が市場に蔓延し市場経済を制御したところで、公平なんて存在しない。腐敗と不公平な取引きによって、富が『権貴階層』に集中し、貧富の差はますます拡大していく」と中国社会が抱える問題の深刻さを分析した。
また、同学者は、ムバラク政権のもとで、エジプトで拡大した腐敗、貧富の差、高失業率などの要素が、最終的に民衆の自由を求める意識を目覚めさせたとして、エジプトを引き合いに中国も革命の火種を同様に抱えていることを指摘した。
一方、中国がエジプト情勢に慎重な態度を示しているのは、革命の飛び火を恐れているほか、北アフリカやアラブ諸国での経済的利害関係も影響するとの見解を示す専門家がいる。中国はこれらの地域から大量の原材料とエネルギーを手に入れている。地域情勢の不安定は、各国のこの地域における勢力関係の再編成に繋がりかねないため、中国当局の緊張感が一層高まっている。
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