2年にわたる調査を経て、スペインの判事は、中国前国家主席・江沢民を含む中共政権の高官5人が法輪功に対する迫害において「ジェノサイド(集団虐殺罪) 」と「拷問罪」で起訴すること決定した。11日、原告を代表するイグレシアス弁護士はスペインの国立法廷から、被告に対する罪を認めるという公式の手紙を受け取った。
「スペインの裁判官による歴史的な判定。中国前国家主席らの残虐な犯罪に対する責任が司法の正義によって裁かれることへ大きく前進した」とイグレシアス弁護士は語る。「ジェノサイド」の認定が法的に法輪功迫害にふさわしいことを国外の法廷が認めた初めての画期的な判定であり、被告がスペインに居れば、法廷は公聴会に被告を召喚する権限を持つ。
2003年から2007年にかけて、迫害の被害者15名が、スペイン憲法の下で、中国共産党政権の高官5人を個々に告訴(acciones populares)していた。4つの事案が一つにまとめられ、2006年からスペイン国立法廷の判事が調査していた。5つめの事案は後で加えられた。
被告は、江沢民(こう たくみん)前国家主席のほか、法輪功を迫害する専門機関である「610弁公室」のトップ・羅幹(ら かん)、 重慶市委書記で元商務部長・薄熙来(はく きらい)、前北京市委員会書記長・賈慶林(か けいりん)、規律検査部門の責任者・呉官正(ご かんせい)の5人。
1999年、当時の中国国家主席・江沢民が、人心が共産党政権から離れることを恐れ、学習者数が共産党員数を上回っていた中国伝統の修煉法・法輪功を抹殺するために弾圧を命じたことは、広く知られている。
江沢民の独断とみられる弾圧政策は、共産党がコントロールする国家メディア、国家安全をはかるための機構、再教育のための強制労働所のネットワークをフル稼動して施行された。強制労働所、監獄、思考改造クラスに送り込まれた学習者の数は数百万人にのぼる可能性があると推定されている。
判事が考慮した証拠として、15人の法輪功学習者の書面による証言、7人の学習者の口頭による証言、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウオッチ、ヒューマン・ライツ・ロー・ファウンデーション、国連人権委員会の報告書が使われた。
「普遍的管轄権への申請により、この事案は決定的な段階に入った。スペインの司法制度は、21世紀の中国で起こっているジェノサイドの被害者を弁護する。そして、刑事免責が適用されることはない。集団虐殺や拷問は、中国の国民だけでなく、国際社会全体に対する犯罪だ。スペインは、人権と普遍的公正を擁護する」とイグレシアス弁護士は述べる。
イグレシアス弁護士によると、被告は今後二つの審判に直面することになる。「1つは法廷の審判、もう一つは歴史の審判。即ち、自己の道徳観と精神の向上をはかろうとする数百万人もの人々を迫害し、史上最悪の残虐行為を犯したことで審判を受けるのだ」
次の具体的な段階として、5人の被告に対して、外交経路を通じてイスマエル・モレノ判事から「訊問嘱託書」が送達されるという。スペイン語と中国語で記された同書には、法輪功の迫害に対する個人の関与に関する20項目以上の質問が記載される。回答がない場合は、モレノ判事が国際逮捕状を発行する上で有利となる。回答期間は4週間から6週間と見込まれている。
今回の判例は、スペイン法廷の最近の大きな動きと、中国国外での救済を求める法輪功学習者とその弁護士の努力が重なって可能となった。スペイン法廷は、1998年にチリの独裁者アウグスト・ピノチェトに対する送還要求を判事が発行するなど、国際犯罪の刑事訴追に乗りだしている。最近ではグアテマラとチベットでのジェノサイドに関する調査を始めたところだ。
一方、世界では、法輪功迫害に関与した高官は、30ヶ国以上で提訴されており、案件数は70件以上に及ぶ。
スペインでは、被告が出席しなければ裁判は開けない。被告がスペインに入国しなくても、スペインと法的に締結している国に被告が足を踏み入れた際に、送還要請できる。「司法と弁護士を押しとどめることはできない。犯罪者のドアを容赦なく敲かせてもらう」とイグレシアス弁護士は語る。
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